ドリーマー・夢結社第3回
(1987年)星群発表作品
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
チバーポートタチワー?
その言葉から記憶に蘇ってくるものは何もない。
どうしたものだろう。Kは新宿の路上で思いまどう。
チバポートタワーヘとりあえず行ってみよう。
新宿から山手線に乗り。秋葉原駅で乗りかえ、千葉駅へ向かう。
京葉線の電車の中から見ると、見知っているはずの風景がなぜかめずらしいものにみえる。
なぜだ。
俺はどこに住んでいるのか。まったくわからない。千葉駅のプラットホームに降りたって、
Kは行くべき場所がはっきり見えた。
チバポートタワーだ。そこは東京湾をバックにして、空からおりてきた金属の針の様にみえるのだ。
メタリックな塔は日本には似合わない。
そのタワーは、それ自身が未来からやってきたものの様に思えた。
駅前のターミナルからバスに乗った。あまり混んではいない。
今日は何日なのだ。それも覚えてはいなかった。
バス席に誰かが捨てていったスポーツ紙の日付を見る。
一九八七年九月一七日木曜日とあった。
チバポートタワー下の入口付近はがらんとしている。平日だからだろう。入場券を買う。入場券を見てみ
る。
やはり、先刻ポヶ″卜から出てきた半券とまったく同じものだった。とにかく展望室にあがってみよ
う。スーベニアーショ″プを通りすぎて、千葉港の歴史紹介などのデ″スプレイの前を通り、エレベー
ターの前の列に並んだ。
やがてエレベーターのドアが開く。Kと一緒に六人の男たちが入った。
何かの団体だろう。同じようなスーツ姿の同じような顔をした男たち。
エレベーターは上昇を続けている。
タワー外壁のマジ″クミラーを通じて千葉港の風景がよく見える。
海辺では釣り人。海の上ではウインドwサーファーがいた。
エレベーターに乗っている客が全員Kの方を見ている。
顔をのぞきこむような感じだ。
そして皆、銃を手にしていた。スーツ姿の彼らは声をそろえて言った。
「ようこそ、我がチバポートタワーへ。ドリーマー君!」
Kは意味がわからなかった。どういう事なのだ。ドリーマー?だって
男のI人がいう。
「驚いて言葉もないようだな、ドリーマー」
「どういうことだ」
怒りをあらわにKは叫んでいた。
「ふふっ」
全員が笑っている。
「ドリーマーだって」
「きさまらドリーマーは、この世に存在してはならない生物の集団さ」
「いや、正確には生き物ですらない。きさまらはくさった空気にすぎん」
男達は口々にののしる。
「お前たちがここにしめる空間なんかないのだ!」
「消えうせろ、ドリーマーめ」
彼らの言葉のはしばしには怒りが見える。
「待て待て。やるのはまだ早い。まだこいつには聞きたいことがある」
チーフらしい男が言う。
「何ですか」
「こいつのドリーマー・マスターの居場所をはかせるのだ」
「わかりました」
エレベーターがやっと止まる。ドアが開く、が、そこは展望室ではなかった。
「ようこそ、ドリーマー君。さて、ここが君の歓迎パーティー会場だ」
先にエレベーターを降りながらチーフが言った。その部屋はメカニカルな部品で囲まれている。何か
のコクピットの様だ。
「ここはどこだ」
Kは茫然として尋ねる。本来の展望室の上にこの部屋はあるようだ。
「もちろん、チバポートタワーだよ。この部屋は君の為に用意しておいたわけではない。ドリーマー・ハンターの集合場所なのだよ」
「ドリーマーハンター?」
Kはますますもって混乱する。
「なぜ、俺をここに連れて来たのだ」
「その質問は、我々が逆に君にしたい。なぜ君はこのチバポートタワーに来た。われわれハンターをやっつけにきたのかね」
スーツ姿の男達はどっと笑った。
「そんなわけはあるまい。それにドリーマーとしては無用心すぎた。我々がドリーマーの警報装置をも
っているのを知っているはずだ」
別の男が言った。
「ちょっと待ってくれ。君達はさっきから俺をドリーマーと呼んでいるが、ドリーマーとは一体何だ。
俺は本当に知らないんだ」
Kの表情は真剣だ。
一瞬、部屋は静かになった。
そしてセキを切ったような大爆笑の渦。
「くくっ、君は芝居がうまいな」
「笑わせてくれるぜ」
男の一人は近くの机をたたいて笑う。
ドリーマー・夢結社第3回
(1987年)星群発表作品
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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