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■義経黄金伝説■第25回
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http://www.geocities.jp/manga_ka2002/
第4章 一一八六年 足利の荘・御矢山(みさやま)
■5 一一八六年文治2年 足利の荘・御矢山(みさやま)
足利の荘、御矢山は、1日前の御矢山祭りの喧噪がうそのようにしずまり
かえっている。
何人かの鎌倉の物見が、姿を見せずにいるようだが、
西行と十蔵は、御矢山祭に参加していたご家人衆が、領地に急いで帰るの
を、のんびりと見て、時間を過ごしていた。
すでに、西行は、伝説の人になってはいる、とうりすぎる武士どもが尊敬
のまなざしでとうりすぎる、
「西行様、これからは私の出番もお作りくださせ」
「ふふ、十蔵殿、ワシははしゃぎすぎたかのう」
「おひとりだけ、目立っておられましたぞ」
「困ったことに」
「何でございましょう」
「試合で体がほぐれた、今度は刀のさばきをみせたいものじゃ」
「いいかげんにされませ。私が重源様からおこかれます」
「そうじゃのう、たまには、十蔵殿の見せ場もつくらなければのう」
「ふふ」
黒田悪党たちは、1つ手前の宿場で、待っている。御矢山祭り騒動があっ
た事は、街道を行く商人や武士の郎党たちの話から感じていた。
「何やら、西行が鎌倉殿を相手の大立ち回りをしたようぞ。いかがかのう、
鳥海殿」
悪党首魁の太郎左が、そばにいる破戒僧、鳥海にたづねた。
「ふふつ、太郎左殿、お気の小さい事を。聞くには及ぶまい。たかが流鏑
馬。古式からの儀式。我らは、源平の戦を生きのびし歴戦の強者」
「そうじゃ、兄者、所詮は、京都後白河法王に気に入られし歌詠みの坊主。
まして、大江様からは何の指示もない」
「それよ、次郎左、そこが怪しいぞ」
「何を、兄じゃ、それは、約定とうり砂金を奪い取れという事であろうさ」
と次郎座が笑い飛ばした。
それを受け、他の者どもも
「ふふつ、70歳の歌詠坊主、左手一本でひねりつぶすわ」
「鎌倉殿も、我々の襲撃を見て見ぬ振りをするという約束ではなかったか」
「幸い、ここまでは検非違使の手は回ってはいまい」
と、濁酒をはむ悪党は、あくまでも威勢のより集団であった
御矢山には、今、人はいない。
西行の荷駄一行は、約束違わず正午、その御矢山にある広場の中に入って
来ていた。打ち捨てられた仮小屋が並んでいる。
「お主たちは、離れていて下され」
荷駄人夫どもを、その場から逃した。西行と、残りは十蔵一人。
仮小屋が並ぶ窪地の真ん中で、西行は叫んでいる。
「西行じゃ、お約束のもの、お持ちしたぞ。静殿を返していただこう」
七十才と思われぬ大声で、西行は叫んでいる。が、人の現れる気配をない。
「西行、待ち兼ねたぞ」
ようやく、山頂の方向から声が帰って来た。
と同時に数束の弓の群が、雨霰と飛んできて、目の前の大地に突き刺さって
いる。無論、矢の群は、西行と十蔵を狙っていた。
「名乗りもあげず、我々を射殺すつもりか」
「卑怯なり」二人はその場をはね飛ぶ。
が、二人は、矢の攻撃に捕まらぬ程、敏速に動いている。西行の手に荷駄に
隠してあった愛刀、朝日丸が握られている。同じように十蔵の手にも杓丈が。
窪地の入り口から、続いて、火が、大きな火の群がなだれ込んで来た。それ
は藁を積んだ荷車である。が走り込んでくる。そこへむかい、さらに火矢が打
ち込まれた。仮小屋も、周囲の屋も燃え上がり、炎をあげる藁が、西行たちの
背後を塞いでいる。袋の鼠である。
「どうじゃ、西行。これで、もう逃れることはできぬぞ」
西行一行の前に、立ち塞がる、騎馬にのった商人風の一団が、総勢十四人現
れている。
「西行殿、お荷物お預かりしたい」
真ん中の屈強な頭目らしい僧服の人間が威嚇した。
「静殿をお返しいただきたい。ところでお主はどちらさまじゃ…」
一団の首領が答える。
「たぶんご存じあるまい。我々は伊賀の国、東大寺黒田荘に住む太郎左、次郎
左そして鳥海」
「そして静はあやめ、遺骸はこの山中に捨てた」
次郎左が憎憎しげにはき捨てる。
西行にはしづかな怒りの炎が燃えた。義経殿への、、約束が。
「して、このやつがれの荷物を希望とは」
「隠しても無駄だぞ。その後ろの荷駄に用がある。この破戒僧、鳥海が、すべ
