デュエット(二重走)第6回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yama-kikaku.com/
●1978年作品ー東西冷戦ーソビエト連邦とアメリカ
合衆国が冷たい戦いを行っていたころの話です。
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潜水艦「聖なる剣の先」号は北極海の中を静かに進んで行く。
基地へたどりつくのに1時間かかった。
プロジェクト基地のそぱには、潜水艦浮上用のベースが開けられていた。
意識を取り戻した王子と共に、いとこで超能力者、白神四郎は基地を訪れた。作業現場を艦
長はさし示した。前には強大なものが繰り広げられている。
「これは」
四郎は驚愕の言葉をあげた。
まさに、空母大の部分が氷山の氷界から切り離されていた。
つまり、作業基地は船の艦橋にあたる部分である。
「基地の下から後部に向かって、エンジン部分と、4軸のプロペラ
=ジーフトが貫いている。先導は、潜水艦二隻と、この基地に収容
してある、垂直上昇陛(STOL)とヘリであたる」
ハリマッド王子が言った。
彼の指さした方には、三機のイギリス製垂直上昇機のポーカーシドレーハリヤーが駐機
されていた。ドイツ製のBOWヘリもあった。
「前にも、いった通り、今回のプロジェクトが成功する事か第一義だ。
大きさはどうにでもなるからね。だから、今回は割と小さな面積し
か氷山は持って帰らないのだ。それでも普通の空母よりIまわり大
きい」
基地に入る時、四郎に王子は変装を命じた。
「すまん、他人を欺くためには、味方の者から欺かなけれぱならん
からね」
「サングラスとひげで大分、印象か変わるだろう。君は、外国の新聞の取材記
者という触れ込みで乗り込んでもらう話になっている」
目孵く王子をみつけた、一人の背の高い白髪の老人がこちらへ走
ってきた。
「あれは、このプロジェクトの指導者ソビエト人の学者シモノフ博士だ」
「王子、ご無事でお着きになられましたか。早速ですが、早々に出
発したいのです。準備は万全です。この時期を逃すと、天候が悪化
しそうなのです」
「わかった。明日、出発しよう。あ、紹介しておこう。この人はア
レキ・サンドリア新聞のハシム記者だ。私の要請で、この船に同乗しても
らう事にした」
「よろしくお願いする」
と、シモノフと四郎は簡単なあいさつをかわした。
シモノフ博士のメガネがキラリと光る。
「この氷船の名は、わが父王の名前をとって、ザイード号と名づけ
る。出発は明日正午とする」
王子が基地の全員を集め、宣言した。
数十名の乗員が、聞き入っていた。
ヤスラー王国親衛隊シンベル少佐を呼んで王子は耳打ちをした。
「いいか、船員の防害工作に気をつけろ。特に、赤道付近で遅滞
か一番心配なのだ」
それから四郎の方へ向かい、言った。
「ハジム記者、よろしく噸む」
全長1キロ、幅200mの巨大な氷塊か動き始めた。
氷船である。中東の産油国ヤスラー王国を目指す。
北極海の永久浮氷界から動き出すためのルートには、TNT爆弾で爆破、
さらにSTOL機によってナパーム弾が役下され、通路ができあが
ていた。
ザイード号は動き始める。
氷山が自らの意志を持って動き始めたのだ。
先頭は潜水艦「聖なる剣の先」号と「アラーの目」号が付き添っている。
デュエット(二重走)第6回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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