消滅の光景 第11回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
セクター連邦軍、情報部の調査船エクスは、ギャラガ辺境の星、
地球に向かいつつあった。ミレアム信仰の教徒たちが集まっているという。
「この星には何もないのだ」霊科学者、カド博士がつぶやく。
「何もないですって」続いてチヒロはつぶやく。
「まったく、過去に生命体が存在した気配がないのだ。まるで何か
巨大で、より大きな意志をもったものがそれを吹き去ったかのよう
だ」コックピットには地球の画像が表示されている。
「それは『塔』が関係しているのでしょうか」
「わからん。しかし、ここには我々の想像を絶する力があるようだ」
■ ビット大佐は、連邦の情報省のチヒロ中尉が地球へ向かっている’
事を聞き、喜んでいた。これでここの実情もわかってもらえるだろ
う。肩の荷が降りたというものだ。一体、何基の四ケットが到着す
るのだろうか。ピット大佐は、連邦軍情報部を待ち構えるために
第一種正装を施し始めた。
空港に出迎えたビット大佐遠の前に小さな球型の船が到着した。
整列しているビ″ト大佐遠の前で、ハッチが開き、傾斜路に現わ
れたのは。
1人目は、ひょろ長い、金髪の若僧。自ら情報省のチヒロ中尉と
名のる。
ニ人目は、盲目のかなりの老人。つまりはカド博士
三人目が、何と、15歳の少女。つまりは超能力者のラミー・グリーン。
最後には、頭脳を手にしたアンドロイドが、出てくる。カド博士の助手タクだ。
みんな傷を負い、服はボロボロだった。
ビット大佐は落胆した。これがセクター正規軍が派遣した情報省の調査
隊だと。
.
「失礼ですが、チヒロ中尉、IDカードを示していただけますか」
ヂヒロは笛辱に耐えかねたようにIDカードをビット大佐に投げ
渡した。
そしてビット大佐に話す。
「確かに我々は調査隊には見えないだろう。服はボロポロだし、盲
目の老人と子供と、壊れたロボットト。それに青二才だ。
しかし我々は最高のチームなのだ。途中、「霊」の攻撃を受け船の電子頭脳がやら
れ、こんな有様になったのだ」
中尉風情に、何かわかる。ビット大佐はつくづくセクター星の無
理解を嘆いた。なぜー軍団を早急に送ってくれないのだ。憂慮すべき事態だというのに。
チヒロはIDカードを返してもらう。情報省の中尉と、一辺境星
のセクター連邦派遣軍の大佐とでは身分が連うのだった。
四人が出迎えのエア・カーに乗り込んだ時、事件がおこった。
調査船エクスの底部接燐脚が、一瞬のうちに消え去った。大きな
音をたてて、船エクスはかたむき、空港の真ん中でにころがった。球体なので勢いよ
く空港の外周へころがり出る。
空港の敷地外はミリアム信仰の信者でごったがえしていた。そこへ調査船エクス
が勢いよく飛び出してきた。しかし、人々は逃げようとはしなかった。
祈ひを唱えながら、船体に彼らを押しつぶされ、死んでゆく。ロケットト
の下敷だ。さらに調査船エクスは内部爆発をおこし、船体は粉々に吹き飛ん
だ。
連邦軍エアーカーもその爆風で吹き飛ばされかけたが、かろうじて姿
勢を持ち直した。
’「カド博士、これは一体」チヒロ中尉がカド博士にたづねる。
「チヒロ、不思議だ。私の頭の中に、古い文明が崩れ去るイメージ
がわいた」
消滅の光景 第11回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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