転身して稼げる農家になるのにまず見るべき数字 農業での成功には一定の投資は欠かせない
2025/01/29 14:00様記事抜粋<
地方暮らしや農業に関心のある人は増えているようです。しかし、実際に農業所得のみで生計を立てるのは至難のこと。一方で、農業所得1000万円以上の人もいるのです。本稿は、『金持ち農家、貧乏農家』の一部を再編集のうえ、金持ち農家になるための、お金と時間の使い方をご紹介します。
数億円の設備投資を行う人の考え方
農業で成功するには、一定額の「投資」は欠かせません。土地の購入やトラクターなどの農業機械、それらを格納する倉庫や作業場の確保、施設園芸だとビニルハウスなどの施設が必要です。
全くのゼロからの農業参入だと数千万円規模の投資が必要になることもあります。親元就農でも、引き継いだ農業機械や施設が古いことも多く、新規就農者と同じくらいの投資が必要になることもあります。さらに、農業経営を長年続けるためには、継続的な投資も必須です。
では、金持ち農家と貧乏農家では投資に対する考え方がどのように違うのでしょうか。
投資の成否はシンプルに「投資した金額より利益が増えるか」「返済を続けられるか」の2点が達成できれば成功と言えます。逆に、投資金額よりも利益が少なかったり、返済が滞ってしまうようなら、その投資は失敗したと言えるでしょう。
私の知り合いであり数億円をかけてピーマン栽培施設の投資を行った農業生産法人の代表は、投資に対してかなり前向きです。投資をすればその分、利益が増えていくと言います。
「まずは、経営面で月次決算しています。税理士が来て、毎月締めていきます。ハウスごとの経費も月次で出していきます。そこで数字がきちんと出てくると、どこで何を改善すればいいのかがわかってきますよね。あるいは、課題を分解すれば分解するほどやるべきことが明確になるので、それを最低でもハウス単位・月単位でやっています」
「今、資材費の高騰により、ハウス建設費用が高くなっているとよく言われます。しかし、これは面積あたりで計算した場合に以前より高くなっている話です。生産量に対する製造原価で考えると、建設費用の見え方が変わってきます。
たとえば、古い性能のハウスでは収穫量が20トンだったものが、新しい性能のハウスで25トン収穫できるようになれば、製造原価が安くなる可能性があります。また、新しい性能のハウスでは、必要な労働力が従来の8割で済むとか、ランニングコストも安くなる可能性もあります。このように計算して投資しています。そのため、補助金の申請も通りやすく、融資も問題なく受けられます」
投資以上の利益を確保し続ける
「投資計画を立てるには、自分のデータをしっかりと持っていることが前提になります。過去のデータと投資した結果のデータを自分の実績ベースで持っていることで、説得力のある計画を立てることができるし、それが成功する根拠になります。これは、他人のデータだと難しいかもしれません」
このように投資を回収することができる農家は、数字を見て投資の判断をしています。そして、投資した分を回収することができるので、また新しい投資ができるというよいサイクルになります。
一方で、投資に失敗して、次の投資ができない農家もいます。つまり、投資額を超える利益が出せない農家です。無理な計画だったのか、計画時点では問題なかったが、その後の農業生産や販売、人員配置などがうまくいかなかったのか、その理由が明確でない方が多いようです。
投資の問題点が明確でないために、何を改善すればよいのかもわかりません。これは、農業経営を数字で捉えず、感覚だけで経営していることが原因です。
さらに、現在の農業生産で手一杯で、経営状態が芳しくないため、投資ができない農家もいます。その場合、機械や設備が老朽化し、生産性が落ちるため、さらに儲からなくなるという負のサイクルに陥ってしまいます。これを打破するには、今回紹介した農家のように農業生産と経営を数字で捉え、問題点を明確にして改善していく必要があります。
農業機械や施設設備は、どんどん古くなります。農業経営を継続するには、定期的に数百万円から数千万円の投資が必要です。その投資を計画的に行い、投資以上の利益を確保し続けることが、金持ち農家になる秘訣です。
時給を意識しているかどうかで大きな違いが出る
「あなたの時給はいくらですか?」
この質問にすぐに答えられますか? では、次の質問はどうでしょうか?
「あなたは時給いくらを目指しますか?」
最初の質問は、「現在がどうなのか」という現状認識ができていないと答えられません。2つ目は、「これからどうなりたいのか」という目標がないと答えられない質問です。
金持ち農家は自分の時給を意識していますが、貧乏農家は自分の時給を意識していません。実は、時給を意識しているかどうかで大きな違いが出ます。
その理由は次の3つです。
①現在地と目的地が明確でないと金持ち農家になれない
②時給を意識しないと生産性が上がらない
③自分の時給が明確だと、仕事を人に任せる判断軸になる
それぞれ詳しく解説します。
①現在地と目的地が明確でないと金持ち農家になれない
今の自分の時給を答えられる方は、自分の現在地を理解している人です。そして、将来の時給を答えられる方は目標が明確な人です。金持ち農家になる第一歩は、自分の現在地を認識し、将来の目標、つまり目的地を明確に持つこと。これは、カーナビに目的地をセットすることに似ています。金持ち農家になるためにも、現在地の認識と目的地の入力が大事なのです。
②時給を意識しないと生産性が上がらない
時給を意識しないと生産性は向上しません。生産性とは、「質の高い仕事を少ない労力や時間でできるか」ということです。
たとえば、自分の目標時給を2000円に設定しているなら、2時間仕事をして4000円分の価値を生み出すことができるのか? という視点になります。また、これまで2時間かかっていた仕事を1時間でできるようになれば、2000円分の価値を生み出したことになります。
このように時給を意識して自分の仕事を見直すことで、生産性に対する解像度が上がり、問題点が見えやすくなり、同時に改善点も見えるようになります。結果、仕事の生産性が上がり、儲かる体質の農業経営が実現できるようになります。
③自分の時給が明確だと、仕事を人に任せる判断軸になる
自分の時給が明確だと、人に仕事を任せる際の判断軸になります。農作業のほとんどは単純作業の繰り返しです。時給1000円のパート従業員ができる仕事をいつまでもあなたがしているなら、あなたの時給は1000円です。もし、あなたが自分の時給を上げていきたいのなら、時給1000円の仕事は、時給1000円で仕事をする人に任せて、それ以外のあなたにしかできないことに自分の時間を使うべきなのです。
その際の判断基準となるのが、あなたが将来手に入れたい時給です。将来の時給より安く働いてくれる人がいて、その仕事を任せることができるなら、どんどん人に任せて自分は時給の高い仕事をするようにしましょう
時給を意識することは、単に「自分の時間を金銭的価値として意識しましょう」ということではなく、その時間をどのように最も効果的に使うのかを考えるプロセスです。これを通じて、単なる農作業をする農家ではなく、自分の時間と従業員の時間をより価値のあるものへと変えていく農業経営者になることができます。著者:高津佐 和宏氏
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