宇宙から還りし王(山稜王改題)第9回
(1978年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
中華人の「リャン」は自分自身が作りあげた、この山上宮殿が気にいっていた。
ここちよい風が美女達があおぐ扇で送られてくる。この宮殿からの
ながめは最高で、部下達が丁寧に育てているドラガの畑を眺望でき
た。
ドラガの畑は、実りの季節を迎えている。それは彼リャンに莫大
な利益を与えてくれるのだ。
リャンは、この南国、ゼルシアの闇の帝王であった。
彼が、この国にもたらす闇の金がなければ、この国ゼルシアの経済はなりた
たないといわれた。
幸い、彼の領土は地球自然保護地区にあり、地球連邦に関するカモフラージュ
にはうってつけなのだ。
リャンは中華共同体の貧しい農民の五男として生をうけ、若年の
内は苦労が多かった。が上海の宇宙空港の苦力として務めてからは
道が開けた。空港は一昔前の上海港の様に、闇の経済が支配してい
た。
彼はそこで宇宙ドラッグシンジケートの下働きとして出発し、
上の地位へと登りつめていった。
が、日本ヤクザと大韓民国暴力団との抗争事件にまきこまれ、上
海から姿を隠さなければならなくなった。
リャンはゼルシアに密入国した。
幸いにも、この国のクライムシンジケートはリャンの舎弟
で、同じ省出身のコンファがにぎっていた。
コンファの勢力をバックに、彼はゼルシア内に宇宙塵麻薬「ドラガ」
の栽培地を求めた。
それが、この地ラシュモア山であった。
山の名は、ゼルシアがアメリカ大国によって解放された時、
当時のゼルシア大統領ゼーランジアが、アメリカ大国にごまをすり、
名づけたのだ。
現在ここは地球唯一の自然保護地域となっていた。
ドラガはこのラシュモアの気候に適合し、一大繁殖した。ドラガ
がリャンにおとす金は天文学的数字であった。コンファを裏切り葬
り去った後、いつしかリャンはこう呼ばれていた。「山陵王」と。
山陵王となってからのリャンは身辺の防備に異常な程気をつかっ
ていた。つまり、このラシュモア山は別の意味で金山だった。誰か
がリャンの寝首をかけば金山はそいつの手にころがりこむのだ。
ラシュモア山の各所には、防衛ラインが張られていた。シアリー絶
壁を登るのは至難のわざであり、さらに上からよく見える下の間道
は手下ががっちりとおさえていた。
リャンのまわりには南国ゼルシアの美女達が集められていた。リ
ャンの金力でゼルシア中から狩り集められた美女ばかりだった。彼
女らは彼のまわりにはべり、身のまわりの世話をした。ゼルシアは、
また美女の産地でもあったのだ。リャンの頭の中には中国の昔の英
雄のイメージが思い浮んでいた。
彼はベッドに横たわり、わきのテーブルの上に、山と積まれた南
国産の果物に手をのばし、それを食しようとした。
その時だった。ドラガ畑の真中に、一人の男が出現するのをリャ
ンは見た。
(続く)
■宇宙から還りし王(山稜王改題)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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