先日歩いていて、梅の香りをふと嗅いだ。それは懐かしい、やさしい春の匂いだった。
愛車の車検のためその店舗に車を預け、復路は決まって1キロちょっとの道を毎回散策と意気込んで徒歩で帰る。車検は2年毎の同じ時期なので、その界隈はもうすっかり馴染みの景色になっている。なぜならたまに電車に乗る時、徒歩の場合なら駅までの往復定番道にもなっているからだ。いつもの木の、季節の香りの思いっきり恩恵を受けたいと心軽やかに足を進ませる。
半分くらい行くと、小さな川を渡る。が、今は堤防をコンクリート化するための大規模な工事をやっていて、いつも渡っていた橋が取り外され、先へ行くには大回りをし、別な橋を渡らなければならなかった。もっと残念なことは、楽しみにしていた付近にあるはずの大きな梅の木の2本が消えている。
今年もまた来たよと声をかけ、その姿を写真に収めたかったのに。梅の巨木の在りし日の面影を、しばらく立ち止まって偲ぶ。
そして、わが家に近くなってきたご近所の、道路沿いにある梅の木は今年も元気なのを知った。この木は特別大きいといえるほどの梅ではないけれど、徒歩で行ける範囲では、今はこれ一本だけになってしまったなあとその木に問いかける。
そういえばたしか梅を歌った、ほのかな童謡があったことを思い出した。小学校時代に「学校がえりに近道を・・・・」という歌があったことを。
たしか小学校5年生か6年生の時だったと思うが、給食の時間中に校内放送でこの歌が流れた。きれいな声で、それはていねいなソロだった。
歌う前に梅についての話がいくらかあったような気もしたが、当時の細かいことは覚えていない。のびやかな高音で、いかにも素直なその歌い方が、行動派の私にとっては心に響き、幼心に初めて聴いたこの歌が一回で好きになった。歌ったのは他のクラスの女の子だったと思う。
その童謡を図書館などでいろいろ調べているうちに、タイトルは「梅の花」だということを知った。
昭和17年2月の作品のようだということもわかった。今でも一番は詩も覚えているし、メロディーも歌える。
楽譜を見たくてあれこれ本を調べたが、どの本にも楽譜も詩も見当たらない。
もう楽譜もない、まったく消えてしまった唱歌なのだろうか。
梅の花
学校がえりに 近道を
通って来れば どこからか
ほんのりにほう梅の花
文部省唱歌
「童謡唱歌歌謡曲など(2)消えてしまった梅の花」
※写真は昨年(令和2年3月)撮影