私が5歳のころのことです
父と母の話合いで市松人形を川に流すことになりました
市松人形の眼はガラスのようなもので創られていて潤んだ眼をしています
その両眼が落ち込んで眼の部分に大きな穴が開いてしまいました
それが父にも母にも気持ち悪く映ったようです
市松人形は床の間に飾っておくのが相応しくでも幼い子供にとっては静かに眺めているだけでは到底得心のいくものでなくて私は時におんぶしたり抱っこして連れて出ていたものです
「可愛いお人形さんね」と言われるととても嬉しくなったりして
その日私は人形を連れて帰って来て父の机の前で座布団に大事に寝かせ上にもう一枚座布団を掛けておきました
父は人形があるとは知らないで座布団の上に座ったものでその衝撃で両眼が落ち込んだのです
私は大人になってからも人形を川に流した時の情景 そのとき抱いた心情を
度々明確に思い出していまいた
そして私はあの時父や母に伝えたかった私の本当の気持ちもはっきり思い出すことができるのです
それは
人形の眼が落ち込んだことを何も私に詫びてくれなくてもよいのです
人形の眼が落ち込んで穴があいていても
私にとってはちっとも怖くもないし気持ち悪くもない
人形を抱くとこんなにも可愛くて着物の絹のいい匂いがする
だから川に流さないでずっと傍に置いて
私と遊ばせて欲しい
と父と母にお願いしたかったのです
そして私はこんなことを理解するのです
子供のころはどんなに心の中で思っていても自分の気持ちを整理して伝えることができないのです
そのために涙が出てしまうのです
そして子供は大人が思っているよりもはるかに高度なレベルでち密な感情を抱いているものだと
思います
その日の夕方 父と母と私そして市松人形で出かけました
隣の家の道子ちゃんは
「どこへ行くん?」
「川へ 人形を流しに・・・」
私 こんな時の涙は喉の奥から出てきます
遠い日の忘れられない思い出です
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/08/4d9d38b740a48c8ea6ffb6157c0b58b1.jpg)
「遠い日」のテーマで描いた昔の絵
父と母の話合いで市松人形を川に流すことになりました
市松人形の眼はガラスのようなもので創られていて潤んだ眼をしています
その両眼が落ち込んで眼の部分に大きな穴が開いてしまいました
それが父にも母にも気持ち悪く映ったようです
市松人形は床の間に飾っておくのが相応しくでも幼い子供にとっては静かに眺めているだけでは到底得心のいくものでなくて私は時におんぶしたり抱っこして連れて出ていたものです
「可愛いお人形さんね」と言われるととても嬉しくなったりして
その日私は人形を連れて帰って来て父の机の前で座布団に大事に寝かせ上にもう一枚座布団を掛けておきました
父は人形があるとは知らないで座布団の上に座ったものでその衝撃で両眼が落ち込んだのです
私は大人になってからも人形を川に流した時の情景 そのとき抱いた心情を
度々明確に思い出していまいた
そして私はあの時父や母に伝えたかった私の本当の気持ちもはっきり思い出すことができるのです
それは
人形の眼が落ち込んだことを何も私に詫びてくれなくてもよいのです
人形の眼が落ち込んで穴があいていても
私にとってはちっとも怖くもないし気持ち悪くもない
人形を抱くとこんなにも可愛くて着物の絹のいい匂いがする
だから川に流さないでずっと傍に置いて
私と遊ばせて欲しい
と父と母にお願いしたかったのです
そして私はこんなことを理解するのです
子供のころはどんなに心の中で思っていても自分の気持ちを整理して伝えることができないのです
そのために涙が出てしまうのです
そして子供は大人が思っているよりもはるかに高度なレベルでち密な感情を抱いているものだと
思います
その日の夕方 父と母と私そして市松人形で出かけました
隣の家の道子ちゃんは
「どこへ行くん?」
「川へ 人形を流しに・・・」
私 こんな時の涙は喉の奥から出てきます
遠い日の忘れられない思い出です
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「遠い日」のテーマで描いた昔の絵