日曜日はよく晴れた空だった。
その3日前にも鎌倉へ出向いたので、電車は久しぶりではないはずなのに、ここ数年はまるっきり電車にお世話になる回数は減った。だからか、都内に通勤していた頃は社内では居眠りばかりしていたのに、鎌倉もその日曜日の車内も目の玉をくっきり開き、外の景色や中の人間観察に余念がなかった。
東京の紅葉は、それなりに見ごたえがある。赤色もすてきだが、やはり心に焼き付くのは見事な黄のもみじだろうか。都会には黄葉のほうが似合うように私には思えてならない。
そんな黄葉に思いを寄せていたら、数年前に訪ねた日比谷公園のそれを思い浮かべていた。その時は、東京の空気を思いっきり吸いたくて、マクドナルドで時間調整をしたあと、日比谷公園を散策したのだ。黄の葉が見事なまでに風に舞い、秋の別れを目の当たりにした。
その道路一本隔てたところのゾーンが厚生労働省と人事院。
警視庁、国交省、外務省、法務省、農水省、財務省なども同じエリアに存在する、我が国の行政機関が集中するブロック。省を数えたらきりがない。
その日は人事院での表彰式があるというので、久しぶりに電車に乗って出かけたのである。
三重の警備らしきものを抜けてから、係りの方に誘導され待合室のような部屋に通される。担当者から20分くらいお話などを伺ったり、軽い雑談。
そして会場へ案内される。
お偉い方がずらりと並んだ表彰式。
正直、すっかり戸惑った。何回も表彰式には慣れっこのはずが、こういうお堅いビルでの本格的な規律のあるのは初めてであった。汗が出て、緊張きわまりない。
式のあとの別室での懇談会。
師走だというのに、汗をふきふき。お偉いさん数名と撮影の人、それに速記の方が二名ほどいらした。おおよそ45分くらいだったろうか。その年の一番長い時間だったような気がする。
ポスター配布は国家公務員60万人の職場ばかりだと思っていたが、どうやら違うようである。全国の区市町村の役所すべてに私の標語のポスターが配布され、掲示されたようである。休憩室や食堂など、職員が集まる場所に貼るということらしい。
もっとも国民用ではなく、公務員のモラルアップのポスターなので、言われてみれば、当然かなとも思えてきた。
そのポスターに標語の作成者は茨城県の私の名前が表示されていたのには驚いた。事前に県名と氏名は表示してもいいか質問は受けてはいたが、実物ポスターを見て、やはり驚きは隠せない。
でも、この標語が公務員339万人のモラルアップに多少なりともつながればと思えばやはり嬉しい限りであった。そういえば、人事院には守衛から廊下、エレベーター内外、待合室とありとあらゆるところにそのポスターが掲示されていた。聞くところによると、その印刷部数は十数万部に達したらしい。
その日は最高に緊張し、かつ最高に有意義な一日であったなと、帰りの電車の中でひとり納得のうなずきであった。
そして、数日前の日曜日の東京行きも、数年前のなつかしい黄葉と同じように帰りの車内では思い浮かべていた。
「つれづれ(82)霞ヶ関の人事院での表彰式」