宇宙から還りし王(山稜王改題)第21回
(1978年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
●ケインはまるでそこ宇宙ステーションDELにいて、アンバサダ
一号を見ている一人になっている事に気づく。
アンバサダー号からの唯一の生存者はネイサンだった。
彼は年をとっていない。
果して生命保持チューブから一歩でも足を出したこ
とがあるのか。なぜ彼だけが生き残っていたのか。
他の生命チューブは破壊されていたが、死体は残存していなかっ
た。
船体に設置されていたカメラはすべて破壊されていた。あきらか
に何者かの手によって壊された事は歴然としていた。
船体の各部位にあったサブコンピューターのメモリーも意味をな
さなかった。
ステーション司令部、中央脳へ地上のコンピューターから送り出
されたネイサンのディティールがモニターに映し出されていた。
「ロバート・H・ネイサン身長192m。体重85キロ。
乗船させることはないのだが。アンバサダー号出発一年前、ネイサ
ンはジェット機事故により、彼の両親、愛妻、子供達を失なってい
て、失意のどん底にあった。彼はこのアンバサダー号に乗ることを
切望していた。この時、彼は37歳だった』
チューブから解放された彼の体は、生体チェックの結果、37歳と
判断された。
ネイサンはしかし、深い眠りの中にあった。
アンバサダー号にセットされていたすべての記憶機構が役に立だ
ない事がわかった時、すべての科学者の眼はネイサンに注がれた。
彼の回復が期待した。
初めての恒星間旅行から還ってきた男は何をのべるのだろうか。
が眠れる男の心はまた空白であった。
ネイサンの心をスキャナーやイメージリーダーでくりかえし、担
当セクションはのぞき見たのだが。彼の記憶もまた出発時の時点で
きれいに消滅されているようだった。何者かが彼の心にどんな処置
を設したのか、わかり様がなかった。
ただ、彼の頭の部分に高密度に集積されている肉腫があった。
彼の処置にこまった宇宙省は、ラガナ砂漠のリハビリテーション
センターに送り込んだ。
彼の変態が始まったのはしばらくたってからだった。
ケインの頭にそんなストーリーがむりやりにつめ込まれている。
アメリカ大国人。ヨーロッパ連合アンダルシア地方生まれ、両親
はアメリカ大国人であったが、文化人類学者であり、地球中を旅行
していた。彼らはスペイン、アンダルシア地方に別荘を持ち、休暇
をすごすのを常とした。そこでロバートが生まれた。
彼は両親の感化で幼ない頃よりヨーロッパ語すべてを話すことができた。パリ、
ソルボンヌ大学卒業後、マサチューセッツエ科大学に学び、外惑星
言語学を修める。NASAにおける最初の外惑星コミュニケーショ
ン担当官であった。
通例、NASAでは彼クラスの学者を何年もかかる恒星間船に乗
せる。
(続く)
■宇宙から還りし王(山稜王改題)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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