歌手の八代亜紀が亡くなった。同じ時代に青春を送った一人として、彼女の歌の記憶はいくつもある。「おんな港町」や「恋歌」などは、今でもカラオケで歌えそうな気さえする。それでいて彼女のことはあまり知らない。
熊本出身で、その存在を知った時にはすでに人気沸騰で、あとは・・・。そんなことを思い出しながら、一つだけ彼女の歌との共通の思い出が今でも鮮明に記憶として残っている。
あれは昭和55年の6月だったと思う。仕事で2回目の沖縄訪問の時だったから、時期は確かなはずだ。
国際通りに面した大きな交差点を少し曲がった道路沿いにあるスナックに入った時のこと。その頃はまだ現在のようなカラオケと違って、画面のない、つまり音楽だけの流れるカラオケであった。
その店で軽快なリズムの歌を初めて耳にした。一緒に同行した地元の女性が何気に歌ったその曲が耳に残り、いろいろその歌のことを教えてもらった。「貴方につくします」というタイトルだということもその時知り、歌も数回繰り返して、歌唱を指導していただいた。もちろん私としてはまったく知らない曲であったが、いっぺんにその歌が好きになり、沖縄の旅のみやげとして持ち帰った。
それまで八代亜紀といえば、私は1パターンの雰囲気でとらえていたが、こういうメロディーもあるのだとしみじみその時思ったものである。
ちなみにこの貴方につくしますは、オリコンチャートで第10位になったと後日知った。八代亜紀の歌では、雨の慕情が第9位にランクされているが、それが彼女自身の最高位であり、舟唄という曲が15位というのと比べても、この貴方につくしますが人気曲だということが推測できる。
歌唱指導をしてくれた喜友名さん、ありがとう。今はどうしておられるのか、知るよしもないけれど、沖縄を思い出すたびにこの「貴方につくします」を思う。そして今般の八代亜紀の訃報を知って、またこの歌を思い出しました。いつか機会をみてこの歌をまた歌ってみたいなと思います。
「童謡唱歌歌謡曲など(26)貴方につくします」