インザダスト第8回(1986年)SF同人誌・星群発表作品
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
D25はゼルフィンに言った。
「そう、俺が穀物に細菌を添付したのだ」
「それで、お前はそれに対する治僚薬も考え出したのだろりな」
D25はゼルフィンの方へ体を向け、ほほから血をしたたらせなが
ら、例のにやり笑いを見せた。
「残念だが、ない」一言しゃべる度に口から血がしたたり落ちる。
「何だと」怒ったゼルフィンがD25の下腹をけり上げた。D25は床
に血ヘドを吐く。
「下の世界にしか存在しない病原体た。上の世界では手の施しよう
かあるまい」
「きさま、老人ではないな」ゼルフィンが絶叫した。顔か紅潮して
いる。
影の男か言った。
「きさまのおかげで、何人もの若人が死んでいるんだぞ。何も感じ
ないのか」
「思わないね。これは俺の、この社会ンステムヘの復讐だからな」
「復讐たと」
「この社会システムのおかげて多くの友人達か、下の世界に絶望して死
んでいったんだ。それに俺の恋人も、、、」
私シオンは、彼D25の部屋で見た写真を思い出していた。
「それは彼らの可能性が消滅したからさ」
「違うそ。ポテンンャルかある者もダスト=ンュートヘほおり込ま
れた。マザーに対する危険分子としてな」D25は泣いていた。
「こんな所で時間をくっているわけにはいかん。病原菌について、
彼のラボのコンピューターからデータを収集しょう。それから対策
をねろう」ゼルフィンが言った。
「このD25はどうします」影の男が言った。
「もうこの男D25に用はない。処分しろ」
「待て」私は思わず叫び、レイ=ガンを腰だめにして管制室へ飛び
込んでいた。
影の男がこちらへ顔を向けた。
「お前は」
その男は、私と同じ顔をしていた。
「私は君たよ」その男は静かに言った。
「………」
横からゼルフィンが口を出した。
「驚いたかね。シオン。この男もシオンなのだ。
シオン=ダッシュと言った方かいいか。
この下の世界へ降下する前、高級市民最高幹部会の依
頼を受ける前に君はかなり悩んだはずだ。
君はマザーに対して疑問を感じていたからね。
苦しみ夢をも見たはずだ。それが君の家の個
人コンピューター回路がリレーして、
マザーに伝えられたのだ。
君の思考を読みとったマザーは自己自衛機構を作動させた。マザーに
対しての君の思想の危険性をチュックし、それから推論した」
目の片隅でD25がゆっくり動いているのがわかった。
彼は床の下にある小さなレッド=ボタンを押した。
長弁舌をふるっているゼルフィンは気かつかない。
「それゆえ、マザーは君の部屋にあった皮膚の一片からクローン人
間を造りあげたのだ。彼がそれだ。このシオン=ダッシュは上と下
の世界の秩序を保全しようと努力している。彼シオン=ダッシュは私を助けるために
この世界へ私と共に降りて来ていたんだ」
「近よると、射つぞ」私は叫ぶ。
「ほう、射ってみたまえ。君にこの私か射てるのかね」
シオン=ダッシュが冷たく言った。もちろん、私に彼枝が射てるはずがない。
2入の対決に気をとられていたゼルフィンにD25が死力をつくし
て飛びかかった。
「Z88、逃げろ、このタワーから逃がれるんだ。自爆装置のスイ″
チをいれた。こいつらには病原体の事は探り出せないんだ」
D25は叫んだ。
ゼルフィンはD25ともみあっている内に銃を放った。
D25はうめいた。肉のこげる臭いがした。D25の右肩が完全に
炭化している。その時、私シオンの銃をシオン=ダッシュがたたき落とし
た。
D25はわずかに頭を持ち上げた。
「無念だ。Z88。過奈良津この下の世界を楽園にシてくれ。頼む、、、」
D25ha私にそう言い残して逝った。
「残念だな。シオン。それじゅあ俺達と一緒に上の世界に戻ってもらおうか。時間が
ないのだ」
エレベーターで降下しながら、私はゼルフィンに尋ねた。口にす
るのも恐るべき事だが。
「ゼルフィン、お前、下の世界から老人を一掃するつもりではない
たろうな」
ゼルフィンは鼻で笑った。
「ふふ。よく感ずいたな。その通りさ。そう最高幹部会とマザーに
提案する。これより先、下の世界では老人を使わない」
「それじゃ、老人はダスト=ノュートからどこへ投げ出されるのだ」
「回収不能の宇宙空間へだ」
「くそっ、老人を皆殺しにする気か」
「我々、上の世界が生き残っていくには、切々捨てる事も必要だ」
「それじゃ、食糧の確保はどうするつもりだ」
「原住民の頭脳をもっと進化させる。それにロボットを補助させれ
ば、事は足りるはすだ。さあ、もうわかっただろう。もう君が手を
出す段階ではないのだ」
タワーの下に軍用ホーバーぞフフトかやってきていた。原住民の
姿は消えていた。
「この世界の見収めになるだろう。よく見てかけ」
後から二台の武装ホーバーぞフフトか続く。内には戦闘ロボット
を満載している。
大きな爆発音と閃光が襲ってきた。
インザダスト第8回(1986年)SF同人誌・星群発表作品
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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