新人類戦記 第三章 聖域 第13回
作 (1980年作品)飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
(アメリカとソビエトの冷戦時代の話です)
■英領南西アフリカ・ポートモレスビー
英領南西アフリカ、ポートモレスビーにお
けるCIA本部はピザゴス共和国へはいる船の監視、監督をも任
務の一つとしていた。
アランはポートモレスビーのCIAのエー
ジエージェトの一人であったが、昨日から行方不
明となり、他のエージエージェトは彼の行方をさ
がしていた。
ダブル=ジエージェトのリフから呼びださ
れていた事がつきとめられた。リフは目をつ
けられていた。リフの居場所が突きとめられ、
二人のCIAエージェント、クリフォードとシモンズ
が、リフのベンツが港の方へ向かうのを発
見していた。
「クリフォード。見ろ、あれはリフだぞ。アランをつれている」
「どうやらそのようだな」 とシモンズ。
「どうする。すぐ助け出すか」
「待て、待て、彼らの行き先を確かめよう。
行き先によってはCIA本部から増援部隊を呼ばな
ければならんかもしれんぞ」
二人の乗った車リンカーンの前を、ジフの乗ったペ
ソツが止まり、四人がソ連の商船ノブゴロドフ号に乗り込むのを見届けた。
「ソビエト船ノブゴロドフ号だ。いかん、応援を呼ぼう」
クリフォードは言った。
「どうするつもりだ」
「あの船を攻撃しなければならんな。あの船
の事は君も聞いているだろう。ソ連のビザゴ
ス解放戦線向けの超能力戦隊が乗り込んで
いるという情報があった」
「事故にみせかけて、あの船を沈めよう」
「そうだな。いささか強行手段だが。あとの
事を考えれば、それが最善だろう」
「アランをどうする」
「しかたがない。犠牲になってもらおう」
■英領南西アフリカ・ポートモレスビー湾内
ソビエト船ノブゴロドフ号
「シュチェフキン大尉、どうやら相手のCIAの方からやってきてくれたようだ」
ノプゴロドフ号でダレルがつぶやいた。
「CIAの連中か」
「そうだ。CIAのポートモレスビー支部の全員がノプゴロドフ号を炎上させようと集ま
ってきているよ」
「ありがたいことではないですか。我々の力を発揮できるとはね」
ベトナム人ルンが言った。
重装火器や爆薬を満載したバンや車がクリフォードとシモンズの車のとなりに次々と到
着した。
「よし、上空のシコルスキー=ヘリからエアゾール爆弾を落下するように連絡しろ」
クリフォードは言った。
エアゾール爆弾は一名、気体爆弾ともいう液体のエチレン=オキサイドがつまった箱が
落下され、壊れる。中のそれは気化し、蒸気の雲をつくりあげる。たちこめたそれを点火
すれば、TNT火薬の何倍もの威力を持つ破壊力が発揮される。やけどと酸素不足でその
近辺にいる者も死亡する。
シコルスキーヘリは、夜空にまぎれて、箱を落下した。気体はゆっくりと充分にノブ
ゴロドフ号を被った。
「発射!」
クリフォードが命令した。車の陰から、数十名のCIAエージエン卜が、擲弾筒を次々
に発射した。
全員が車体の下へ身をふせた。当然、強力な爆発音と爆風が襲ってくるはずだった。
が、何も起らない。点火されないのだ。
「なぜだ。なぜなんだ」
「もう一度やってみよう」
ノプゴロドフ号は奇妙に静かであった。物音一つしなかった。
再び、彼らは発射した。が結果は同じだっ宍いにわっ、ジモンズ、見ろ」
それは信じられない光景だった。
ノブゴロドフ号を被っていたはずのエチレン・オキサイドの気体群がまるで生き物のよ
うに、彼らの方へ恐るべきスピードで近づいてきた。彼らは逃げだそうと車に乗った。プ
ラグの火が引火した。
そして、大音響と、強力な光の開放がその埠頭全体を襲った
しかし、その爆発の中で、ノブゴロドフ号はただ一隻、完全と静止状態の中にあった。
まるでそこだけが異空間のようにも見えた。
新人類戦記 第三章 聖域 第13回
作 (1980年作品)飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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