あべっちの思いをこめた雑記帳

鬼怒川温泉

 あの時は、降っているのか降ってはいないのか、それはわからないくらいの雪だった。
 その時の、高い窓から見る雪は何年ぶりか忘れたが、鬼怒川温泉も久しぶりであった。今からもう4年ぐらい前のことになるのだが、たしか16人の仲間たちと記憶している。

 この地を初めて訪ねたのは12歳の時の7月10日と覚えている。 家族全員での初めての温泉旅行である。急にその時の写真が見たくなった。
 丸山山頂で撮っている。夏だから学帽にワイシャツ姿で、ちょっと大人びたような感じかもしれない。生意気盛りを卒業して3ヶ月も過ぎた頃の、一番伸び盛りのはずであった。

 12歳での鬼怒川から、22歳まではその後は一度も訪ねてはないけれど。それから時は過ぎ、ふとしたことがきっかけで22歳から旅行会社にお世話になった。
 特殊な部署に配属になり、この鬼怒川には50回くらいは泊まっただろうか。親友4人と泊まったこともあったし、社員旅行で来たこともあった。でもレジャーとして自分のお金で泊まったことはこの時がたしか3回目。ほかはすべて出張という名前に甘えて、会社に資金を調達していただいていた。

 社会人になってからは鬼怒川温泉をしっかり見てきたし、大切な時間を割いてきた。その間、きぬ川館本店、さくらホテル、グリーンパレス、鬼怒川観光ホテル、星のや、ロイヤルホテル、ニュー岡部、鬼怒川第一ホテル、そしてこのホテルニューさくら。馴染んだホテルが倒産等により次々と経営者を変えている。

 旅とは一期一会の機会だと思う。
 名古屋の木村さん、大田区の桜井さん、そしてこの鬼怒川の黒澤さん、香取さん、加藤さん、鱒渕さん、福田さん、星さん、猪瀬さん、上杉さん、荒川さん、高田さん、面川さん、臼井さん、沼尾さん、渡辺さん、他たくさんの人たち。
 故人の方にはそっと手を合わせる。

 そして今日同行してくれた6人のお友だち。
 私のもつ旅仲間との一夜であったが、みんな元気でまもなくの新しい年を迎えるのだろう。
 翌朝目を覚まして部屋から眺める鬼怒川の水はひとしお光って見えた。


                 「心に残る旅(25)鬼怒川温泉」

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