聖水紀ーウオーター・ナイツー第12回
(1976年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
第7章
歌姫ベラは、聖水騎士団の基地の1つ聖水神殿にいる。聖水騎士団団員フガンが、ベラに話す。
「さて、レディベラ、君が『みしるし』かどうか、これから試されるわけです」
「さっきから、言ってるけれど、『みしるし』ってどう意味なの」
「聖水にとって意味のある記号『みしるし』が、地球にすでに存在するということなのです。
彼らがこの地球へ飛来した意味はそれ『みしるし』を探すことなのです。『みしるし』は
その星の過去の記憶です。ある種の人間のDNAに連綿と記録され残っているのです。
だから詳しいことは私からではなく、聖水人から聞いてください」
「聖水人って」
「聖水人とは、私達、聖水騎士団の前にあらわれる人格体なのです。ほら、彼らです」
フガン、ベラの前に聖水プールがひろがりあって、その中から聖水3人の人型がかたちずくられ、出現していた。
「ねえ、同じ顔、同じ体をしているけれど、個人の性格はあるの」
ベラはフガンにたずねていた。
「残念ながら、私にもわからないのです」
フガンは答える。
聖水人の一人が言った。
『フガン、君ですら、まだそんな認識かね。我々は聖水というひとつの意識だ。その分派なら、同じ顔、同じ体となるだろう。
さて、君がベラか、君が『みしるし』かどうか調べせてもらおう』
「いやよ」
彼らの意識がベラの体にはいってくる。
聖水が生物細胞にしみわたっていく感じがした。あらがいよ
うがない。
「何でも、しゃべるからやめてよ」ベラは気味悪がって思わず叫んでいた。
『我々が知りたいのは君の過去だ』
「私は歌姫アカデミーをでて、奴隷船の歌姫になったのよ。私のお母さんは昔の世界での大阪阪急梅田デパートの売り子よ」
ベラは必死でまた淡々としゃべっていた。
『歌姫は、皆、君のような能力をもっているのかね』
「歌姫なら、流体の生体状態を把握できるわ。彼らの体
細胞の声を聞けるわ」
『歌姫は君のように海水を操れるのかね』
「あれは、違う、私が聖水騎士団に耐光する「レインツリー」組織の人間だから」
『君は、海水の有機体の細胞をあやつることができるのかね。さあ、我々が知りたいのは、もっと過去だ』
「そんな昔のことしらないわ」
『君なら、思いだせる』
『彼女の細胞プロテクトはかなり、固いね』
ベラは意識を失っている。
ベラの体はプールに横たえられているた。
ベラの心の深い座位へと聖水は潜っていく。総ての人類の過去に聖水は探りをいれていた。
泥寧地に雨がふり続いている。集中豪雨だ。が、あたりにはまったく生物の姿が見えない。遠くの山並みは火山活動が盛んで常時噴火が起こっている。
これは、ベラの心象風景だった。
『どうやら、我々はたどり着いたようだね』
聖水人の一人がいった。
ベラの心は人類発生以前の地球に戻っていた。細胞のDNAレベルの記憶である。聖水は彼女の記憶巣の最深部にたどりついていた。地面には熔岩流がうごめいている。地球の始源紀である。
『ここまで記憶していた個体はいなかったな』
再び、聖水人が言った。 そこに、光る球体が上空から降りて来る。
『おお、あれが、我の先祖の姿なのか』彼らはそのイメージ映像を集中する。
聖水紀ーウオーター・ナイツー第12回
(1976年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/