石の民「君は星星の船」第1回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com
■石の民(1989年作品)■第1回
第1章 詩人
神殿はこの世界の中心地であった。
この世界は光あふるる世界であった。この世界は機
械が支配し、生物は機械に従っていた。いつからこうなのか、誰もしらない。
機械神が機械の支配者であり、この世界の神であり、創造者であった。彼は自ら作り上げ
た予測機械で、この世を支配していた。
機械神殿の予測機械はおそるべき予測を記録していた。機械神官の一人がそれを見る。
「いったい、これは」晴天の霹靂だった。
このデータは早急に機械神に伝えられた。
「このデータはまちがいないのだな」
「はい」
「対策を講じなければならん。この事いっさい他言無用だ」神は絶対者であった。
神は神官に命じた。言葉巧なる者を選べ。その男を安全弁としょう。
論理機構は一人の男のデータをはじきだしていた。
「神様よ、この男が選ばれたのですが、この男は危険なのです」
「どの様に危険なのだ」
「反政府分子なのです」
「が論理機構が、この世界で言葉巧みなるいものとして選んだ男なのだな」
「この世界で一番巧みなのでしょう」
神は少し考慮していた。
■北の詩人は追いかけられていた。
北の詩人は思う。
機械神の支配に対する抵抗運動についての話しあいが終わったところ
だった。
あの仲間の中に裏切り者がいたのか。だれが、私のことを管理機構に告発したの
か。
詩人を始めとする悲機械人、つまり、生物は機械人の元で苛酷な支配を受けているの
だった。
詩人は長い汚れたコートに深くくるまり、帽子をかぶり、コートの奥からしょぼついた
目をのぞかしていた。
仲間のアボオイのところに逃げ込もう、あそこなら。道をいそぐ。
が、この道路はいきどまりだった。
追跡機は直径2Mくらいのシルバーメタリックの球体で飛来してくる。
この追跡機Z2タイプは、その追跡物の体臭を手掛かりにおってくる生物体タイプだった。
Z2はその追跡物の匂いをつかまえていた。その獲物は恐怖に囚われているらしい。
アドレナリンがにおう。
生体の追跡物は必ずにおいを残す。
Z2にはその恐怖の度合いが計算できていた。
Z2の機械の内部に歓喜の感情がおこっていた。
追跡機は、まぎれもなく北の詩人をめざしていた。
Z2は北の詩人の前に回り込み、中央部の胴体部分からデジタルアイを突出させた。デジタルアイはその追跡物を恐怖に陥ら
せる。
「北の詩人だな」そいつは冷たい機械音でいった。
「人違いじゃないですか」
詩人は無駄な抵抗をしていた。せめての抵抗であった。機械人め。が追跡機Z2の方が一枚上手だった。
「君が北の詩人本人であることはわかっている。管理機構に君の画像を電送し、チェック
した。我々の主人のところに来てもらおう」
「一体私をどこへ」
「決まっているだろう。機械神のところだ」
続く
石の民「君は星星の船」第1回
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