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◇ 池澤夏樹個人編集世界文学全集Ⅲー1 フラバル「わたしは英国王に給仕した」

2024年08月14日 | ◇読んだ本の感想。
わりと期待していたんだが。ユーモラスだっていうし。
が、つまんなかったですねー。短めだから一応最後まで読んだけど。
読んだというほどではない。後半はパラ見に近い。

「ブリキの太鼓」がかなり面白かったのに、こっちがつまらなかったのはなぜだろう。
文章にそんなに中身がないから――っていう言い方は悪意がありますか。
書いてある内容が、わりとドタバタナンセンス的なんだよね。
そこに面白みを感じられる人はもっと楽しめるんだろうけど、
わたしはそこが全然響かなかったので、すでに面白みは半減。

ストーリーでちょっと響いたのは、当時のチェコでドイツ人の元体育教師、
今はナチスの組織の一員として(?)働いてる美女との恋愛部分。

彼女の初登場のシーンで「え?やばいこと言ってない?」という台詞があった。
見ていただいた方がいいと思うので引用する。


   「あなたのおっしゃる通りだわ、プラハは昔からドイツ帝国の領土で、
   わたしたちがプラハの町を歩き、自分たちの慣習にもとづいた服を着るのは
   譲ることの出来ない権利なの。世界中がそのことに無関心だけれども、総統が
   この状況をそのままにはしておかないでしょうから、すべてのドイツ人を
   シュマヴァからカルパチアまで解放する時がかならず来るはずよ……」


おやおやおや。わたしはこの頃のチェコ(スロヴァキア)とドイツの関係を
詳らかにはしないが、それでもプラハでドイツ人に対する反感が吹き荒れてる時期に
こんなことを普通の顔で言っちゃう女性はまずいですよね?

でも主人公は、その内容には特に触れずに彼女の背の低さに恋に落ちてしまう。
(主人公は自分の背が低かったから今まで女性と上手くいかなかったのだと考えている)
そしてなぜかその美女の方も主人公を好きになる。

うーん。ここまで読んで来て、ばりばりナチスの女性隊員が恋に落ちるほどの魅力を
主人公に感じなかったのだが……。
でも女性受けは良かったって本人が言ってるから、実はモテてたのかな?
主人公はチェコ人なんだけど、苗字をドイツ語読みして、先祖がドイツ系だと捏造する。
主人公はドイツ側の土地に引っ越して、そこで肉体検査を受けた上で美女と結婚するが……

美女は人気者だけれど、自分はその付け足しにもならず、ほとんど透明人間のように扱われる。
握手の手を差し出しても無視され、乾杯のグラスも合わせてもらえない。

そして、自分が美女と結婚するために検査を受けているまさにその時期は
ドイツ保護領になったチェコで、ナチスに反対する人々が裁判を経ずに処刑されている
時期と同じだった。そのことに主人公は衝撃を受けるが、
……本人の心情はともかく、現実としてはドイツ人女性と結婚し、
優生学的に優れた子供を儲ける……
あれ?子どもいたかな?いた気がするけど。ごめん、面倒なので読み直さないわー。

戦争後、どさくさに紛れて奥さんが手に入れた(合法か非合法かは不明)
切手(多分コレクターズアイテム)を売りさばいてホテルオーナー、お金持ちになる。
奥さんは戦争終盤で死んでいる。



……なんか、一応主人公の人生を若い頃から老年期まで描いているんだけど、
あっさり進むというか、一人称の小説のわりに語り物の寓話的なのよね。
なのであまりストーリーは深まらない。

1.給仕人として働いていた時代
2.美女との恋と結婚と戦争
3.戦後のホテルオーナーとしての疎外感

話は多分この3つに分けられると思うんだけど、そんなに深みを感じるわけではなく。
深みはなくてもいいんだけど、面白みも感じなかった。まあこういうのは好みですよね。


そもそもわたしが純文学を愉しんで読める確率が低いんだから。
次に期待しよう。次に。


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