ザ・ゲーム(1979年作品)第8回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
■「もし、この子がアンクルーサムの手に渡っ
てみろ、どうなる、ユーリノフ政治局員」
「非常に危険です、我々の国家の安全にもか
かわってきます」
「そこまでわかっているなら、早急に手を打
て。彼、南条則夫を手に入れるか、さもなければ抹殺し
ろ」
「わかりました。しかし彼は南条財閥の孫で
す。まず七の方面から」
「あのシベリア開発の一件にからんでいる南条重
工業の…」
■ 南条財閥の剛造の家に、明らかにアイピ・リ‐グの卒
業生だと思われるアメリカ人達が訪れた。彼
らは態勲だが強圧的に南条剛愈に言った。
「どうでしょう。則夫君をアメリカへ留学さ
せませんか。我々は多くの得物を用意できま
すよ。我々には国内に広大な実験場を多数所
有しています。戦車をも相手にしていただけ
ますよ」
剛造は則夫の事がわかっているのに、驚き、
冷汗をかいている。
「しかし、あれ則夫はまだ幼い。小学生だ」
もう一人の男が言った。
「南条さん。おわかりになっていませんね。
もし留学させていただかなければ、あなたの
アメリカにおける会社や財産が凍結される、
さらにあなたも不慮の事故をとげる可能性も
あるわけですよ。それに久賀島を、あやまっ
て在日米空軍が爆撃しないともいえませんし
ね」
「君達は、私をおどすつもりかね」
「いいえ、これは取引ですよ、南条さん。あ
なた・にメリ″卜を与えようと我々も努力して
いるわけですからね。七の辺をくみとってい
ただきたいですね」
。
「それに私達はプラフは使うつもりはありま
せん。やる事は必ずやります。それも一週間
以内ですよ」
それだけ言い残すとアメリカ人達は南条家
を去った。
南条家へ続く道路の脇道でソ連人達の車が
待ち構えていた。車が通りすぎた後、本道へ
出る。
「侍て、今の車に乗っていたのはCIAの口
イじ?ないか」
「そうです」
「とすれば、奴らも南条則夫をねらっている
わけか」
ブルガーニンは少し考え込んでいる。
KGB日本支部のおえら方である。
「よし、破壊班のブロイチェンコに連絡しろ
奴らを途中でつかまえ、奴らのサジェスチョ
ンを白状させるのだ」
■ 「南条さん、則夫くんをモスクワ、ルムンバ
大学の付属学校へ留学させていただけませんか。
おまけに我々の
T72戦車を数台プレゼン卜さしあげますよ。
それにムルマンスク市近郊に則夫くん専用の
実験場も与えようじゃありませんか。それに
ミグも、潜水艦も」
今度はソ連人達が南条に談判をかけている。
「残念ですが」。
代表のブルガーユンが南条の言葉をさえぎった。
「それじゃ南条さん。シベリヤの件はどうな
ってもかまわないわけですな。それにあなた
もお年だ。もしお孫さんがなくなったり、あ
なたも急死なさったら、この日本有数の南条
財閥はどうなるのでしょうな」
奇妙な程、ソ連人の話はアメリカ人のもの
に似ていた。これもKGB破壊班プロイチェ
ゐ努力の賜物であった。
「君達も脅しか」
南条は一瞬、南条洋子の顔を思い浮べた。もし
わしが死ねば、あいつが。
「いいえ、我々はソビエト人民共和国の名誉
にかけて、このプロジェクトは実行いたしま
す」ブルガーニンの張り切った胸に数多くの
勲章が輝いている。
南条は久賀島の孫に電話をかけていた。
「…というわけだ。お前、どちらを選ぶね」
ザ・ゲーム(1979年作品)第8回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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