あべっちの思いをこめた雑記帳

秋とオシャレ

 春はあけぼのから始まる枕草子。その中に秋らしいなと感じるのは、夕暮れと彼女は書いている。
 日が落ちかけて、あたりが夕焼け色に染まる秋の風景は、1000年を経た今でも見事に的を得ている。黄昏は人の顔が見えないほどに暗くなって、「誰そ彼」(たそかれ)と言うことから始まったらしい。

 元は秋を「穐」と書いていた。禾編(のぎへん)が使われたのは、穂先の垂れている稲を表しているかららしい。
 そして、紅葉が山を彩ることを「山粧う(やまよそおう)」という。これは何も俳句の世界に限ったことだけではないと思う。山が粧うなら、秋は人間さまも粧っていい季節なのかもしれない。

 山や自然だけでなく、人も身なりを飾り、オシャレに気を配ってもよいと思う秋。
 調べてみたら、「おしゃれ」という言葉は「曝す(さらす)」が語源らしい。布などを染める際に染色剤を洗い流してさらした状態。それがいつしか、人間も世間の荒波にもまれ、立派な風格になる人のことを「おしゃれ」というようになった。
 つまり「さらす」が、いつしか「しゃらす」となり、やがて時代とともに「しゃれる」へと変化し、「おしゃれ」に至ったようだ。

 秋の山々へは赤や黄色の木の葉を求めて、大勢の人が出かけて行く。現代は紅葉と書き、「もみじ」とも「こうよう」とも読む。  
 秋になって、植物が風や気温などにより揉み出されて色を変えることから、揉出(もみで)が「もみづ」「もみじ」へ変化したという。昔は「黄葉」と書いて「もみち」と読んだ。だから元々のもみじは黄色い葉をさすのであろう。平安時代くらいまでは、赤い葉よりも黄色い葉を好んだことがわかる。

 緑の樹々に、黄や赤の色が映える秋の山々。
 緑・黄・赤の信号のように、紅葉の名所はこれからが忙しい。
 オシャレな紳士淑女がどっと押し寄せるシーズンはもうまもない。

                    「つれづれ(77)秋とオシャレ」

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