腐敗惑星のアリス★第12回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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彼女は《静かの海》にある地下羊宮の中で成長した。
彼女に対する学習は、この羊宮で行われた。
彼女のカプセルにコードが結ばれていて、データバンクの膨大な知識が毎日、毎時間、彼女の頭の中に埋め込まれていった。
ある時、彼女を包んでいるカプセルが自壊した。
体がカプセルのセルから投げ出された。
《静かの海》から膜を透過し、操作卓のあるフロアに降り立っている。
大人になったのだ。
『記憶工房』
そう書かれたコアの前にたっていた。無数のコアがこの羊宮を守るように取り囲んでいる。このコアの前まで自ら来てその内の一つに入る。ここに用意された機械は、過去、誰かが使っただった。新品ではない。しかし、何年も使われていないようだった。
モニターと操作卓がある。
彼女が前に行くと繭がくるむように、椅子がでてきて彼女を座らせた。
自動的にモニターが蘇る。彼女の指が知らぬ間に操作卓に乗っている。
『生体コード』
そうキーボードを押す。そのモニターから文字が出た。
『生存目的 不明』
『生命形態 不明』
生命体コードからは何も分からない。ちなみに名前はどうなのだろう。何かの表示がでた。
『トリニティ』
「これがあたしの名前なの」独りごちた。
「でも、トリニティってどういう意味なの」 彼女は再び、キーボードを操作する。
『不明』
昔、彼女に生命を与えるために来たといった男のことを思い出していた。
「一体、あのおじさんは何者だったのだろう」
コンピューターにたずねる。
コード『ガルガンチュア』
そのほかは相変わらず、一切不明だった。
このコンピュータが答えたくないのか。それとも知らないのか。
「どっちなの、答えてよ」
思わず彼女トリニティは声をだして叫んでいた。
「知らないのだ」コンピュータから、急に声がかえってきた。
「今の声は一体だれ」
「ワシか、ワシの名前はチャクラじゃ」
モニター画面に、疑似人格映像が出現し、それが応える。
「あなたは、しゃべることができるの」
「今、しゃべることを思い出したのじゃ」
「このコンピュータの名前なの、チャクラって」
「トリニティ、お前はおばかさんじゃな。この地下の羊宮すべてをいうのじゃ」
「地下羊宮って」
「お前トリニティを保護している場所全体をいうのじゃ」
「ええ、おじいさん、わかりやすく話してよ」
「わしはじいさんじゃないわい。チャクラというのじゃ」
「じゃ、チャクラのおじいさん、説明してよ」
キーボードをさわるトリニテイの前に、男が出現した。
「チャクラじいさん、体があるの」
「わしにだって体くらいあるわい。といえ疑似肉体じゃがのう」
保護者であるチャクラと、トリニティの出会いだった。
「ねえ」トリニティはチャクラに、今までに学習したことから、類推し尋ねてた。チャクラはトリニティとしゃべる時は、常に疑似肉体をあらわせていた。
「あたしにお父さん、お母さんはいるの」
「いない、お前は天外孤独だゃ」
「じゃあ、なぜ、あたしはここにいる?」
チャクラは黙った。
(ははあん、まだ、あたしにいえない何かがあるのね。あたしに言うと具合が悪いから隠しているわね)
トリニティはそう思った。
(続く)20130427改定
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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