今の子どもたちは童謡を歌わなくなった、童謡を知らないとよく聞く。それは少し違うかなと思う。大人たちが歌わなくなったからではないのだろうか。
世のお母さんやお父さんたちがあまり童謡や唱歌に関心がないとか、生活の一部に入りこんでないのではと思う。だから子どもたちはそれを聴くチャンスがないのだろう。
私などは赤ちゃんの寝ている上に吊るされたメリーゴーランドから流れる「ゆりかごの歌」をよく耳にした。ハーモニカで吹いた「雨降りお月」などは、その頃の記憶とともに、今も心にこれらの歌が残っている。
学校で習った歌も覚えるかもしれないが、やはり母親がいつも歌っていた歌とか、何かの時にみんなで歌った曲とかは、なおいっそう心に焼きつく。そういう場面が今の子どもたちには少ないのではないのかと思う。
ちょっと悲しいか、専門家でも学校教育だけを原因に思っているケースを時たま見受ける。歌は歌いつぐもの、聴かせつぐもの。教えるのではなく、自然と生活のなかで染みこんでいくもの。それが一番子どもにとって必要なのではないのだろうか。
これは童謡に限ったことでもないが、歌もその一つだとは思う。
楽しんでこそ音楽。
でも、楽しいだけの音楽には、ぜんぜん魅力を感じない。
それは、人生にも言えることなんじゃないかと。
「生存未遂」伊吹留香
「童謡唱歌、歌謡曲など(23)どこへ行った、童謡·唱歌」