御学友とは言ってもべつに学習院ではなく、そのへんにいくらでもある都立高校なのだが・・・。
「タケダくん」はとっても悪い人で、学校の近くの「東東」という雀荘に入りびたり、高校生の分際でヤクザと卓を囲み、なおかつ勝ってヤクザから金を巻き上げていたという強者なのだ。
なぜか「東東」の合鍵を持っていて、授業をフケて勝手に入り込み冷蔵庫からコーラなんぞ出しちゃって煙草を吹かし、悪い仲間と徹マンさ。
オヤジのような煙草も吸わない良い子の高校生は「タケダくん」と言葉を交わすことはあり得ないはずだったのだけど、気がついてみたら悪い仲間と雀卓を囲み、「タケダくん」を頭とする麻雀の「神様連合」の末端メンバーとして指導を受けていた。
高校の時の写真を見返すと、集合写真の中に時々「タケダくん」の姿が見当たらないことがあるが、それは彼が停学というオツトメを喰らっていたからだ。
そんな「タケダくん」なんかとオヤジのような純真で真面目な高校生が仲良しになるわけもなく、卒業してからクラス会で1、2度会ったぐらいで、ここ38年ほど彼とはお目にかかっていなかった。
彼のお勤め先も知っているし、彼が早くに結婚して幸せな家庭を築いているのも人づてに聞いていたが、一緒に酒を酌み交わすこともなくなく今日まで過ぎてしまった。
一昨日の夜、かつての悪い仲間と共に、いい感じで酔っぱらった「タケダくん」が店に現れた。
38年会っていなくても一目で彼とわかり、肩を叩き再会を喜びそして酒を飲んだ。
なんせよっぽどトンチキじゃない限り、「タケダくん」の顔がわからないはずはないのだ。
だって彼のヘアースタイルは昔から、「キャプテンウルトラ」に登場する悪い宇宙人「バンデル星人」なんだから。
この吸盤みたいな頭の悪そうな宇宙人が「バンデル星人」だ。
孫がいるおじいちゃんになっても彼の髪型は「バンデル星人」を保っていて、目尻の皺も好々爺みたいですっかりトゲがとれて好人物だ。
当時、彼の髪型を「バンデル星人」みたいだなんて失礼なことを言ったのはこのオヤジなのだけど、みんな懐かしそうにそれをネタに笑って酒を酌み交わした。
悔しいけど、今でも「バンデル星人」を保っているってことは髪の量が多いってことで、やはりかつての「神様連合」の頭は立派だ。
「タケダくん」以外のふたりも久しぶりで、ひとりとは19歳の時に横浜に一軒家を借りてしばらく同じ釜のメシをくった仲で、もうひとりとも腐れ縁みたいにしょっちゅう一緒に遊んでいた野郎だ。
どちらも若かりし頃のオヤジのあんなことやこんなことを知っている連中で、何年会っていなくてもすぐに昔のバカ話しでタイムスリップして笑いあえる。
もはや音信不通のヤツもいるが、生きているんならもう一度会ってみたい。
かつての確執やら色恋沙汰やらそんなことは笑いに変えられる歳になって、みんな郷愁のように話しがしたいのだ。
いつか連中が思い出して、気が向いて来てくれる時があればいいと願い、その時も店をやっていられるようにしたい。
変わったねぇと言われるより、変わらないねぇと言われるようにしたい。
いつまでも酒が飲めるカラダでなけりゃ、その時がきてもつまんねえから、たまには節制しなくっちゃね。
旧友再会、乾杯
