新人類戦記第二章 脱出 第5回
作 (1980年作品)飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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(アメリカとソビエトの冷戦時代の話です)
ブラックウッド博士の副官のマッコール中尉が、軍事空港を出発しょうとする本部で話す。
「超能力戦士諸君、聞いてくれ。我々はこれからベトナム、サイゴ
ン本部から移動する。秘密の作戦だ。全員で行動してほしい」
「どんな作戦ですか」
「目的地は」
超能力戦士のあちこちから質問がとぶ。
彼らは同時にマッコール中尉の心をのぞいていた。
答えはない。彼、マッコール中尉も答えを知らないのだ。
「それは輸送機の中で話す」
全員揃い、タン・ソン・ニエット空軍基地へ向かう。
C5Aギャラクシー輸送機が滑走路で待ち構えていた。
世界最大のジェット輸送機だ。胴体は内部
で二階立てとなり、上方には七十五人分の座
席が設けられてにいる。
最大速度九一九KM/H。総重量三四七トン。空の巨大なタンカーだ。
離陸し、少し後でマッコール中尉中尉は操縦席の方へ呼ぱれてにいく。
「おい、何か、変だぞ」
「そういえば、この機内には、対精神波バリヤーがはりめぐらされている」
「テレパスできないわ」
「おまけにこの機には窓が一つもない」
マッコール中尉は離陸と同時にパイロットから一枚の秘密指
令書を受けとった。パイロットにしゃべらないようにして、すぐ文書を実行する。
「パイロットとコパイロットをつれてパラシュート降下せよ」
操縦席脱出ハッチを開け、マッコール中尉以下三名は南シナ海に出ていたC5A
輸送機から。でパラシュート降下した。
輸送機は自動操縦装置により飛行を続けている。
海面に落下した彼らは、着水と同時にゴムボートに乗りこむ。
上空には、カマンH2シースプライト・ヘリコプターが
三名を救助のために飛来してきた。
ヘリコプターに救いあげられるや、マッコールは
本部のブラックウッドに連絡をとった。
「命令通り、ジェット輸送機から脱出したのですが、どういうことですか、博士」
「輸送機を見ていたまえ、わかるよ」
マッコールは双発のカマン・ヘリコプターから輸送機を見た。
何事もなく飛び続けていたギャラクシー輸送機は轟音と共に大爆発をおこす。
「博士、大変です。ギャラクシー輸送機が爆発をおこしました」
「わかった。予定通りだよ。君は本部へ帰投したまえ」
「彼らは、どうなります」
「いいかね。マッコール中尉。ワシントンからの命令なんだ」
無線室にすわって、マッコール中尉と話してにいたブラックウッド博士は、送信のスイッチ
を切り、後ににいたアーチャー少尉にOKサインを出した。しかし顔色はすぐれない。
「博士、報告はにいかがにいたしましょう」
「そう、そうだな。超能力戦士全部隊は輸送機に塔乗中、ベトコンが仕掛けたと思われる
爆弾により戦死。生存者はない模様とかきたまえ」
アメリカ、ポトマック河畔にある国防省に報告され、記録ファイルに入れられた。
■爆発直前のギャラクシー機内ではパニックがおこっていた。
「しまった、これは罠だぞ」
「テレパシーがきかなにいわ」
「よし、全員の力を使い、あのコックピット
へのドアを破壊するんだ」
彼ら超能力戦士には力の強弱はあったとしても念動力は持って
いる。全員の力を合わせる。ドアは吹きこんだ。
「操縦士がにいない」
「マッコール中尉もにいなにい」
「自動操縦になっているぞ」
「なぜだ」
予知能力の秀れている「ミン」がにいった。
「いけない。ブラックウッドは我々全員を始
末しようとしてにいる」
「テレポートしよう」
「だめよ。機内に対精神波バリヤーが作勁し
ているわ。私達の力をそいでにいるわ」
「あきらめるな。ジウ、我々はエリートだぞ。
この超能力を得るために恐ろしにい訓練にもたえてきたのだぞ」
全員が輪になってつながった。
彼らの恩念はしかし、結実しなかった。強力左対精神カバリヤーヤーが、彼らの恩念をみだ
してにいるのだ。
「くそっ」
輪になって目をつぶり念じてた。
■その時、超能力戦士達の頭上に徐々にカスミ状のもの
が形づぐられてにいる。
しかしテレポート(瞬時移動)しようと必死になってにいる彼らはまるで気がつか
ない。
やがてそいつは人の形をとりはじめた。
そいつは強力な精神力を持って」いた。彼ら、超能力戦士の精神力か急に倍化され
た。
その瞬間、機内に隠されていた、アーチャー少尉によってセットされていた爆弾が爆発した。
