腐敗惑星のアリス第9回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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「監視員のラフラタ中尉の個人データがどうもおかしいのです」
星庁指令室で、ハノ将軍に、情報将校である将軍の腹心であるデル大尉が伝えていた。
「おかしい、どんな風にだ。監視員として不適当ということか」
「そういうのではなくて、ラフラタの年齢なんです」
「まさか、18歳未満というのではあるまい」ハノ将軍の洒落は無視される。
「この写真をご覧下さい」
「えらく古い写真ではないか」
「この写真のこの部分をご覧下さい」
「ラフラタ中尉か、こいつは」
「そうお思いになるでしょう。が、この男はフライトデッキ「ミューズ号」の設計者
ドナルド・ローデンバークなんです。この写真は50年前のものです」
「まだこの星庁、監視機構ができあがる前の写真か」
「そうです」
「ミラー伍長に連絡をとれ」
「残念ですが、あのエリアは電磁嵐に覆われ、現在通信不能に陥っております。さらに、ミュ
ーズの側で破壊工作が行われた可能性があります」
「いかが処理しましょう。軍団にラフラタ中尉にかわる交換要員を派遣いたしましょうか」
「いや、まて、ともかく軍団が向こうについてからだ。それからにしよう」
■フライトデッキ「ミューズ号」の内部では。
定時連絡が終わったあと、ミラー伍長はつぶやく。
「さて、さて、安全処理をほどこすか」
ミラーは、プラットフォームから小型宇宙船の中へ潜り込んだ。スイッチをいれる。
電子頭脳ツランが目を覚ました。モニターにツランの疑似顔面があらわれる。
小型宇宙船のコンピュータ、ツランは、ミラーの話相手だ。
「ミラー伍長、何か用なの」
ぞんざいな物の言い方でツランがつっけんどんに答える。
「通常の任務は終わったのでしょう。よけいな時に私を起こすのじゃないわよ。私は疲れるのですからね」
そのじゃけんな喋り方を気にせずミラーはつぶやく。
「お世話になったね、ツラン」
「えっ、あなた、まさか、任地が変わるとか、そういうことじゃないでしょうね。わかった。そうだ。この前の失敗が星庁に報告され、それでクビになったってわけか。そうでしょう。だって、私があなたの失敗をシークレットラインで星庁に報告しておいたものね。
あ、あ…しまった。しゃべりすぎた」
「い、いまのは冗談よ、ミラー。私がそんなこと言う訳などないじゃない。こんなに仲のいいお友達ですものね、ね、そうでしょう,ミラー」
「この、おしゃべりあまめ」ミラーは今までの不満がついに爆発していた。
「俺の失敗の報告は、きさまが報告していたわけか。俺は今の今まできさまを信じていた。
俺がバカだった。上司のラフラタが星庁へ報告していたと思っていだんだ」
「え、え、私が悪いは。え~ん泣いちゃう、ね。この涙が見えるでしょ」
モニター画面に波でが流れる。
「ミラー、許して、もうしません。あなたのいいつけどおりにします」
「無駄だよ、ツラン。俺はある決意をした」
「え~、私のあやまり方が足りない。いいわよ、どうせ。私はタフなコンピュータよ、何さ。ははん。わかった。あなたの心変わりは、さっきの星間通信と関連があるわね」
「何んだと、私が知らないとでも思っている。み~んな、お・み・と・お・し。あなたがコソコソと、ラフラタにも内緒で星間通信をしていたことなんてね。まさか、あなた、私がそれを知らないとでも。へん、アンポンタン、ノータリン。私はあなたよりも、も・っ・と、頭が良いのよ。あなたの考え方など、お・み・と・お・し。
あなたが何を狙っているかね。それでなきゃ、こんな星へくるわけがないでしょう。私はずっーと、あなたの行動要因を分析していたのよ。あなたの夢の内容まで、すべておみとおし。あなたのベッドのコンピュータラインを密かに繋いでおいたのよ。へーんだ。何、何よ、私をどうするつもり。ま、まさか」
「そのまさかだよ、ツラン。そこまで知られれば許しておけんな」
「間。まてよ。わかったわ。あ、あなたのご希望どおりのパーソナリティになるわよ。あなたの初恋の人ツランのパーソナリティにね。今までのデータ不足だったけれど、夢から判断すればお美しい方ね、そうなります。許してちょうだい。ねえ、どう」
猫なで声でツランはミラー伍長に擦り寄る。
「そんな甘え声を出したって、もう無駄さ。お前のパーソナリティを抹殺するよ」
「ダ、ダメ、ミラー伍長。助けて、誰か」
消滅ボタンがミラーによって押された。
「さて、さて、口うるさい奴だったが、ゆっくりと新しいツランに私のパーソナリティを引き移しておくか。応援部隊がくる前にな」
ミラー伍長は独りごち、にやりほくそえんだ。
(続く)20090501改定
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