ちゃん付けで呼ぶのは申し訳ないほどのお年・・・たぶん60歳前後といったところか。
本名を知らないから「タカちゃん」と呼ぶよりないのだが、スチャラカ3号は
「おじさん、ヘンだよ、おじさん」
と遠慮なく呼んでしまう。
「タカちゃん」はオヤジの知る限り毎日カウンターに止っていて、つねにヘベレケで、毎度同じもの(グラスの中身が何だかは不明)を氷が溶けるまで大事に飲んでいる。
あるときはテレビにうなづき、またあるときはろれつの回らないだみ声で何事かを喋り続け、それに飽きると腕組みして舟を漕ぐ。
他のお客さんとトラブルを起こすようなことはなく、じつに穏やかで、人が話していると耳を傾けているみたいなので、意識的にギャグをかましたりすると、肩を振るわせて顔を背けて笑ってくれる。
早い時間に「モミモミのパパ」(この時点ではまだ「スチャラカ3号」ではなかった)と隣り合わせて、「美空ひばりブラジル公演」のテレビを見ていたらしく、すっかり頭の中はひばり=お嬢になっていて、
♪ しーおやのみさーき ♫ やら「悲しき酒」、「柔」などを口ずさみ、むかし話を披露している。
「大将、あんた何が好きだ ? 」
と顔を覗き込まれて、♪ 真っ赤にも~えた~ ♪ と答えると、ニヤッと笑い、
「おめ、そりゃ、ブルー・コメッツだっぺ、お嬢ミニスカートだぞ」
と、当時のことを知らない「スチャラカ3号」(ほ~ら、この短時間にスチャラカに変身している「モミモミ先生」)には全然通じない話題で盛上がった。
しかしそのあと、人は見かけによらないと思わせる話題に転じた。
ビートルズの東京公演の話から、「タカちゃん」の左手はギターのフレットを押さえる手つきになり、cコードやFコードを正しくさまよい、右手はピックをもっているように動いたのだ。
「おめ、りっけんばっかーだぞ、しってっか、え、しってっか」
とツバキを飛ばしながら得意満面で語ると、知ったかぶりの「スチャラカ3号」は
「知ってまーすよぉー、サッカーでしょ」
なんて答えてしまうものだから、「タカちゃん」ますますツバキを飛ばし、
「おめ、ばか、りっけんばっかーだよ。じょんれのんだ。じょーじはりすんだぞ」
とまくしたてる。
何のこっちゃかさっぱりわかっていない「スチャラカ3号」は、
「おじさん、ヘンだよ」を連発し、オヤジのグラスのハイボールを奪って飲んでしまう。
これはもうこの男限界だ、と見てお勘定し、「タカちゃん」に別れを告げて店を出たのだが、確かにあの手つきはギターを弾いていた者じゃなきゃできないと感じた。
ひばり=お嬢も好きだが、ビートルズもリッケンバッカーにも造詣があったとは、お見それしました。
おっさんはただ歳をとっただけじゃないんだぞ。
「ベッケン・バウアー」と「リッケンバッカー」の区別もつかないような者に、「ヘンなおじさん」呼ばわりされる筋合いはない。
もっといろいろ学ばんかい!!
以上、「タカちゃん」に成り代わり主張してみました。
ちなみに、えらそうに言うオヤジも、「リッケンバッカー」については曖昧な点があったので、ここに追記します。
「リッケンバッカー」というのは有名なギターメーカーで、ビートルズの「ジョン・レノン」や「ジョージ・ハリスン」がビートルズ初期に愛用したエレキギターであります。
実はオヤジは、「ポール・マッカートニー」愛用のヴァイオリン・ベースが「リッケンバッカー」だと勘違いしていました。
ポールがビートルズ時代に愛用していたペースはホフナー社製。
ソロやウィングスの時に使っていたのがリッケンバッカー社、4001。
ついでに、「永ちゃん」がキャロル時代、解散ライブで使用していたのはフェルナンデス社、FYB-70(通称、琵琶ベース)。
あぶない、あぶない、うろ覚えの知ったかぶりはいけません。
そうでなくても「アルツの里」を彷徨うことが多くなっているのだから・・・。
3年後、すっかり「モミモミ先生」のお世話になっているのに、再びこの話題を持ち出して蒸し返すのである。
なぜなら「モミモミ先生」は、未だに「ベッケン・バウアー」と「リッケンバッカー」の区別がつかないことが最近判明したからだ。
「最後の砦」に通わなくなってもう2年ぐらい経つ。
「タカちゃん」はその後どうしたであろうか ?
人の噂では、「タカちゃん」もその店にはもう来なくなって、公園でぼんやりしているのを目撃されたり、ちょっとホームレスのような感じだったということだ。
飲み屋のカウンターで袖すり合った程度の人だが、なんだか切ない気持ちになってしまう今日この頃なのです・・・・
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