プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◆ 表 博耀。

2008年02月10日 | ◆美しいもの。
この間、テレビで

美しきルネサンスの都に
イタリア芸術とネオジャパネスクが競演!
表 博耀の華麗なる挑戦!

という番組をやっていた。
……どーでもえーが、タイトルもう少し何とかならなかったのか。責任者出て来い。
こんなタイトルじゃパチもんにしか見えんわ。


表 博耀――おもて・ひろあきと読むらしい。
番組を見て思ったが、なんだか面白い人ですね。作品というより、存在が面白い。
融通無碍というか、天衣無縫というか……色々な分野に手を出すアーティストは多数いるけど、
表の取り組み方は、なんだか他の人とは違う気がする。枠を決めないイメージ。
普通、まずよって立つべきホームグラウンド(本職)があって、そこに腰を落ち着けたまま
他に手を伸ばすでしょう。
だが彼はポンと飛んで新しい場所に着地。またポンと飛んで別な場所に着地。
そんなことを繰り返している気がする。

経歴も妙なんだなあ。
中卒で理容師?美容師?として働き始めたらしい。20歳そこそこで店を複数経営し?
ヘアメイク(ヘッドアート?)で有名になってきて?
……で、なんだか知らんけど、今はプロデューサー。
ド派手な打ち掛けは作るわ、アクセサリーは作るわ、茶道具は作るわ、家具は作るわ
(このあたりの「作る」はプロデュースという意味)、
ファッションショーはするわ、当然ヘアメイクは担当するわ、振り付けはするわ、
そしてここ数年は「ネオジャパネスク」と名付けた総合舞台パフォーマンスを持って、
世界を年1回くらいで回っている。
関西弁でちゃかちゃか喋りまくる、変なおっちゃんです。


彼は「温故創新」を唱えている。伝統日本と新しいものを融合させていくという方向。
お題目としてはわりあいに聞くような内容だけどね。
具体的にはこんなんです。たとえば打ち掛け。派手。

http://www.neo-j.jp/ho-02a_d.htm

が、これを見て、現代もん嫌いなわたしになぜか拒否反応が起こらない。
どーみても……悪趣味スレスレな感じだが、けっこう印象がいい。
これがねー、フィレンツェのピッティ宮に展示されていた時。ヨーロッパの絢爛たる室内装飾に
負けてなかったのが印象的だった。負けずに金ぴかだからという理由もあるだろうが、
一番重要だったのはボリュームかな。このボリューム感は、今までの日本にはない。
十二単だって、実際には重くて、そういう意味でのボリュームはあるけど、日本のテイストは
基本はミニマムなんだよね。ミニマムが目指すべきものとされてきたお国柄。
その中で、日本的な素材を駆使してここまでボリュームを出して来たかと、ちょっと面白い。
(ネット上より番組で見た方が数段きれいだった。ネットでは色が汚い。)

これ、けっこうどこの風景にも合うんじゃないかと思いながら見ていた。
ピッティ宮では溶け込んでいた。桂離宮でもいけそうな気がする。ヴェルサイユ余裕。
ニューヨークの街角でも大丈夫。紫禁城なんかは一番はまるかもな。砂漠。熱帯雨林。
風景としてボリュームがある場所ならどこに置いても様になる。
しかも、とんがっていないところがいいね。いかにも前衛!の喧嘩ごしではなく、
キッチュでユーモラスだ。伝統と相反するものではなく、4分の1程度重なっている感じ。
もっともそのせいで、パロディくささが漂うきらいはあるんだけど。

コペルニクス的転回という類の創造ではない。
しかし4分の3程度ずらした創造もいいのではないか。
少なくとも、今までの基準点を否定する必要がないことは、見る方は(いい意味で)楽だよ。



本人は舞台でも動く。舞うというのか、パフォーマンスを行う。
水行もする。……水行?何だかとにかく滝にうたれていたシーンがあった。
月に数日は自分の店(=床屋さん)に立つそうだ。で、普通のカットをしたりしてるわけ。
それに加えて、お茶を点て、本番直前まで振り付け指導にあたり、
それからなんと(具体的な名前を忘れたが)、十二単などを着付けられる(資格を持った?)人らしい。

舞台上で、直衣と十二単を着付ける姿をパフォーマンスとしてやっていて、
これはありだなあと思った。着付けを演目にするというのは盲点。
しかもフィレンツェでは、フェラガモ一族の若者を直衣のモデルに使っていて、そのあたりも
軽やかさ(と共に商魂)を感じる。固定観念でいえば、そこは絶対日本男性を
使わなければならないところでしょ。


なんだかもう、本人がどういうヤツなのか、さっぱりわからないよ。
本物か、偽物か。うーんうーん、今の段階で言うのは難しいなあ。
本人には失礼ながら、調子いい人の気がするし。でもやってることはなかなか面白そうなんだよな。
今後、どうでしょうね。出てくるんだろうか。多少、注目。


……が、ここまでやってると、「この人、長生き出来そうもない……」とひしひしと感じてしまう。
「早口は早死に」という言い方もあるらしいもの、ここまであれこれやっているとなあ。
普通の人間が脳の何パーセントを使っているか知らないが、この人は通常人の倍くらいの
稼働率の感じがする。変な脳ミソの使い方というか。
無事これ名馬という言葉もあることだし、その辺はうまくやって欲しいよ。


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