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宇宙から還りし王(山稜王改題)第25回 ■

2014年03月06日 |  宇宙から還りし王(山稜王改題)
宇宙から還りし王(山稜王改題)第25回 ■
(1978年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/


「ケインよ、お前は想像できるか、地球人類の叡知をはるかに越え
た存在を」
「それをお前は、タイホイザーゲイトで見たわけか。なぜ地球へ還
ってきた」

「還ってきた。そうではない。私は使徒として地球へ派遣されたの
だ。この地球をハーモナイザーに同化させるためにな」

 「お前は、そのハーモナイザーに支配されているわけか」
 「そうではない、ケイン、ハーモナイザーは支配するという認識な
ど持ってはいない。ケイン、お前も我々の仲間になれ」

 「お前の仲間だと」
 「そうだ、我々は一種の精神共同体だ。お前が、今見た、頭は何で
もない。ある種の精神残留装置だ。彼らは死んでいるわけではない。
 つまり、私もネイサンという一個のパーソナリティではない。タ
ンホイザーゲイトで出合ったハーモナイザーは我々を精神共同体と
してまとめたのだ」

 「一介の出版エージェントにすぎない私には理解を越える事だ」
 「ケイン、いやコードネーム、ケイン。君は今、一個の個体であり、
同時に『地球意志』という巨大存在の一分子だろう」

 「君は私について感違いしている」
 「感違いだと、白々しい事を言うな。それなら君の目的を言ってや
ろう。ここへ来た目的の一つはこの世界樹の抹殺だ。この世界樹に
より、私が新しい作品を生み出し、それが地球人類の意識変革を行う
なっている事が君、「地球意志」にわかったからだ。

 そして、私ネイサンが君の事を覚えていて私の作品の中で、あの
アンバサダー号事件を発表しないかどうかを極端におそれているは
ずだ」

 「アンバサダー号の秘密だと、私はそんな船には乗っていない」
 「ケイン、君という個体ではない。別の名の個体で『地球意志』は
乗り込んでいた。君『地球意志』のもくろみは何だか言ってやろう
か」
 「何だというのだ」

 「君『地球意志』はタンホイザーゲイトで知的生命体と遭遇する事
を予想していたはずだ。そこでいくつかの行動オプションがあった。
 
まず一つは、肢らを捕獲し研究すること。肢らが地球人類より下
等ならば、彼らの世界を占領すること。

 彼らの能力が地球人以上の場合は、アンバサダー号を破壊し、地
球人類の存在を彼らに知らしめないこと。

 が彼らは思ったより早く行勤し、乗組員全体を掌握してしまった。
君の体は危険を感じ、宇宙船アンバサダー号の金属部位のどこかに
逃げ込んだはずだ。そうだろう『地球意志』、君は確かあの時……
まあいい。
 とにかく私の体には世界樹の種子が生み込まれていた。
 宇宙船内のすべての機械が私の成長の養分として同化された。到
着時の私はまゆだったのだ」
 「消えてしまったアンバサダー号の乗組員も養分にして成長したの
だな」

 「それは君が一番よく知っているはずだ。しかし、彼は私という代表者と
一身同体となったのだよ。彼らの精神は私の体に同化されたのだ」

 シグナルが船体に鳴り響いていた。到着地についたのだ。冬眠チ
ューブが賦活し始める。

 アンバサダー号はその生命をふきこまれつつあった。
 大航海時代のナビゲーターですら感じた事のない感動が、眠りか
らさめた乗組員の心を揺り動かしていた。
 「我々はやりとげたのだと」
 タンホイザーゲイト。かつていかなる地球人も到達しなかった場
所。新宇宙の始まりといわれる場所。あるいはブラックホール。

 「マーガレット、ついに我々はやってきたんだ」ネイサンが宇宙文
明学者のマーガレットに言った。

ケインは、これは幻想だとわかっていても、同じような感動を追
体験していた。

 アンバサダー号はタンホイザーゲイトの側に停止していた。

これ以上本艇を近づけると危険と考えたワイラー船長は、タンホイザー
ゲイトの第一回調査をボールとナノウに命令していた。

 タンホイザーゲイト。巨大な恒星でありながら、その星の中心に
あらゆる宇宙の光を収斂するブラ。クホールが存在していた。そし
てその中に新宇宙への人口が存在する。星間望遠鏡のデータ解析の
結論だった。

(続く)20140320

■宇宙から還りし王(山稜王改題)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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