【街中で琴を弾く】2013-11-10
琴の奏者が街中で琴を弾いていたが、人々はこれはすごいものかもしれないと思って、大勢集まってきた。
しかし、琴の音が聞こえ始めると、みんな、「何だ!こんなものか!」と思って、一人また一人と帰っていった。
しかし、一人だけ残っている人がいた。琴の奏者は喜んだ。
「よかった。琴がよくわかる人がいたんだ。よし、期待に背かぬように頑張ろう!」
そう思った時、残っていた一人の人が言った。
「その琴を置いてある机はわしの家の物なんじゃ。演奏が終われば、持ち帰るんだけど。もしそうじゃなければ、さっさと帰っているところだよ。」
【嫉妬】2013-11-09
楊郎中という人の妻、趙氏は、大変嫉妬深かった。
ある日、楊郎中が『詩経』にある周南の数編を何度も繰り返して朗読していた。
「皇后は、垂れ下がった木の枝のように、下の者に親切にし、決して嫉妬することはないのだ。嫉妬しなければ男女関係はさらによくなり、子孫は繁栄する」
すると、これを聞いた彼の妻が尋ねた。
「どういう本に書いてあるの?」
「『詩経』という書物だよ、」
「だれが書いたの?」
「周公だ。」
「なるほど周公が書いたのね。でも、周公の奥さんなら、絶対そんなことは言わなかったでしょうね。」
【身に着けている道具】2013-11-08
蜀の国は一時期、厳しく酒の醸造を禁止した。
醸造していた者は捕らえられ、罪に問われた。ひどいのは、以前から所蔵していた醸造用具を持っていたというだけで、数人が醸造した者と同様に罰せられたことだ。人々はこれはよくないと思ったが、蜀の国王、劉備は聞く耳を持たなかった。
ある時、簡擁という人が劉備の外出につき従い、路上を一人の男が通り過ぎるのを見て言った。
「あの男を捕まえてください。あの男は強姦犯です。」
劉備が不思議に思って、「どうしてわかるんだ?」と尋ねると、
簡擁が答えて言った。「あの男は強姦の道具を持っておりますから。」
これを聞いた劉備は一笑し、すぐさま、例の醸造の道具を持っているだけで捕まった人たちを解放するよう命じた。
【高帽子】2013-11-07
人をおだてることを俗に「高帽子を贈る」という。
ある政治家の門下生が二人、外交官に任命され、恩師のもとへ挨拶に行った。恩師は二人の門下生に向かって言った。
「今の世の中、正直に言っていてはうまくいかない。みんな誰かに高帽子を贈っているよ。情けないことだよ。」
門下生の一人が言った。「先生のお言葉のとおりです。今は、先生のように『高帽子』を喜ばぬ者がどれだけいることでしょうか?」
これを聞いた恩師は大いに喜んだ。
恩師の家を出てから、恩師に話した男が一緒に行ったもう一人の男に言った。
「先生に高帽子をさしあげたよ。」
【いっしょに酒を造る】2013-11-06
甲と乙がいっしょに酒を造ろうということになった。
甲「君は米を出してくれ、ぼくは水を提供するよ。」
乙「米は全部ぼくのものなのに、できた酒はどうやって分けるんだ?」
甲「ぼくは君をだましたりしないよ。酒ができたら、ぼくは水分だけもらえればいいんだ。残りは全部君のものだ。」
【口のうまい嫁】2013-11-05
昔、口の巧い嫁がいた。ご飯が炊けたので、まず、舅(しゅうと)に飯を盛って差し出した。
舅は一口目を食べて褒めた。
「今日のご飯はほんとに美味い。三杯は食べられそうだ。」
舅の言葉を聞いた口の巧い嫁はすぐに言った。
「うれしいです。ご飯を炊いたのは私です。」
ところが、舅が二口目を食べようとして、ご飯を口の中に入れたとき、「カチ!」と音が聞こえた。舅がすぐに叫んだ。
「おや、砂がこんなにたくさ入ってるぞ。」
口の巧い嫁はあわてて言った。
「このお米を研いだのは義妹さんです。」
それから、舅は箸でご飯をかき回してから、においを嗅いでいった。
「どうして、このご飯は糊のようなにおいがするんだ?」
口の巧い嫁は今度もきっぱりといった。
「お義母様が火の番をなさったのです。」
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