アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー第1回
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作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
ミラーは闇の中を飛んでいた。
宇宙連邦の辺境、腐敗惑星の上空だ。
その惑星は相もかわらずどろどろした色をしていた。
そして、蠢いているのだ。
しかし、生命体が一部分生息しているなどとは、想像もつかない。
ミラーはすでに腐敗惑星に降下してあったポッドを回収していた。
このポッドから、この星の情報を得ているのだ。
時々、惑星表面の腐肉によってポッド内部が侵食され情報を発しなくなる。
それを発見し、収容し補修するのが、ミラーの仕事だった。
他の仕事といえば、この星への侵入者を破壊する防衛機構、「ドリフィングゲート(浮遊機雷衛星発射衛星)」のメンテナンス。 ドリフィングゲートには光子ミサイルが装備されている。
ミラーの現在唯一の話し相手は、このメンテナンス用の小型宇宙船のコンピュータ、「ツラン」だけだった。このツランは女性のパ-ソナリティ設定にしてある。
「この星に本当に宝があるのかな、信じられないね、ツラン」
コンピュータ、ツランは答える。
「データがないんだららね。答えようがないじゃない。無理いうんじゃないよ。私はそれでなくても忙しいんだから。自分で考えなよ」
コンピュータ、ツランは、世慣れた姉さん女房のように言う。
「まあいいさ、独り言だよ。さあ、監視衛星、フライトデッキへ帰り、ラフラタの顔でも拝むか、あの不機嫌な顔をな」
「よーく、言うよ。あなたも不機嫌な顔だよ、負けずおとらずね」
かえす言葉はきついのである。しかしプログラムはミラーが書いたのだ。
ミラーの好みの性格なのだ。
腐敗の風が、ミラーの小型宇宙船の外を吹き荒れている。
フライトデッキ012、は、降下ポッドを管理する惑星ステーション。
監視衛星であり、惑星の周遊軌道に乗っている。
このオートメーション化されたステーションは2名しか配属されていない。
この星、腐敗惑星は重要視されていないのだ。
しかし、監視衛星の宇宙士たち以外にも。生命体は存在するのだ。
姿は見えず、存材も気づかれず、彼らはいる。
『我らは風民フーミン、歴史の表面にでることはない。
我らは必ず、この星、腐敗惑星の歴史の変遷に居合わせる。
宇宙連邦の監視機構の奴らは我らの存在すら、きずかぬ。が我らは生きている。存在している』
形もなく、姿もみることのできぬ意識体が、この惑星上空部に人知れず生息している。
(続く)2016改定
(トリニテイ・イン・腐敗惑星・1975年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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