「まほろば」は、さだまさし作詞(詩)作曲の楽曲、1979年4月発表のアルバム「夢供養」に収録されている。
歌の舞台は奈良の春日野である。『万葉集』の磐姫皇后の作歌2首(ただし偽作説が強い)
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- 在管裳 君乎者将待 打靡 吾黒髪尓 霜乃置萬代日(巻2-87)
- ありつつも君をば待たむ打ち靡くわが黒髪に霜の置くまでに
- (大意)このままずっと君を待ちましょう 垂らしたままの私の黒髪に霜が置くまでも
- 居明而 君乎者将待 奴婆珠能 吾黒髪尓 霜者零騰文(巻2-89)
- 居明かして君をば待たむぬばたまの我が黒髪に霜は降るとも
- (大意)夜を明かして君を待ちましょう 私の黒髪に霜が降ろうとも
- なお『万葉集』では89を87の「或本の歌に曰く」としており、補足として「右の一首(89)は古歌集の中に出づ」と注釈がある。
を、モチーフに奈良・春日野の風景と男女の心のすれ違いを描いている。現在でもさだは頻繁にコンサートで採り上げており、アルバム発表直後「日本ならではの美、それも古式ゆかしい美をなんとか曲に凝縮できないものかと、この作品以前にも何度もトライをしてきているのだが、初めて『不完全感』の無い曲が出来たと思えた」と語っていた。さだが師と仰いでいた詩人でもある宮崎康平が、この曲を賞賛し「自分を超えた」と言ったが、同時に「聴き手がついてこなくなるからこれ以上難しい曲は書くな」と忠告している。さだの解説では万葉植物園のヒオウギに添えられた歌は正確でないと指摘しているが、現在では巻2-89が正確に掲載されている。
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春日山から飛火野辺り ゆらゆらと影ばかり
泥(なず)む夕暮れ 馬酔木(あせび)の森の馬酔木(まよいぎ)に
たずねたずねた 帰り道 遠い明日しか見えない僕と
元のぬかるみを気に病む君と 結ぶ手と手の虚ろさに・・・
まほろば/さだまさし
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