一瞬ジウは気を失しなう。
「同胞よ」
と呼ぶ声を聞いたような気がした
■ジウが目をさまうと、ニッパヤシの林で、下ぱえの草の上に横たわってにいた。記憶がは
っきりしない。どうやら爆発寸前、テレパシーポートできたようだ。
あたりを見渡す。ほかに仲間は誰もにいない。
他の超能力戦士、戦友はどうしたのだろう。まだ少女のジウにはわからない。
ジウはとぼとぼと方向を定めず歩き出す。なぜかなじみのある風景だった。
どこかで見た事がある。
道がある。林が開けてきた。どうやら小さな村落にたどりついたようだ。
何という村だろう。通りすぎる人がジウを振えって見てにいる。
村の中の広場に歩いてきた。五、六人の老人が何か話し込んでいた。
一人の老人がジウに気がつき、指をさしている。
他の老人が急ぎジウの方へかけてきた。
「ジウ、生きてにいたのか」面影があるぞ。お前 村長のところの孫ジウだろう」
「ああ、ここは、。私の村クチニンだったんだわ」
彼女の意識が安心感ゆえに遠のにいてにいった。体が倒れた。
村長は、急に自分の孫が、七年前に行方不明に痙った孫が急に出現してきたのに驚いている。
彼女ジウは数ヵ年の記憶かまったくなかった。
自分をさらった男、東郷竜が自分の眼の前に現われた時、あの時も、ジウは気がつかなかった。
■ジウは過去を振り返っている。
■クメールルージュ (カンボジア軍)が村へ攻めてきて、村民を殺そうとした時に、彼女
は自分の能力を発揮して、お互いを殺戮する殺人精神波で全員を殺傷してしまったのだ。
その直後、彼女は竜に連れられ、メコン川をサンパンで下っていた。
彼女は夢中で彼女の指令が何であったかをおぼろげに理解していた。姿のなにい者はにい
った。「人類を滅ぼせ」と。
アメリカが打ち上げた人工衛星に載せられた荷電粒子砲が竜とジウが乗っているサンパン
を熱射した一瞬、竜とジウはこの事を寸前に予知し、テレポートしてにいた。
船から少し離れた河の中へ二人は瞬間移励を行なっていた。
竜は今の今までテレポートなどやったことはなかった。
しかしジウと会ってから彼の体
には少しずつ超能力が増加している。
二人の乗ってにいたサンパン(はしけ)は一瞬、目前で太陽のように光り輝いた。
竜とジウは思わず目をつぶる、顔に熱気が襲ってぐる。河の水も沸騰する。
再び彼らはテレパシーポートを行なってにいた。しかし彼らはあまり遠くの場所までテレポートする能力は持ってにいない。
二人共、火傷を負って近くの村人に助けられていた。東郷竜はあくまでベトナム人で通した
何年もベトナムで秘密工作してにいた彼はべトナム語も自在に話せるのだ。
その村で驚く程早く回復したジウと竜はホーチミン市(旧サイゴン市)へ向かった。
再び彼らはベトナムを脱出する船を見つけなければならなかった。
ホーチミン市で、ベトナム脱出のためのシンジケートがあることを知った。彼らは「組織屋(ジーオーガ十イザー)」と呼ぱれてい
しかし一人二千ドル相当の金を用意しなげればならなかった。
竜が一緒に来た日本人記者団は、クチニンのクメールージュ(カンボジア軍)
の攻撃で全員死んでいる。
以前、彼がアメリカのエージェントとして行動していたことを知っているベトナム人間に合
わなにいように気をつけなければならなかった。
偶然に、竜はチョロンで、一人の中国人を見つけた。
竜が以前にベトナムコン「南ベトナ解放民族戦線」から助けたことのある男だった。家までつけてゆき、おどし一万ドル相当の金をまきあげた。
アメリカ政府が竜とジウを抹殺しようとしている限り、危険だったがどうしても金が必
要だった。
季節風に乗じて難民たちは老朽化した漁船で脱出を試みるのだが、統計的にみて、かろ
うじて四隻のうち一隻かがマレーシア・ナタリにたどりつける。残り三隻は、拿捕される
か、沈没するか、あるにいはもっと悲・惨な運命が待っているのだ。
最も悲惨な例が去年の春にあった。 三十六日間も水、食橿が痙く海上を漂って
いた難民船が救助芯れた。救出者達はそこで戦慄すべき事を発見した。餓死寸前のベトナム人
達は、先に死んだ仲間の死体を食ぺてにいたのである。
■ジウの思いは今に戻る。
■ジウと竜はピース号に助けられ、マレーシア国内の収容所に入れられている。
難民の困難はさらに収容所からも始まる。
新人類戦記第二章 脱出 第5回
作 (1980年作品)飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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