てのからくりを知っておる。のう鳥海」
壮丁の鳥海が前にでてくる。
「西行。貴様が東大寺勧進僧重源より依頼を受け、この陸奥まで来たこと、京
の噂。ましてや藤原秀衡は、京の公家殿の依頼を無下に断りはすまい。すなわ
ち、その西行一行の荷駄、まさしく秀衡公の沙金に相違あるまい」
「それを、少しばかり分けてほしいという訳だ…」
商人姿の太郎佐がにやりとする。
「ふふ、西行、すべてとは申しますまい。半分でもいいのじゃ」弟の次郎座が
こずるそうに言う。
「ならぬ。この沙金はもはや秀衡殿のものでも、西行のものでもない」
西行は、声高に答えた。この悪党どもをこわがってはいない。
「では、だれのものと…」
「東大寺のものじゃ。いや日本国のためのものじゃ」
「くはくはは、片腹痛し。よいか西行、貴様はその年だ。ましてや、世は義経
を巡って藤原秀衡の平泉と、鎌倉とは不穏な動きがある。その途上のこの平泉
と関東の国境、足利の山中で、西行法師が、行方不明になっても、調べる方策
などありはせぬわ…」
「やい、この歌詠みの坊主。早く荷物を渡せ」太郎左はいらいらしている。
「そうじゃ。さすれば命だけは助けてやるわ」
「太郎左、次郎左、それに鳥海とやら、この俺をただの歌詠みの坊主と思うた
のか」西行は自信たっぷりに言う。
「何」
「わしの藤原秀郷流剣の腕を、少しは見せねばなるまい」
「き、きさまは一体、」三人は西行の勢いと自信に驚いている。
「昔は北面の武士、佐藤清衡。お主らはしるまいが、先祖は俵藤太ぞ。平将門
を打ち破りし名門。ましてや、儂の鞍馬での兄弟弟子は鬼一法眼、その名前は
いくら田舎侍とて聞いていよう」
「西行様、その前に、このような奴輩。私におまかせあれ」
十蔵が、西行の前に棒をかまえて立ち塞がっている。
「ぬっ、貴様はどこかで見た顔じゃと思うたら」
馬頭を、十蔵に回している
「お前。東大寺僧兵の指揮をしておったじゃろう。のう次郎左、この男の顔に
見覚えはないか」
太郎左が十蔵の姿を弟に言う。
「そうじゃ。兄者、こやつは確かに指揮をしておった。お前たち、悪僧(僧兵)
どもが弱いから、平家ごとき柔侍に東大寺の伽藍を焼かれてしまうのじゃわ。
くはは」
三人は、十蔵をあざ笑った。
(続く)
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第4章 一一八六年 足利の荘・御矢山(みさやま)
■5 一一八六年文治2年 足利の荘・御矢山(みさやま)
足利の荘、御矢山は、1日前の御矢山祭りの喧噪がうそのようにしずまり
かえっている。
何人かの鎌倉の物見が、姿を見せずにいるようだが、
西行と十蔵は、御矢山祭に参加していたご家人衆が、領地に急いで帰るの
を、のんびりと見て、時間を過ごしていた。
すでに、西行は、伝説の人になってはいる、とうりすぎる武士どもが尊敬
のまなざしでとうりすぎる、
「西行様、これからは私の出番もお作りくださせ」
「ふふ、十蔵殿、ワシははしゃぎすぎたかのう」
「おひとりだけ、目立っておられましたぞ」
「困ったことに」
「何でございましょう」
「試合で体がほぐれた、今度は刀のさばきをみせたいものじゃ」
「いいかげんにされませ。私が重源様からおこかれます」
「そうじゃのう、たまには、十蔵殿の見せ場もつくらなければのう」
「ふふ」
黒田悪党たちは、1つ手前の宿場で、待っている。御矢山祭り騒動があっ
た事は、街道を行く商人や武士の郎党たちの話から感じていた。
「何やら、西行が鎌倉殿を相手の大立ち回りをしたようぞ。いかがかのう、
鳥海殿」
悪党首魁の太郎左が、そばにいる破戒僧、鳥海にたづねた。
「ふふつ、太郎左殿、お気の小さい事を。聞くには及ぶまい。たかが流鏑
馬。古式からの儀式。我らは、源平の戦を生きのびし歴戦の強者」
「そうじゃ、兄者、所詮は、京都後白河法王に気に入られし歌詠みの坊主。
まして、大江様からは何の指示もない」
「それよ、次郎左、そこが怪しいぞ」
「何を、兄じゃ、それは、約定とうり砂金を奪い取れという事であろうさ」
と次郎座が笑い飛ばした。
それを受け、他の者どもも
「ふふつ、70歳の歌詠坊主、左手一本でひねりつぶすわ」
「鎌倉殿も、我々の襲撃を見て見ぬ振りをするという約束ではなかったか」
「幸い、ここまでは検非違使の手は回ってはいまい」
と、濁酒をはむ悪党は、あくまでも威勢のより集団であった
