五十音絵本レビューも残すところ「や、ゆ、よ」と「ら」行、それに「わ」の9つとなりました
「や」は、思いのほか良さそうな作品が多かったので、2回になります。
やぎのめーどん たかくあけみ さく 福音館書店
「や」は、「やぎ・・・」が結構多かったんですよ。その中から1冊選びました。
ヤギは本当におとなしくて、人間にとって身近な存在ですね。
この作品のヤギの名前は「めーどん」ですが、時に「めーどんどん」とか「めーめーどん」と呼んだりするのが良いリズムになっています。
めーどんの優しい目が印象的。
ヤギのまつ毛マニアの人(そんな人いるのか?)にとっては、存分にめーどんのまつ毛を楽しめます(笑)
割と写実的に描かれているめーどんと違い、森の動物たちはうっすらとした、柔らかくデフォルメされた形でそれらの動物たちがみんな一緒になって優しい背景となっているのが美しい。
裏表紙の、ウ〇チをぽろぽろ出しているめーどんの絵も良い(笑)
各地のこども動物園やふれあい動物園でおなじみのように、ヤギのウ〇チってのはこうなのよね(笑)
それにしても牛乳ならぬヤギ乳ってどんな味がするんだろう? ヤギ乳で作ったチーズってリコッタチーズだっけ? 食べたことないな。。。
やくそく ニコラ・デイビス=文 ローラ・カーリン=絵 さくまゆみこ=訳 BL出版
表紙にタイトルが書いていない、珍しい絵本 こんなの初めてかも。
一瞬、左右どちら開きなんだろう?と思いましたが、出版社の名前が書いてあるのが裏表紙、しかも外国人作家のものだから左開きですよね。
都会でも緑が多い都会ならまだしも、ほこりっぽくて砂まじりの風しか吹かないような都会で、心がぎすぎすしない人間なんているのでしょうか。
でも、おばあさんから奪ったカバンの中に入っていたのがどんぐりだったことに対し、金目の物でも生活に役に立つものでもない、と憤慨するのではなく「生まれてはじめてゆたかな気持ちになった」というのが素晴らしい。
子どものころからこんな都会で暮らしてきたのに、どんぐりのおかげで突然何かが変わった、というのはこの少女の「魂」の中に緑や、緑がもたらす潤いとともに生きることこそが本当の自分である、という強い柱のようなものがあったとしか思えないのです。
どんぐりが大きな木、そして森になってもなお、次々と遠くの街でどんぐりを植え続けるこの少女はいったい何者だろう?
最後の展開は、終わりが始まりにつながる、というような、ミヒャエル・エンデの『鏡の中の鏡』の中の物語群を思い出させました。
やさしいたんぽぽ 安房直子・ぶん 南塚直子・え 小峰書店
安房直子さんと南塚直子さんは、『うさぎのくれたバレエシューズ』のコンビでもあります。
目にも暖かな黄色いタンポポが咲き乱れ、タイトル通りやさしさあふれる作品。
でも、現実には「ひかりのくにゆき」の電車に乗れる犬猫たちばかりではない訳で。。。ちょっと複雑な読了感です。
やまなし 宮沢賢治・作 田原田鶴子・絵 小学館
五十音絵本レビューを始める前に、2019年の2月に読んでいることを忘れてまた借りてきてしまいました(汗)
賢治さんの『やまなし』は他の方が絵を描いたものもたくさんあったというのに、またこの田原田鶴子さんのを借りてきてしまったというのは、やっぱり表紙だけみても自分は田原さんのこの画風が好きなのでしょうね(と、自分の記憶力のなさを棚に上げる)
谷川の底の、美しいとしか言いようのない世界。
クラムボンって何だろう?クラムボンが死んだ、殺された、というのもいきなり不気味な物言いだけれど、カワセミによる一瞬の恐怖のほうがもっと大きい。
かぷかぷ笑う、ぽかぽか流れる、もかもか集まる、など賢治さんお得意のオノマトペも堪能できます。
それにしても5月と12月、二枚の幻燈で、それぞれハイライトはカニたちの世界にいわば侵入してきたカワセミとやまなしですが、作品全体のハイライトはやはり後半にもってくるべきだとすると、最初に12月のやまなし、次に5月のカワセミ、という構成だったら作品のタイトルは果たして「カワセミ」になっただろうか?
いや、この作品のタイトルはやっぱり「やまなし」でなければいけない。だから12月のやまなしのほうが後半でなくてはならない。
恐怖や不安を象徴するカワセミではなく、良い匂いがして喜びや幸せの象徴であるやまなしこそが、この美しい作品をまとめているのですね。
最後のほうのページに用語解説や賢治さんの略年譜もあって絵本としての読みっぱなしでないのも良いです。
山はしっている リビー・ウォルデン 作 リチャード・ジョーンズ 絵 横山和江 訳 鈴木出版
表紙見返しと見返しの遊び、さらにその次のページで計3面にわたって描かれている、山に住む動物たち。
この動物はなんだろう?というものも多いけれど、ウサギ好きな私は、表紙見返しの最上段左から4つめのナキウサギはすぐにわかりましたよ(笑)
日本に住む貴重なウサギとして、アマミノクロウサギはよく知られていると思いますが、「氷河期の生き残り」と言われていて、見た目はウサギというよりもネズミのような、北海道の大雪山などに住んでいるナキウサギのことを、皆さん、知っていますか?
ところで、山(森)にすむ動物たちの名前を挙げていくと、例えばリス、キツネ、タヌキ、鹿、サル、クマ、ウサギ、それにいろんな鳥たちが思い浮かびますが、実際にはもっともっとたくさん、多様な生き物がいることがこの絵本でよくわかります。
もちろん、この作品に出てくる動物たちで、日本にはいないのもいますけどね。
どの動物も本当に可愛くて、愛おしいです。
この作品では山に住むいろんな生き物たちの、朝から夜までの様子を描いていますが、動物というのは夜行性のものも多いので、それに合わせて夜のシーンも多めです。
これがさらに一年の様子を描いたものであれば、それぞれの季節でのいろんな動物たちの生活がもっと生き生きしているのでしょうね。
裏表紙の見返しとその遊びの2面にわたって、動物たちの名前が紹介されているので、作品の中でそれぞれの動物がどこで登場しているか、確認しながらもう一度読みました。
今回は、おまけとしてノラネコぐんだんシリーズ最新作のレビューも。
ノラネコぐんだんのカレンダーとバッグの付録が欲しくて、雑誌 Kodomoe を買いに行ったら、あら、ノラネコぐんだんシリーズの最新作もあるじゃないですか
ってことで予定外の出費になっちゃったけどもちろん買ったのでした(笑)
ノラネコぐんだんケーキをたべる 工藤ノリコ 白泉社
マーミーちゃん大活躍ですね。
いろんな美味しそうなケーキも魅力的ですが、ストーリー展開が今回はちょっと凝っていて面白かった。
ワンワンちゃんのお店がバラバラになったシーンのワンワンちゃんの「あーあ わたしのみせが・・・」というセリフと、その後ろ姿が、見るたびに笑ってしまう。
何度もノラネコぐんだんにこんな目にあわされて、もうあきらめの境地のワンワンちゃんを感じます(笑)
でもしっかり、今回もノラネコたちを叱って反省させるのは忘れていない真面目なワンワンちゃん、大好き(笑)
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