石の民「君は星星の船」第19回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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石の壁の司祭アルクと、Bグループの光二の二人は、アルクの娘、ミニヨンを助けるために石の壁のジュリへと、異なる時間と空間を撥ねていた。光二は、なくなった姉のアリサだと思っている。
フッコウドームのV団のアジトだった。たくさんのキッズがいる。
今、ヘッドの登はいないようだった。
代わりに、大吾がいた。大吾は2Mの大男。ワンダリングキッズの一人だった。
他のドームのヘッドの紹介状をもって登の所へ来た。登の団にワラジをぬいでいるというわけだ。ある。所属するグループを持たない放浪の戦争孤児だ。
大きなスプーンで、メシを食っている。なぜか食事中も背中に大きな荷物が。
このフッコウドームのキッズは、近くにある鉱山で掘り出される貴金属を食いぶちとし
ていた。
この鉱山は平和チームの監督監視下にあるのだが、何人かの作業ロボットが金儲
けのため、ひそかに登たちキッズのところへ貴金属をもってきていた。
登のVグループと光二のBグループは、このロボットの作業員の裏支配をめぐっても
争っているのだ。
「おい、お前、いい根性しているじゃないか」
Vグループのキースが言う。キースは金髪で細面の顔は残酷なイメージを、会う人にあたえる。
「ど、どいいうことですか」ロボット作業員Z113が、答えていた。
「内緒で、ブツを光二のBグループへ流しているときいたぜ」
「そ、そんなこと絶対にありません。ロボットは嘘つかない」
「じゃ、お前はロボットじゃないな。ロボットじゃなきゃ用がない。おい、大吾、おしお
きだぜ。ほかのロボットらもよくみておくんだな」
キースが大吾に命令する。キースはこのグループのNo2だ。
「や、やめてください。私は悪くない」Z113は目を白黒ではなく、レッド色にしていた。
大吾はZ113のボディをしめあげた。Z113のハイチタンの体がミシときしむ。
「わ、わかりました。もう、しません。キースさんやめさせてください。光二が悪いのです」
「おい、大吾、もういいぜ」
が、キースの言葉にかかわらず、大吾の動きはとまらない。
「おい。大吾、やめな」
キースが青くなる。
「大吾、やめろ」他のキッズも騒ぎ出す。
「やめろ、大吾」
瞬間、アジトは機械の破片が吹き荒れていた。ロボットZ113の体が爆発したのだ。
「おい、何て奴だ」
「うわっ、か、怪物だ」仲間のロボットたちは、さんをみだして、アジトから逃げ出した。
「や、やりすぎだぜ、大吾」
キースは大吾をなじる。これだから、ワンダリングキッズ、放浪の子たち、は困る。組織って奴がわかっていない。
「すまん」が、大吾の顔はあやまっているようには見えない。むしろ自分の力を楽しんで
いるようにみえた。とにかく、わかりにくい表情なのだ。
「おい、大吾、お前、その棺桶どこから見付け出してきたんだ」キースはこの気まずい雰
囲気を変えようとする。そう、大吾は背中に石棺をずっと背負ったままなのだ。
「ああ、このドームへの途中の道でな」大吾はぶっきらぼうに答える。
「じゃまにならないのか」他のキッズが尋ねる。
「ああじゃまにならん」大吾が答える。
「ほっとけよ、大吾の棺には大切なものがはいっているんだから」
興味をもったひとりが大吾に言う「中をみせなよ」
「何か、金めのものがはいっているわけか」
「いいだろう、みせろよ」棺かつぎの大吾は歯
を剥き出して、そいつに怒った。
「わ、わかったよ、お前の棺にはちかずかないよ」
「おいおい、やめておけよ。大吾の力は今見た所だろう」キースが止めた。
が、その日の晩、棺かつぎの大吾のふたを、内緒であけた奴がいる。しかし、首の骨がお
られていた。その目は棺桶の中を見て見開かれていたのだ。
大吾はこの棺を見付けた以上、早く、元の世界へ帰らねばならなかった。待っている人が
いるのだ。
大吾はこの石棺を探して、ジュリの里「石の壁」祭司アルクと同じ様に、星を、世界を渡り歩いていた。
石の民第19回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
F小説■石の民■(1989年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所