ぬれせんべいってありますよね。
人気でもないのにずっとある。
私はそんなぬれせんべいが好きなんです。
理由は簡単で、ケーキやポテトチップスと違って我先に取り合う物じゃない。
なので、ゆっくりたくさん食べれるんですよ。
のんびり屋さんで食いしん坊な私と相性がいい。
そんな、ぬれせんべいとの初接触は散々なものでした。
たしか小学校に入りたての頃。
煎餅をもって家の中を歩いていたら、親がこぼしたお茶が煎餅に当たってしまいました。
当然、煎餅は濡れるわけです。
私が怒ると「ぬれせんべいだと思って食べれば悪くない」と親は言うのです。
私が怒っているのは、なんの謝罪もしないその精神に対してであって。
せんべいが濡れる濡れないの話ではない!
そうやって論点をすり替えるな!
そんな旨の言葉を伝えれば良かったのですが、語彙力貧困で口下手な私は甘んじてぬれせんべいを食べました。
それが、初ぬれせんべいでした。
実は洋服もびしょびしょに濡れていた私。
言いたいけど言い出せないもどかしさを感じながら、ぬれせんべいを口のなかにいれました。
それが意外に美味しい。
醤油とお茶の合わさった味も悪くないし、大部分がシナシナで所によりサクサクする食感も癖になる。
腹持ちは少ない枚数でも結構もつ。
むしろこっちの方が好きかもしれないと思いながら食べていました。
すると、親が「何で濡れた服でいるの?!着替えなさい!」と怒られてしまいました。
理不尽な出来事、怒りを感じるも言葉に出来ないもどかしさ、怪我の功名のぬれせんべい、再び理不尽に怒られる。
一連の出来事を思い返し、私は涙で顔を濡らしたのでした。