お好み夜話-Ver2

長い、なが~い眠り

気力が無くなってしまったのだ。

何もする気がおきず、食べることもせず、わずかばかりの水を含むだけで、ただひたすら寝ていた。

朝か夜かもわからず、目と口を隠し、布団をひっかぶってただただ寝ていた。

夢もなけりゃ希望も目標も失せて、静かに朽ちて消えてなくなりたいと、なすすべも無くただ寝ていた。

こんな木偶の坊な状態になってしまったのは、3月9日の土曜日の夜から・・・・。




きっかけは、以前使っていた2008年製の起動しないiMacを復活させようと作業しだしてからだ。

あれは2015年のこと、「akkoちゃん」の披露宴のムービーを作っているときに突然iMacがフリーズしたり誤動作してニッチモサッチモどうにもブルドックな状態になった。

幸いにもその作業はMacBook Airであとを引き継ぎ、なんとか穴をあけずに本番で上映できたが、それ以来そのiMacは電源を外して放置していた。

それを再び蘇らせようと何かの弾みでそう思ってしまい、ケーブルをつなぎ外付けハードディスクを取り付け、バックアップデータから起動、外付けディスクから起動、等々あらゆるtipsを駆使した。

その過程でチャタリングなる現象にも遭遇し、永遠の再起動地獄にも足を踏み入れ、はるか大昔のMacのように叩いたり懇願したりして四、五日徹夜状態。

そして、気がついた。

外付けディスクからじやないと正しく起動できないMacは、人間でいえば自力で老廃物を排出できない透析患者で、メンテナンスプログラムという治療なしには生きられない・・・。そう擬人化してしまい、外付けディスクを外したら=透析をしなければ生きられない病人なんだ、と。

そう考えたとき、すべてがバカらしく、虚しく、意味ないことのように思えて、身体中からやる気、希望、目標が、みるみる萎んでしまった。





なにもせず、なにも考えず、誰とも口をきかず、暗闇の中でうつつに身をゆだね、死のうが生きようがどうでもよく、薬も飲まなければ朽ちて死ねるかもしれないと甘え、4日間ベッドの中で縮こまっていた。



その間何度もかあちゃんや小僧が様子を見にきたようだが、バカみたいに眠っていてそれすらわからなかった。

今考えれば甘っちょろいとしか言いようがないが、恥も外聞もなくなにもかも否定的、悲観的で無責任に生きながらえた。

生きる気力をなくすと体力もなくなり、それでも寝床でお漏らしはしたくないというわずかばかりの見栄で起きあがったら、足元はフラつきみぞおちと腰=腎臓に違和感があり、楽に死ねないことを思い知り、なけなしの自己嫌悪に陥った。


遠くで電話が鳴ったけれど無視し、Macをシャットダウン、iPhoneの電源を切り、目と耳を塞いで布団に潜り込んだ。

4日目の午後、その気もなくiPhoneを起動したら、「バーバーくん」からメールが来ていた。

その文面の馬鹿野郎ぶりに、思わず笑ってしまった。

「オヤジへ
店に電話したら オヤジ休みだとよ
元気でねーかもしれねーけど
空元気が 取り柄じゃねーのかよ 炭食ってでも 長生きしろよ 俺の最強遺伝子 坊を抱けよな

あんまり へこんでると 騒ぎに行くからな笑

まだまだ これからだぜ~」

キミは幾つだよ? 相変わらずバカだなぁ・・・

少し、元気が、でた。


3日間店はかあちゃんひとりで営業して、その分の集計やレシートがたまっていた。

テーブル席をなくしメニューを減らしたことでなんとかなったみたいで、オヤジまた病んでるということはあっちこっちに伝わったようだ。

フン、心はガラスの60代さ😑

心臓を病んでると自律神経が乱れるらしいが、ちょっとウツ入ったか?

心も体力もなかなか回復せず、小僧に叱咤されて仕事に出たものの声が出ず、顔や体の痒みと荒れは薄れたものの、今度は手の平がガサガサ、痒みと荒れがあちこちに移る不可思議。

食べたくはないが、酒は飲めるという理不尽。

つくづく情けないジジイだと儚んでジャックダニエルを飲み干した。

油をさしたら声がだんだん出るようになり、死ねないならどうでもいいと食ったら元気になっちゃって、まったく呆れ返るほどの単純機械な己を実感。

何を悩んでいたのだ?

何が不満なのだ?

腹一杯食えなかろうが、ゴクゴク飲めなかろうが、もういいじゃないか、若くはないんだから。

もっともっと大変な病状な人も、生まれながらにハンデを背負っている人も、それぞれに生きてるじゃないか。

障害を障害と思わず、ありのままに楽しいことも悲しいことも受け入れ、毎日休まずに作業所へ行っている小僧を見習え !!

贅沢に悩んで悲観しているわがままを笑え !!


もう少し生きていられるのなら楽しくやろう。

好きなことをしよう。

心で遊ぼう。

あーあ、長い眠りだった。

ガタがきた体をもうちょっとシャンとして、走ろう、映画をみよう、旅に出よう、笑おう。

好きな時に少々食べて、飲みたい時に飲んで、いよいよ息も絶え絶えになったらそれも受け入れよう。

透析してまで延命はしない。

その時が来たら粛々といこう。

笑おう、笑ってやろう、笑い飛ばしてやろう。




動きだしたら早速、中途半端になっていたメニューの見直しをはじめ、新メニューの試作も始めたけれど、どうにもブログの更新ができなかった。

今さら何を書いてもウソっぽいし、己の愚かを書いても詮無いことと、何度か書いては消した。

でもあとで自分で見返して、なるほどと己のバカを笑うのも一興と思い直して書くことにした。

これまでのように能天気でいい加減なブログを綴るのだ。


「バーバーくん」ありがとな、こんど死ぬほど酒を飲もうぜぃ !!

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