■前書き
地球は絶滅の縁にあった。この新生・地球人類の前に立ちふさがったのがROWだった。
彼らは新人類に戦いを挑み、戦闘は果てしなく続くように思われた。
ROWは、一つの作戦を発動する。人類の救世主ME抹殺作戦だ。人類の発生より、人類の救世主MEが誕生するまでの、MEにつらなる人々をROWの攻撃よりガードするため、あらゆる時代へと自ら志願した戦士を派遣した。
この人類戦士達を「ガーディアン」と呼ぶ。
現時点では、敵「ROW」は、はるかかなたから、地球に向け、生命体ミサイルを発射していた。敵「ROW」の生体ミサイルを地球の生存圏から守るために、意思を持つ「生体機雷」が設置された。彼らは、[クアイアーボーイズ]と呼ばれた。その短い一生の物語。
ガーディアンルポ05「クアイアーボーイズ」
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
■「7人の友情」というふざけたネーミングの「生物機雷」設置船のブースターの炎が、地球に向かって降っていった。
これで、俺 M113-012の定位置も決まりだ。
「生物体機雷」設置船の中からアリスママが、俺たちに向かって手を降るのが、内視できた。
俺の今回の仲間は240名だ。効率の良い数らしい。
「7人の友情」の地球から上昇中も、「聖歌」は俺たちの聴覚に聞こえていた。
俺たちの仲間の「聖歌」は耳に残り、心を揺さぶる。
ようやくおち着いた俺は、視覚装置であたりを見渡す。
周りはすべて闇。
背後には地球光。
他の仲間との通信接触は禁じられている。
全くの孤独。
自分から言葉を発することもできない。
敵「ROW」に察知されるからだ。
敵「ROW」と遭遇するまで、眠るこことも休むこともない、
無限の沈黙が続く。
「生物体機雷」設置船「7人の友情」から投げ出された時から、この宇空間から外れることは許されない。
意識が継ぎれることなく、宇宙の監視が続く。敵RMが飛ばせる生体ミサイルを防ぐまて。
僕たちは[クアイアーボーイズ]と呼ばれた。
地球を守るために選ばれた意識。
僕達の死ぬ瞬間、泣き声ともつかぬ「音」を発する。
その音は地球のどこでも聞こえた。人類は、それで俺達の存在と死ぬ瞬間を知る。
その音は、ある種の聖歌を思わせるらしい。その聖歌隊、つまりクアイアーボーイズと
俺たち「生物体機雷」は呼ばれた。
敵「ROW」もはるかかなたから、生命体ミサイルを発射する。
それに対抗すべく地球連邦軍が考えだしたのが、クアイアーボーイズだ。
そのROWミサイルをいち早く発見し、処理するのが俺たち、クアイアーボーイズに与えられた任務だった。
生体ミサイルは思考能力をもつ。
役割?。
それは生命体ミサイルに対抗して、彼らを地球圏内に突入までに処理すること。
いわば相打ちだ。
俺たちクアイアーボーイズは、地球人類の科学が生み出したバイオノイド。
地球人の細胞から生み出された生物機械。
俺たちの意識の奥には、君たちが失敗すれば、アリスママをはじめ「親」が死ぬという刷り込みがされている。
親を叔うために自分が犠牲にならなくてはという動機づけだ。
『僕達がいるのは地球を守るためではない。地球人を守るためでもない。
そう、アリスーママ、俺たちはあなたを守るために、この宇宙という大いなる暗渠にいるのだ』
アリスーママ、つまり私の生命の源、顔を覚えている!
俺M113-012は、飛来してくる生体ミサイルをついに認知する。
自分の終わりの時がやっと来たのだ。
何の恐れもなかった。
あるいは、死ぬことは安らぎかも知れないと想った。
この孤独にくらべれば。
再び、周りを見る。
仲間のクアイアーボーイズの亡きがらが、1セット240人の仲間。
240人の仲間が周りに浮遊している。
失敗すれば、自動的に監視ステーションが不良品として俺たちの生命抹殺を行う。
俺は待ち構えている。
が、俺は一瞬、この敵「ROW」の生命体ミサイルに近しいものを覚えていた。
彼らも思考能力をもっている。
「ROW」の生命体ミサイルも、はるか遠い星から雅味を目掛けてくる。
ただ破壊のために。母星に帰れることなどなく、
地球を攻撃し、成功した_ところ分栄光があるわけではない。
ただ死が待っているだけだ。
彼らにとっても死は甘美な瞬間かもしれない。
接触。
なま暖かいものが感じられる。
何かの意識が、俺の意識に呼び掛けてくる。
「まさか、君もそうなのか」
俺より、先に、相手の意識が割り込んできた。
ああ、俺の同じ生命体がここにいたのだ。
ROWのミサイルも生体ミサイルだ。生きている思想をもつミサイルなのだ。
俺の意識が消え去るまで意識で語ろう。
お互いに短い問の生命だ。
俺は言う
「なあに、短い間だ、俺と君が、燃え尽きるまで俺の話を聞いてくれ」
敵「ROW」の生体ミサイルが答える。
「ああ、私も、この地球への長い航海の中で安らぎが欲しからた。語ってくれるか。この私のために地球の話を、、」
俺達は、相手を滅ばすために、抱き合いながら、地球の引力圈へと落ちで行く。
俺の語りは「高速度コミュニケーション」で、俺と彼の問で行われる。
そうか。
俺はきづく。
聖歌は、、、
このコミュニケーションの瞬間に発する
データ交換の音だったのだ。
そして、
ひとつの聖歌は、、やがて終わる。
(ガーディアンルポ05短編「クアイアーボーイズ」完)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/