わたしは音については語るべきことを全く持たないので、今まで音楽関係のイベントを
ブログの記事にしたことはなかった。(と、思う。)
が、今回の葉加瀬太郎・古澤巌のコンサート、「THE VIOLIN BROTHERS」。
これは語らずにはいられない。
宣伝で「ブルース・ブラザーズ」のイメージでツアータイトルをつけたと言ってたから、
会場で、舞台の赤い紗の幕にグラサン&ダークスーツの彼らがプリントされてても
当然と言えば当然。全然驚かない。
紗の幕から透けて見える小道具が、アメリカンな交通標識というのも全然普通。
ま、ヴァイオリンコンサートっぽくはないが、今回はこういう路線で行くんだな、と頷く。
だが……
時間になっても始まらなかったから、観客は手拍子で催促。
それでバックバンドの演奏は開始したんだけど、主役2人がなかなか姿を現さない。
いい加減「まだかいな」と思い始めた頃、音がジャン!と止まり、
カッ!と照明が舞台後方から照らされ、男2人がポーズを決めたシルエットが浮かび上がる。
その時点で、客大ウケ。
その後、紗の幕が上がり、本人たちが姿を現すわけですが(当然衣裳はグラサンにダークスーツ)、
まずやったことと言えば、演奏でもなくMCでもなく、ダンス(?)ですから。
ブルース・ブラザーズの曲(だと思う)に合わせて、右に左にステップ。
曲は能天気に明るいし、本人たちは楽しそう。そのパフォーマンスが終わった時には盛大な拍手。
ってか、アンタ、まだ何にも弾いてないやん!
……上手いんだ、この辺が。まったく、ヤツは客をノセることにかけては日本一だよ。
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葉加瀬太郎のコンサートはとにかく楽しい。
まずMCがオカシイ。
ヴァイオリンのツマミとしてのMCではなくて、話もパフォーマンスだよ。
あの話芸はどこで修行したんだろうね。
やはり生来の関西人はそういう遺伝子を持っているのか?
古澤巌もかなりついていけている方だけど、この点、ハカセには負ける。
とはいえ、古澤巌もかなりヘンな人です。ハカセと並ぶとそのヘンさが相対的に薄れるだけで。
古澤は、まずその衣裳が……。ハカセもMCで、
「ところでアニキ……。そんな衣裳、どこで売ってるんですか」と言ってたくらいだし。
一枚一枚の洋服としては、ごく真っ当な製品なのかもしれないんだけどね。
古澤が1人分として組み合わせて着ると、何だか妙な雰囲気を醸し出す。
2人で何とかっていう超絶技巧曲を弾く時、
「難しい方は、当然アニキが弾きます。ぼくは伴奏を」
「……あんまり早く弾かないでね」
そんなことを言いつつお互いガシャガシャ弾きまくってるんだから面白い。
そんな間柄は楽しかろう。
彼らはとてもよく指が動く。見ているとどうしても笑ってしまうほど。
笑ってしまうほどの指さばき、というのは見たことない人には想像出来ないかもしれないが、
笑うしかないんだ!もう。
やっぱりああいうのを見ると、文句なくプロの技。
曲も、バラエティに富んだいい選曲だと思う。
オリジナルとかクラシックの編曲とか色々。
パンフレットがないので、タイトルとかはわからないんだけどね。
わたしは今まで3回か4回ハカセのコンサートに行っているけど、いつもお決まりで
演奏するのは「エトピリカ」「TO LOVE YOU MORE」「情熱大陸」。
第一部のラストは「情熱大陸」で一旦盛り上げまくって締めるのがお約束。
……って、別にステージが第一部、第二部と分かれているわけではないが、
単なるアンコールと呼ぶにはあまりにも力が入っている。ゆえにアンコール=第二部。
第二部が終わるまでずっとスタンディングで手拍子強制(?)なので、
全てが終わると手のひらがカユイ。体力も使います。
わたしは「エトピリカ」が一番好きかもしれない。
エトピリカは――
大きな黒い目をした野生の少年。
これから行く先の道をまっすぐに見つめている。
凛として生きること、進み続けること。
歩き続ける者のプライドと高揚。
――を感じる。
「TO LOVE YOU MORE」は、セリーヌ・ディオンが歌うのも好きだけど、
ヴァイオリンで弾かれると、心の裏側をマッサージされているような心地よさを感じるな。
きれいな旋律だ。
一緒にやっているバンドの人も好きだよ。
今回のチェロの柏木さんとギターのマサ君は、以前に聴きに行ったことがある。
その時聞いた話からすると、マサ君はまさにギターの求道者みたいな人らしく……
今回の、ウクレレみたいな楽器を弾いてた時かなあ?
「一体どんな指づかい?」と思うような超絶演奏だった気がする。
彼のことは応援したいな。
まー、一つ難を言えば、アンプが入る分、楽器としては……というか、
音としてはずいぶんアルファー波が減じる。
やっぱり音としてきれいなのは生音でしょうよ。
でもまあ、ハカセにオーケストラと一緒にヴァイオリン協奏曲なんか弾かせても
仕方ないだろうから、電気的な音になるのはしょうがないんだけど。
しかしさー。最後、アンコールのアンコールでは歌ってたよ。ヤツは。
「ALL NEEDS SOMEBODY TO LOVE」とかなんとかいうタイトルの歌。
アンタはヴァイオリニストじゃないのか!
歌にダンスとなったら、今後のコンサートはヴァイオリンというより、
ミュージカルになってしまうのではないか。
今だって「たしか今日はヴァイオリンコンサートだったはず……」と思うような、
パフォーマンス(多量のお笑い要素を含む)>音楽になっているのに……
今後ヤツは一体どこへ行こうというのだ。
わたしには、ハカセが時々――音楽の天使に見える。
あのむさくる……る、る、しくも福々しい顔が、満面の笑みを浮かべて幸せそうに演奏をしている。
その姿を見ると、もしかして音楽の天使は、とても天使には見えないような、
こんな顔でどこかの街角にいるのかもしれないと思ったりする。
……音楽の天使というより音楽のエビス様というような風貌だが。
幸せそうに弾いてる人を見て、わたしも幸せ。
ハカセのコンサートは、人を幸せにすると思います。