(1978年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所 「マンガ家になる塾」 ●動画manga_training
絶壁をようやくはいあがったケインに何の感動もなかった。これ
からおこるであろう危険に体をこわばらせていた。
しかし、あたりの風景には少し心が動く。
他の人間にはやはり感動的
なものだろう。
そのジャングルだった。
子供の頃、学習場でビデオ映像を通して見たことのあるジャングルが
ここに存在していたむだ。
このラシュモア山は高い山の上で、低温のはずだ。
が、ここはまぎれもなくジャングルであり、ジャングル独特のム
ッとした熱気がケインの体を包んでいた。
密林のため遠くの方まで見渡すことなどできはしない。
ケインはどう進めばいいのか、考えあぐねていた。
「お前、どこへ行くつもりだ」
ケインの背後から声がした。
それは、生き物の声ではなく、造り物の声だった。
ケインはうしろを振り向く。
キメラ怪獣「アゴルフォス」だった。
この世の中で一番醜いと言われる「アゴルフォス」がしゃべっている。
豚の顔に大きな角をつけ、全体にぶょっとしたあざらし風の皮膚
をしている。
短躯で、おまけに三対の眼は、あちこちを見ている。
その六つの目玉が常に勤いていて、おちうきがない。
しっぽはもうしわけ程度に付いている。
山稜王の「シャナナ宮殿」で、護衛をしていたキメラ獣が「アゴルフォス」だった。
が外見とは違って頭は良い。がなぜフゴルフォスがこんな場所にいるのだ。
ケインは考えた。
「そういうお前は何者だ」
ケインは逆に問いかえした。
「我輩の事を知らんだと、プフォ」
アゴルフォスは気持ちの悪い笑い声をあげる。
(続く)
■宇宙から還りし王(山稜王改題)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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