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25/3/14金15;12約20年前には売上高で1兆円も差があったのに…西友買収を発表した九州発の激安スーパー「トライアル」の正体 25/03/14 08:15

2025-03-14 15:12:05 | 米国株

約20年前には売上高で1兆円も差があったのに…西友買収を発表した九州発の激安スーパー「トライアル」の正体2025/03/14 08:15PRESIDENT Online 掲載

■トライアルが店頭で駆使する最新のデジタル技術

九州を地盤とするディスカウントストアのトライアルHDが、老舗大手量販店であった西友を3826億円で買収し、完全子会社にすると発表しました。これは流通業界においてはビッグニュース。特に、西友の一時期の勢いを見ていた方々からしたら驚きのニュースです。

しかしその驚きは、西友が買収されることよりも、西友を子会社化するトライアルという会社を知らない人が多いことからきています。

トライアルとは何者なのか。なぜ多くの人はトライアルを知らないのか。トライアルの実態を整理することで、西友を買収するに至った納得の理由を解説します。

今回の買収劇。トライアルは九州では有名な小売業ですが、東京などの都心に住む人の中には「その店なんの店?」とピンときていない方も多いかもしれません。しかしこの会社、実は日本の小売業の中でもトップクラスのDX化を実現させている企業として業界では有名です。

具体的には、顧客の購入情報と販売管理を結び付けた「ID-POSシステム」を活用した自動発注によりローコストオペレーションを実現。売り場では「Skip Cart」という同社独自のセルフスキャン&決済ゲートの通過でレジ人員を削減し、会計待ちをなくす仕組みを導入しています。

また、売り場にはAIカメラを設置し、常に最適な売り場陳列を考えたり、そのカメラで得た情報から、値下げ(ダイナミックプライシング)やクーポン発行をするなど斬新な価格設定を行っています。最新のデジタル技術を駆使して急成長している会社。これがトライアルです

日本の流通小売業を牽引する存在だったが…

現在は買い手であるトライアルばかりに注目が集まっていますが、もともと西友という会社の方が知名度もあり、流通業界の中で知らない人はいない存在でした。

1963年に「西友ストアー」として誕生。69年には他社に先駆けて本格的な物流センターを東京の府中に開設。78年にはフランチャイズ・システムによりコンビニのファミリーマート事業をスタートさせています(現在は伊藤忠商事子会社)。

79年に上場。80年には日本ではまだ珍しかった流通小売業のプライベートブランド(PB)商品である無印良品を生み出しました。

2000年に日本初のネットスーパーを作ったのも西友です。当時の西友は、時代に先駆けて最新時流を取り入れ、ファミリーマートや無印良品を生み出すなど、まさにセゾングループの中核企業ならではの先進性で、日本の流通小売業を牽引する存在だったのです。

とはいえ、業績・財務状況は1990年代後半のバブル崩壊からじわじわ悪化。米国のウォルマートと2002年に包括的業務提携を結び、セゾングループらしい「ちょっと良い暮らしを提案する」店から「EDLP(エブリデーロープライス)」業態へとシフトしていきました。

08年に米・ウォルマートの完全子会社になっても業績は改善されず、楽天とネットスーパーで協業したり、新たなPB商品を作りだしたりしていきましたが、結果的に良い成果は生まず、売り上げは減少していきました

元リサイクルショップが急成長したワケ

21年にウォルマートは西友株式の多くを米ファンドKKRに売り、日本市場から撤退しました。西友の行方が取りざたされ始めたのはこの頃からです。

01年の西友の売り上げは1兆711億円(01年2月期、5%増)で、日本の流通小売業界でもトップ10入りしていたのですが、18年になるとそこからも外れてしまいます。その後、九州や北海道の店舗を他社に売却し、首都圏を中心にした店舗構成へと集約していきました。

一方のトライアルHDの創業は1974年。福岡市に古物商、リサイクルショップとして「あさひ屋」を開業したのが創業です。84年にトライアルカンパニーに改称し、小売店向けのPOSシステムなどのシステム開発の受託を行うようになりました。当初から自前でデジタル化を進めていた会社だったわけです。

92年にトライアル1号店を開店(現在は閉店)し、96年に当時、米国で拡大していた「スーパーセンター」という数千坪という大型の売り場面積でさまざまな商品をディスカウント販売する形態の1号店を北九州市にオープンします

そして同社が成長する起点となったのが、01年から始まった居抜き物件への出店です。

これは投資も抑えられ、内装に手を加えれば新規出店が可能です。急成長をしたい流通小売業の常套手段といえます。

トライアルは九州を地盤にしながら、高度経済成長期に広がったGMS(総合量販店)撤退後の空いた物件に入居する形で出店を続け、一気に成長企業へと進化していった

まさに流通業界の下剋上

トライアルの躍進は2001年からの九州地区小売業上位企業の変遷図を見るとよく分かります。

2001年には九州の小売業上位20社にトライアルの名前はでてきません。2000年度の売上高は約113億円です。

しかし06年になると突然九州地区8位に登場し、11年には一気に九州地区で2位、その後も九州地区では2位の座を守り続けています。直近の売上高は7179億4800万円なので、20年ほどで売上高は63.5倍も上がったことになります。

今回の西友買収で、九州地区では一気に1位になる予定(24年度の西友の売り上げを加えると単純計算で売り上げは約1兆2000億円。九州1位のコスモス薬品の25年5月期年間売上予想が1兆370億円のため)です

