先ほど花桃の公園を訪ねてみた。昔からの仕事の友人が桃を見に行きたいと先週連絡があり、それならと案内をしたわけである。
わが町では梅が満開になり、今桜の芽が出始めた。その中間を彩るのが桃である。私の生まれ育ったこの町では幼い頃からそう覚えこんでいる。
梅にちなんだ故事や祭りや慣習は多いが、桜も同じようなことがいえる。いわば日本人の古くからの楽しみであったり、生活の知恵であったり。
反面、桃はそういうものが意外と少ない。雛まつりではその花の貴重さが知られてはいるものの、調べてみてもわりと歴史にさえあまり登場していない。女というイメージが強すぎ、武士の世界にはさほど必要とされてなかったのかとさえ思う。
一般的に桃といえば食べる桃をさし、関東では山梨県勝沼あたりが有名だが、ここのは観賞用の花桃である。見るだけの桃としては日本一の規模を誇る。
もともと桃は観賞する花木で、果実を栽培するようになったのは明治になってからとのこと。万葉集には七首桃が詠まれているが、この時代はすべて食べることのできない花桃のことであるらしい。バラ科で、古くに中国から渡った。日本神話にもモモを投げつけて難を逃れた有名な話が出てくるくらいだから、古代にはもう花桃はわが国に渡っていたと考えてよいと思う。弥生時代の遺跡からはその種子が発見されている。
代表的な品種の矢口はこの町にはたくさんあるが、この品種は3月3日の節句用として用いられることで知られている。
一昨日その桃の花の、いよいよ咲き出しますよという心意気を見たくて近くの公園に出かけた。そして本日の再園である。思っていたより速く、花は8分咲きであった。
まつりが始まるという前日のその静かさの中で、まだ早い桃をじっくり眺めていたかった先週。じっくりと観賞できた今日。そして次回は25日になるが、満開のひと味違ったこれらの花桃を眺めるつもりでいる。
「季節の花(38)桃の花は八分咲き」