プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ マイクル・ムアコック「エルリック・サーガシリーズ」

2021年12月18日 | ◇読んだ本の感想。
最寄りの図書館にはエルリック・サーガシリーズが2つあって、

1つは1984年スタートの薄くて白い本。全7巻。または8巻。
もう1つは2006年スタートの全4巻版。厚くて茶色い本。
ちなみに発行はどちらも早川書房。

通常であればどっちかを選んで読んで行けばいいだけだけど、
実はややこしいことに、2つのシリーズどちらも図書館では歯抜けになっていた。
薄い方は2巻がない。厚い方は3巻がない。相互の構成がどうなっているのかも不明。

なので、厚い方の1、2巻と、薄い方の4巻以降を読みました。
少なくともこれなら落ちはなく、問題ないだろうと。

そしたらこの作品は、わたしが思っていたよりも複雑な構成になっているようで。
多分なんだけど、1984年版は1巻~6巻までが1つの話で、6巻でエンディングを
向かえるんだよね。で、6巻の後5年経ってから唐突に7巻が出されて、
その内容はエンディングのはるか以前、エルリックの放浪時代のエピソードが
付け加えられてるの。

そしてわたしは知らなかったんだけど、7巻のあと4年経ってから8巻が出て。
多分これも放浪時代のエピソードの巻なのだと思う。
ここから、厚い本は「薄い本のシリーズを時系列に並べ直したうえで」
薄い本の2冊を1冊にして出し直したのだろうと推察。

なので、今後エルリックシリーズを読もうと思う人は、
2006年版を4巻読んだ方がわかりやすいです。


※※※※※※※※※※※※


面白くないことはなかった。……面白いことは面白い。
天野喜孝の絵に合うキャラクター(←逆)が魅力的。
読み始めれば読み続けられる。
が、最初から文庫本8巻分のボリュームがあるとなると……けっこう大変かね。

グランドファンタジーは腹持ちが良すぎるというか。
海外物は一般的に読むのに時間がかかるし、それが8冊ないし厚いの4冊となると
めんどくささが先に立つ。

特に本作は若干SF風味が漂うファンタジーなので。
並行世界を取り入れてるんだよね。海外SFでよくある、細かく作りこんだ
全知全能の神が作った世界。その説明部分が多くてちょっと飽きる。
民族的なファンタジーなら多少壮大でも好きかもしれないが、
SF風味が壮大だと微妙。

とはいえ、この本は井辻朱美訳がゆえに読んだ。訳は満足。
文体はかなりこってりなので、グランドファンタジーの重たさを助長するが、
天野喜孝の絵に……(以下略)

薄いシリーズで「アリオッチ」と呼ばれていた虚無の神が、
後の厚いシリーズで「アリオッホ」に変更されていたのは正解。と思った。
アリオッチだと全然語感が軽いんだよなあ。
やっぱりゲルマン的語感の方が重々しい。


エルリックはメルニボネ帝国の皇帝。白子。
魔剣ストームブリンガーに半ばあやつられ、それに対抗しつつ、苦難の生を生きる。
全体的には壮大な悲劇、起こるエピソードも山あり谷ありというよりも、
ひたすら山、山、山、山で主人公が苦労がする話なので、
それを覚悟して読んだ方が良いと思われます。

面白かったが、……ボリュームが重いんだよな。
マイクル・ムアコックはこのシリーズだけでいいかなー。




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