源義経黄金伝説■第67回★
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所
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■ 1199年(建久10年)鎌倉
頼朝近辺を護衛する武士の一人が、鎌倉政庁にいる大江広元に告げた。
「頼朝様が、傷つき,かつぎこまれました」
「何、よし、落馬されてけがをおわれたとせよ。この事、他の者に他言無用と
しろ」
「怪しげなる童…だと」
大江広元は、体をこわばらせた。
「大殿様の馬の側にうろついておりましたところ、捕まえてございます」
「よし、そやつの顔を見てみよう。私の前に引きだせい」
やがて、広元の前に、見目麗しい少年が引き出されていた。その少年の顔を
一目見た一瞬、汗が吹き出てきた。
広元は、その少年が誰であるかを、しっていた。
一三年前、1186年、鎌倉稲村が崎で、自分がすり替えて助けた童子。静
と義経の子供。
この少年が取り調べた際、自分の身元をしゃべり出すようなことがあれば、
類は自分にも及ぼう。この少年の処理、素早くせねばなるまい。広元の額には
うっすら汗が浮かんでくる。
「この罪人、牢獄へ引き立てい」
広元は、その後、磯禅師を別室に密かに呼んでいる。
「お前の孫が、生きておったな」
雑色たちを所払いにし、開口一番に広元は言った。
「私の孫ですと。何をおっしゃいます」
禅師は慌て、そして顔色を変えている。
まさか頼朝の暗殺者が、あの静の子供だとは。禅師には思いもよらぬ展開だ
った。
京都からもそのようなことは聞いていなかった。
「まさか、何かの間違いでございましょう」
広元は、この暗殺者が義経と静の子供であるとわかると、自らの立場が悪く
なることに無論気がついていた。お互いの眼が合う。おおよそ、広元と禅尼の
利益は合致した。これは一つ、あの童を密かに殺してしまうか。
そう考えている時、巨大な動物が、奥座敷の戸板を打ち破り、二人の前に
現れていた。
「うわっつ」
一瞬二人は何が起こったかわからない。
「大殿様を殺めようとしたのは、お主らか!。え、大江広元、禅師、お主らが企みよったか」
憤怒の様相の文覚であった。
もはや、全身が、怒りの塊と化している。
「よいか、広元。覚えておけ。お主ら、貧乏貴族が支配する日本のために、頼
朝殿に俺が命を掛けた訳ではないわ。この日の本を、すばらしい仏教王国にす
るため、民が住みやすい国にするために、この文覚は頼朝殿に掛けたのだ」
憤怒の不動明王像のように見える文覚。
その文覚に対して、広元は真っ青に り、一言もしゃべりはしない。禅師も部屋の隅に蹲っている。
「広元、決して、源義行殿を殺してはならぬぞ」
意外なことを文覚は言った。
「源義行殿を囮に、鬼一法眼を、大倉山山頂に呼び寄せ、最後の勝負を挑む。
ただし手出し無用。儂と鬼一で勝負を決める」
(続く (C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所
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