夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第6回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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ジェイは思い出した。
東欧、ワルシャワの都市だ。石畳。旧市街。
ワルシャワ条約軍。
彼はあおむけにくくりつけられている。採の体に石畳が冷たい。
東欧のまろやかな太陽か、それでもまぶしい。
「白状したまえ、ジェイ」
スプローギン大佐が言った。
とても軍服の似合う男だ。沈黙が続く。
ジェイには、答えようがないのだ。わからないのだ。
「返事がないな。どうやら刑を実行してほしいという事かな。我々
はブラフを使っているわけではない。それをわからせてやろう」
スプローギン大佐は冷酷な笑みを上からあびせていた。
「やれ」
命令が下った。
そろそろと、赤い星をつけたT82戦車、
暗緑色の鉄のかたまりがこちらの方へ動いてきた。
「やめろ、やめてくれ」
ジェイはわめいていた。
汗が滝のように流れ出ていた。
体を無理に動かそうとする。
全く動かない。動くわけがない。鉄のかたまりがゆっくり、ゆっくりと
ジェイの体の上に……。
戦車は急に止まった。
ジェイは気絶寸前だ。
体がこわぱっている。目をぐっとしめ、口をとざしていた。
「どうだな。気分は。白状する気分かね」
スプローギン大佐が、ジェイの顔を上からのぞきこんでいた。
スプローギン大佐の顔の毛穴がはっきりと宛てとれる。
ひげのそりあとか肯い。
ジェイの目は何を見ているのかわからない様に見える。
「どうやら、我々は君を見くぴっていたようだな」
スプローギンはそう言って兵を呼ぶ。
「ドクター・シュッカを呼べ」
ドクター・シュッカと呼ばれた男が白衣を着て、ジェイの頭の上に立つ。
「ジェイ、楽しい経験をさしてあげろよ」
シュッカは、猫なで声で、これからとても楽しい事が始まる様に言う。
「何をするつもりだ」
「君に、対する、我々の、ささやかなプレゼントさ」
スプローギンが言う。
シュッカが持ってきたカバンから銀色のパックを取り出す。
「いいか、この薬は神経緩和剤だ」
シュッカが手にした、薬の入った注射器が光を受けて、にぶく光る。
「痛みがゆっくりと襲ってくるのだ。
一秒の痛みが、、一年に感じるかもしれん。
個体によって反応が異なるのだ。さらにありかたい事
には、個々人の痛みのレベルにあわぜてくれる。
気絶する一歩手前の痛さ、その最高レベルで持続するのだ」
スプローギンがシュッカの説明を補足する。
「つまり、非常に効率的に痛みが続いてくれるのだ」
「悪魔め」
ジェイは二人に毒づいた。
「悪魔だと、どちらが悪魔か、自分のやった事を考えてみろ」
スプローギンが、つばを、ジェイの顔に、はきかける。
私のやった事? いったい何なのだ。
(続く)
夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第6回
キング・オブ・ドリーム-あるいは創造者の夢■
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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