消滅の光景 第10回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
■地球の記憶■
「地球の罪か」
地球帝国戦士のウォーカーは独り言ちた。
地球の罪のため、この地球帝国は滅び
ようとしでいるのだ。
そしてここが地球最後や要塞だった。
「ウォーカー! ウォーカー!」
遠くから声が響いていた。1人の男が足をよろめかしてウォ
カーの方へ近づいてぎた。
ボイドだった。
あとに3人の男が続いていた。
サグ、クリノ、グレだった。
無傷な者はー人もいない。
「生き残ったのはどうやら我々だけらしい」
爆発音がして、床がざらに傾いた。光が消えた。
「最期か」
ボイドが叫んだ。
「どうやら、そのよのようだな」
クリノがつぶやいた。
「地球の罪のため、地球帝国滅びるが」
ただよってきた煙が鼻につきだした。炎が部屋を犯し始めたのが
ウォーカーの目の隅にはいった。
彼らの敵は、宇宙船の姿さえ見せず、光線銃やミサイルも使わず、
地球を完膚なまで叩いたのだ。眼に見えぬ力が、彼ら星間帝国の都
市や戦闘艦を消滅させていた。戦い様がなかった。防禦あるのみだ
った。人々は自ら命を絶っていった。
ウォーカーやボイドらわずかな勇士たちがここヒマラヤ山脈に要
塞を構築し、立娠っていた。
最後の長後まで、目の見えぬ敵と戦おうとしていた。
人類の滅亡は目の前だった。最後の鉄槌が振り落さ
れようとしている。
ボイドが、レイ=ガンを取り出し、ゆっくり頭に当てようとした。
横からウォーカーが銃をひったくった。
「ヤめろ、ボイド、我々は最後の最後まで、地球人の誇りを失なっ
てはなちん」
「あそこを見ろ」
サグが指さした。
5人のいる部屋の中央に物体が形をとり始めた。
やがて彼らの目の前に1人の男が現われた。目を血ばしらせた5人
の男は叫んだ。
「何者だ」
「私はヤ辻フー。宇宙の創造者にして、秩序を宇宙にあまねくいき
わたらせる者の一人だ。つまりは私はお前たち地球人が敵と呼ぶ者だ」
「敵だと」
彼らは色めきたった。
「そうだ。しかし敵という概念は我々自身では理解できない。我々
は地球の罪により、地球を排除し、大宇宙の均衡を保とうとする者
の集合体なのだ。地球の勇士達よ。お前達に一つの役目を与えてやろう。
年月が流れ、この地球の罪が許されるまで……」
■ 数世紀ののち
「この星は何だ」
地球をめざしていた、セクター連邦のカド博士が青ざめた顔をして言った。
船のスクリーンには別に異常は現われてはいない。目の前に地球
が拡がっていく。
「博士、いったいこの地球がどうしたというのですか」
「空虚なのだ、チヒロ中尉、空虚なのだ。通例、私は、星々にある霊に
類するものを感じることができるのだ。私の心の中にその星でおこ
った過去の歴史や運命を感じることができるのだ。しかし、この星には
何もない」
カド博士は、同行するセクター連邦軍情報省チヒロ中尉に言い放った。
消滅の光景 第10回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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