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日本人の日 第12回アルプス要塞でJVOは会議を開かれようとしていた。日本人の生き残り、花田万頭の事が話題になる。

2021年01月09日 | 日本人の日序章(1980年)
日本人の日 序章■ある財閥が世界の経済と政治状況における一国の役割を分析。その一人の男は その国が存在しないと仮定し、世界分析を行う。結果は、男の推論どおりである。その国の名は。
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日本人の日 第12回アルプス要塞でJVOは会議を開かれようとしていた。日本人の生き残り、花田万頭の事が話題になる。
 

日本人の日序章 第12回

作 (1980年作品)飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/日本人の日序章 第12回

 

 

二〇五四年 四月 アルプス要塞

 

 アエロスペシャル・ヘリコプターはアルプスの山並みを

なめて飛行している。チューリッヒ空港からの客だった。ヘリのサ

イドにはラドクリフグループのマークがすり込まれている。

 

 白髪というよりも銀髪と呼んだ方がいいだろう、ド=ヴァリエは

ヘリから鋭い眼で方々を観察している。

 

 やがて、ヘリはベルデ山上にホバリングし、山腹に穴が開き、そ

の穴にヘリは飲み込まれた。

 

 ド=ヴァリエはアルプス要塞の専用ヘリポートに立たずんでいた。

彼は今、ベルデ山の真中に立っているのだ。

 

 情報将校が、ミニ=ヴィーグルでド=ヴァリエを迎えに来た。そ

の間、ド=ヴァリエはこのヘリポートの内部構造をしっかりと観察

している。

 

 ド=ヴァリエはサングラスをはずし、ブレザーの胸ポケットに無

造作につっこんだ。

 短かく刈り上げられた銀髪や、そのきびきびした体の動きは60歳

という年齢を感じさせないものだった。眼は猛禽類を思わせる。

 

 「ド=ヴァリエ将軍、ラインハルト議長がスペシャルルームでお待ちです」担当

情報将校が言った。

 

 「ごくろう。頼む」

 ド=ヴァリエはその少尉のアルプス要塞についての講釈を耳にし

ながら、自分の形影から作りあげられたこの要塞のできあがりぐあ

いを細かくチェックしていた。

 

 彼は、第二次大戦中、ナチによって、造り上げられていた

この要塞を発見し、新たなテクノロジーを持って地球最強の砦を作

りあげようとしたのだった。

 

 もちろんこの要塞の構築にはラドクリフ企業グループの全面的な

バックアップがあり。ラインハルト議長自らが命令を下していた。

 ミニ=ヴィーグルは特別室の前で止まり、若い将校はド=ヴァリ

エ将軍を降ろす。

 「この部屋です。ド=ヴァリエ将軍」

 「ありがとう。君のアルプス要塞の説明は簡にして要だった」

 「おほめにあずかって、光栄です。将軍」

 

 自動ドアが開き。広さ数100㎡の空間があった。その真中に、大き

なオーク材の机があり、ラインハルトと腹心になりつつあるINSファーガソンが居た。

ファーガソンはいつもながら顔色が悪い。

 

 「やあ、ド=ヴァリエ将軍、よく来てくれた。久しぶりだ」

 ラインハルトがイタリア製のエルゴデザインのチェアから立ちあ

がり、握手を求めた。

 強く握りかえしてから、ド=ヴァリエは尋ねた。

 

 「なにか、日本人共から不敵な挑戦がつきつけられたと聞いたが」

 「そうなんだ、ド=ヴァリエ将軍、あいつらは、時折、我々の心を冷え

冷えとさせる。やつらは我々白色人種の理解を越えた行動をおこす。

やはり、やつら日本人は、この世界から追放すべきなんだ」

 

 「私も同感だよ、ラインハルト。じゃ映像を見せてくれるかね」

 ファーガソンがモニターのスイッチを入れる。

 

 モニターに例の花田万頭の顔が映った。

 しばらく、何度もこのテープを見ていたド=ヴァリエ将軍はライン(

ルトの方を向いた。

「ラインハルト。この映像の彼は確かに生きている人間のものか

ね」

 「というと、花田の映像がCGコンピューターグラフィックス

で、できているとでもいうのかね」

 

 ラインハルトはド=ヴァリエの意外な質問にとまどっている。ド

=ヴ″リエはきつい緑色の眼に疑いの色を隠さず尋ねた。

 「実は、この花田万頭という男、情報戦の分野では、かなり知られ

た男だった」

 考え深げに言う。

 「だったというと」

 ファーガソンが疑問を投げかける。

 

 「花田は確か、二〇四〇年のスリナム油田事件で爆死したはずなん

だ」

 ド=ヴァリエはあごをなでた。

 「爆死した。じゃ映像に映っている男は誰なんだ」

 「わがらん。とにかく、花田万頭の事は世界のどこのデータベース

にも登録されていないだろう。彼は日本政府情報省のエースだった

男だ」

 

 「でスリナム油田事件とは」

 「石油コンツェルンのセブンシスターズと日本の石油会社が、油田

の占有権をめぐって武力抗争をおこした例の事件だよ」

 

 「確か、あの事件は事故として報道されたはずですが」 ファーガソン

が口をはさんだ。

 

 「確かに報道はそうなっていたが。この時期から、日本政府も秘密

裡にスペシャルフォース(SS)を訓練していたはずだ」

 

 「というと、花田万頭のバ。クには」

 「そうだ。旧日本政府のバックアップと、ジャップのスペシャル=

フォースの生き残りが関与していると考えていいだろう」

 

 「わかった。裏の組織を使って、花田の資料を収集せねばならんな」

 「そうすることは最善の策だろう。どんな組織、どんな個人でもウ

ィークポイント、アキレスの泣き所があるはずだ。それを押さえる

事。特にジャップのSSに関しては特殊戦のプロ集団ですし、ジャ

ップのハイテクノロジー技術で武装されているはずだから」

 

 その時、机の上の電話がなった。

 電話をとったファーガソンが言った。

 「皆さんがお集まりになったようです」

 

 「すまんが、将軍、会議に出席してくれんか。本日は、ジャップ掃

討作戦の各地方指揮官達が集まっているんだ」

 「わかった。対日本人作戦の現況報告という奴だね」

 「その通りだ。君にとってはいささか退屈かもしれんが」

 「いやいや、そんな事はない。どんな小さな情報でも聞いておくに

こした事はない」

 

 「それじゃ、動こう」

 ラインハルトは机のボタンを押した。

 

 スペシャル=ルーム自体がエレベーターになっていて、地下へ動

いていく。地下数百mに会議室が設けられていて、JVO(日本壊滅組織)の構成メ

ンバーが集まっている。

 

日本人の日序章 第12回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

Http://www.yamada-kikaku.com/

 



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