腐敗惑星のアリス第29回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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「聞いたか、皆、寂寥王は罪を認めた。寂寥王を殺せ」
ラフラタであったものが言った。
「私を好きにしてくれ」寂寥王が答える。
「寂寥王どうしても」
「皆、よいか、私はこのものたちに飲み込まれる。その行為がこの
ものたちに対する罪滅ぼしになる。どうか、私を助けようとしない
でくれ。これは、最期の私の願いだ」寂寥王が言う。
「寂寥王よ」
「あなた」
「お父さん」
「ははあ、おとなしく、私の軍団に下るか。寂寥王よ、まだ、この
腐肉の中には中性子爆弾が残っている。レムリアよ。残念だったな。
寂寥王よ、完全に吹き飛ばしてくれる」
「まて、それはおかしい、ラフラタの意識よ」
風の意識の幾つかが言う。
「もう、遅いわ」
ラフラタが叫ぶ。
腐敗惑星の表面が腐敗巨人として収斂した。
「寂寥王よ、我々はお前を恨む」
「我々、すべての生物がお前のために、こんな醜い姿に返られたのだ」
「寂寥王よ、我々の耐えることのない悲しみと死の瞬間を思え」
腐肉のかたまりが、寂寥王の体をすっぽりと包みこんでいた。
寂寥王はその中で、数多くの死の瞬間を味わった。そして、完全に死
ぬことのできない悲しみの心を知った。
「寂寥王よ、お前の力をもってすれば、我々のこの苦しみを取り除
くことができるだろう。この逃れることのできない死の淵から、我
々を生の空間に戻せ」
『寂寥王よ、あなたがなぜ、どこかに逃避され、またトリニティを
残したか考えてくだされ』
急にチャクラの声が寂寥王の元に届いた。
「なぜだ、私はわずかぽかりでも、再生を夢みていたのか」
腐肉の巨人体の圧力で圧しつづけられる。
苦悩する寂寥王の意識が、数千の腐肉の意識に責めさいなまれていた。
が、寂寥王はこの練獄の中で自分が昇華され、罪が償われると考えていた。
寂寥王は逃れようのない苦悩の中で、1人、昔を思い出す。
大いなる昔、この古代世界に電磁波が降り注いだ。そのとき以来、
世界は腐り始めたのだ。その電磁波をひきよせたのは、自分の生命
の寂しさゆえだ。
一人がゆえにだ。
そのために皆と共に滅びようとしたのだ。
やがて、この腐肉の意識の中にすこしずつ、寂寥王の深い寂容態
が押し寄せて浸透していった。
王は考える、
この腐肉たちの苦しみを解消する方法は。もし、彼
らをもとに戻すことができるならば。
(続く)
1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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