しかも、もともとリサイクルショップとしてスタートしたトライアルが、一時期は流通業界のトップグループ企業だった西友を買収するのです。まさに流通業界の下剋上です。しかし、両社の記者発表などを見るにつけ、トライアルはもとより西友側も非常に前向きな買収として受け止めているように見えます。それはなぜなのでしょうか。

90年代後半から金融危機と景気低迷で節約志向が高まり、日本にもディスカウントやEDLPの波が押し寄せました。その中で西友がウォルマートと手を組んだこと自体は間違っていなかったのです。

02年にウォルマートと包括的業務提携をした際に、一気にウォルマートのEDLP化を進めていれば、また違った結果になったかもしれません

ウォルマートとの意外な関係

しかし08年に子会社化していくまでの間に、日本ではドン・キホーテやスーパーのオーケー、ドラッグストアの大量出店など、さまざまなディスカウントストアに先を越されてしまいました。トライアルも2000年代前半に大きく伸びた一社です。

そのトライアルがベンチマークとしたのが、まさにウォルマートなのです。

ウォルマートを徹底的に研究し、ウォルマートの経営スタイルをモデルに店舗展開などを進めてきたのです。その結果、トライアルは見事にトライアル流のビジネスモデルを確立し、ウォルマートの子会社だった西友を自社に取り入れることに成功しました。

外から学んだトライアルと実際にウォルマートの傘下で経営されていた西友。この両社が融合することに違和感はないし、逆に組み合わさることで相乗効果が発揮される可能性は高いと言えるでしょう。

両社にはウォルマートという世界のトップ小売業の存在が大きく影響していたのです。

今後、西友を取り込んだトライアルは、どんな戦略にシフトするか?

歩調が合うとはいえ、これからトライアルは3つの課題に直面することになります。

■①西友の体質を変えられるか

下記は両社の直近2期を比較した決算データです。

トライアルは増収増益であり、24期連続増収という好調な経営状況です。ディスカウント業態のため利益率は低いですが、当期純利益も141%ですので出店やデジタル投資も含めて積極的に取り組んでいる中ではかなりの好業績をたたきだしていると言えます。

一方の西友は、23年12月期までしか公表されていませんが、減収増益という状況。当期純利益は前期比57.4%と大幅マイナスとなっています。24年には北海道の9店舗をイオンに、九州69店舗をイズミに売却したため、現在は本州に242店舗というのが西友の展開エリアとなります。

西友は本州中心の店舗展開になったとはいえ、現状はこれまでの西友流の店舗運営スタイルです。PB商品開発力に一日の長があるとはいえ、トライアルから見れば店舗にかける人員数、売り場づくりのムリ・ムダ、店舗のデジタル化の遅れ、非効率的な販促手法など、変えるべき点は多々あります。

これらをどのくらいのスピード感で西友に注入していけるか。

②ヤオコーやベルクと同程度の数字を出せるか

両社が一緒になることの最大のポイントは、首都圏の好立地にある西友を、トライアルが手に入れたことでしょう。もともと立地が良く、周辺に多くの人口を抱えるところに西友は店舗展開してきています。

それらの店をトライアル流の売り場オペレーションに変えることで、販管費が下がり、利益が出やすくなる可能性は高いと思います。もちろん、これまでトライアルが出店してきた地方の郊外立地と比べると家賃は高く、人件費も上がり、現在の販管費率17.5%を維持するのは難しいでしょう。

トライアルが西友を抜本的に変え、従来の食品スーパー型の販管費を大きく抑えることができるかどうかが課題でしょう。

ちなみに首都圏に展開する、ヤオコーやベルクという埼玉の成長スーパーでさえ24%程度の販管費です。

両社はスーパーの中では販管費は低いほうですが、トライアルが西友を抜本的に変えれば、ヤオコーやベルク以上に西友店舗の販管費を大きく抑えて、利益を出せるようになるかもしれません。都心の店舗の売り上げが乗ること以上に、都心の店舗の利益をかさ上げすることができる可能性がある点こそが、両社の相乗効果でもっとも期待できる点と筆者は考えています。

③首都圏で生鮮を強く打ち出せるか

西友がウォルマート傘下になってから、食品の中でも鮮度が要求される生鮮三品と総菜の売り場が弱くなったと言われてきました。筆者もいくつかの売り場を定点観測してきていますが、都心より少し郊外の店舗では、オーケーやヤオコー、角上魚類といった成長しているスーパーに明らかに負けていると感じる店もありました。

トライアルは21年から「生鮮食品強化」を掲げて、徹底したフレッシュ(生鮮三品と総菜)強化を行っています。結果的に全社売り上げの74%が食品となり、そのうち生鮮・惣菜の売り上げ構成比が25%、前年比で13.3%の伸びを示しています(24年6月期同社データより)。

ディスカウントストアでありながら、徹底した購買データ分析とEDLPモデルに磨きをかけ、日本を代表するリテールAI企業になってきたトライアルのDXの取り組みを、西友に導入していくことができれば、弱みだった生鮮食品や総菜売り場を再構築できるかもしれません。

世の中では物価高、水道光熱費も上がり、家計を圧迫

このような世の中になると、日々の生活費を抑えようという節約意識がさらに強まります。

世の中のタイパ意識、コスパ意識はより強く働くでしょう。

トライアルはタイパとコスパをデジタルで実現させた日本初の小売業と言ってもいい会社です。これからトライアルがどこまでの変革を西友に引き起こすのか、その取り組みに注目したいと思います。----------
岩崎 剛幸(いわさき・たけゆき)氏,経営コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、ムガマエ株式会社を創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングを得意とする。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も



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