御矢山には、今、人はいない。
西行の荷駄一行は、約束違わず正午、その御矢山にある広場の中に入って
来ていた。打ち捨てられた仮小屋が並んでいる。
「お主たちは、離れていて下され」
荷駄人夫どもを、その場から逃した。西行と、残りは十蔵一人。
仮小屋が並ぶ窪地の真ん中で、西行は叫んでいる。
「西行じゃ、お約束のもの、お持ちしたぞ。静殿を返していただこう」
七十才と思われぬ大声で、西行は叫んでいる。が、人の現れる気配をない。
「西行、待ち兼ねたぞ」
ようやく、山頂の方向から声が帰って来た。
と同時に数束の弓の群が、雨霰と飛んできて、目の前の大地に突き刺さって
いる。無論、矢の群は、西行と十蔵を狙っていた。
「名乗りもあげず、我々を射殺すつもりか」
「卑怯なり」二人はその場をはね飛ぶ。
が、二人は、矢の攻撃に捕まらぬ程、敏速に動いている。西行の手に荷駄に
隠してあった愛刀、朝日丸が握られている。同じように十蔵の手にも杓丈が。
窪地の入り口から、続いて、火が、大きな火の群がなだれ込んで来た。それ
は藁を積んだ荷車である。が走り込んでくる。そこへむかい、さらに火矢が打
ち込まれた。仮小屋も、周囲の屋も燃え上がり、炎をあげる藁が、西行たちの
背後を塞いでいる。袋の鼠である。
「どうじゃ、西行。これで、もう逃れることはできぬぞ」
西行一行の前に、立ち塞がる、騎馬にのった商人風の一団が、総勢十四人現
れている。
「西行殿、お荷物お預かりしたい」
真ん中の屈強な頭目らしい僧服の人間が威嚇した。
「静殿をお返しいただきたい。ところでお主はどちらさまじゃ…」
一団の首領が答える。
「たぶんご存じあるまい。我々は伊賀の国、東大寺黒田荘に住む太郎左、次郎
左そして鳥海」
「そして静はあやめ、遺骸はこの山中に捨てた」
次郎左が憎憎しげにはき捨てる。
西行にはしづかな怒りの炎が燃えた。義経殿への、、約束が。
「して、このやつがれの荷物を希望とは」
「隠しても無駄だぞ。その後ろの荷駄に用がある。この破戒僧、鳥海が、すべ
てのからくりを知っておる。のう鳥海」
壮丁の鳥海が前にでてくる。
「西行。貴様が東大寺勧進僧重源より依頼を受け、この陸奥まで来たこと、京
の噂。ましてや藤原秀衡は、京の公家殿の依頼を無下に断りはすまい。すなわ
ち、その西行一行の荷駄、まさしく秀衡公の沙金に相違あるまい」
「それを、少しばかり分けてほしいという訳だ…」
商人姿の太郎佐がにやりとする。
「ふふ、西行、すべてとは申しますまい。半分でもいいのじゃ」弟の次郎座が
こずるそうに言う。
「ならぬ。この沙金はもはや秀衡殿のものでも、西行のものでもない」
西行は、声高に答えた。この悪党どもをこわがってはいない。
「では、だれのものと…」
「東大寺のものじゃ。いや日本国のためのものじゃ」
「くはくはは、片腹痛し。よいか西行、貴様はその年だ。ましてや、世は義経
を巡って藤原秀衡の平泉と、鎌倉とは不穏な動きがある。その途上のこの平泉
と関東の国境、足利の山中で、西行法師が、行方不明になっても、調べる方策
などありはせぬわ…」
「やい、この歌詠みの坊主。早く荷物を渡せ」太郎左はいらいらしている。
「そうじゃ。さすれば命だけは助けてやるわ」
「太郎左、次郎左、それに鳥海とやら、この俺をただの歌詠みの坊主と思うた
のか」西行は自信たっぷりに言う。
「何」
「わしの藤原秀郷流剣の腕を、少しは見せねばなるまい」
「き、きさまは一体、」三人は西行の勢いと自信に驚いている。
「昔は北面の武士、佐藤清衡。お主らはしるまいが、先祖は俵藤太ぞ。平将門
を打ち破りし名門。ましてや、儂の鞍馬での兄弟弟子は鬼一法眼、その名前は
いくら田舎侍とて聞いていよう」
「西行様、その前に、このような奴輩。私におまかせあれ」
十蔵が、西行の前に棒をかまえて立ち塞がっている。
「ぬっ、貴様はどこかで見た顔じゃと思うたら」
馬頭を、十蔵に回している
「お前。東大寺僧兵の指揮をしておったじゃろう。のう次郎左、この男の顔に
見覚えはないか」
太郎左が十蔵の姿を弟に言う。
「そうじゃ。兄者、こやつは確かに指揮をしておった。お前たち、悪僧(僧兵)
どもが弱いから、平家ごとき柔侍に東大寺の伽藍を焼かれてしまうのじゃわ。
くはは」
三人は、十蔵をあざ笑った。
(続く)
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