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東京地下道1949■第9回

2013年04月04日 |  東京地下道1949
東京地下道1949■第9回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画


東京地下道1949■第9回
上空から飛来した戦闘機ムスタングは、両翼の爆弾を雨を浴びせる。
ナパーム弾が地上を燃え上げる。
投下しおわり、爆弾のなくなった戦闘機は、機銃弾を空からあびせはじめた。

風防からは、この殺戮を楽しむバイロ″トの顔がみえる。
低空飛行でつっこんでくるのだ。
ベビーギャングたちの勝利の戦場となるべき場所は、修羅場となり、墓場となった。
機銃弾が、無機質な音で土ぼこりをあげ、地面をほりさげる度に、大地に鮮血が流れ、
しみこんでいった。

 二つの双眼鏡が、ま下の光灘をながめている。

小高い丘がらは、この虐殺がー望のもとにみわたせる。
 ロパートは思わず、叫んでいた。
「死ね。みんな死ね。お前ら、ジャップ。くず野郎はみんな死んじまえ。お前ら、ガキが
皆くたばったら、日本はアメリカの完全な領土になるんだ。なにしろ日本人がいなくなる
んだからな」
 ほおにガーゼをあてたライリーは、双眼鏡をおろし、傍らのロバートに言った。
「ようし ロバート。もう少し前進だ。それからスコープ付きライフルを出せ、俺たちの
楽しみはこれからだ」
 彼らは、なんとか、戦闘機から逃れた少年達を今、望遠スコープの照準にとらえ、ねらい撃ち
にするつもりなのだ。



「鉄、鉄おきて」
 声がした。夢の中から聞えてくるようだ。

どうやら、俺はまた死んではいないようだな。
鉄はそう怒った。
うすぼんやりした光が鉄の目をさす。
まだまだ、くらくらする。

声は床の下からかすかに聞えてくる。
それは恵の声だった。
「どうしたんだ。恵か」
「しっー、あまり大きな声を出さないで」
「だそうにも声はでないさ。あのロパートにえーらい目にあわされた。
それよりお前、なぜこんなところにいる」

「あなたのことが気になっていたの。あなたが、あの地図を奪ったから、どうせ仲藤の店にいくと
おもったわ。米軍のジープがあなたを追いかけていくのを見たわ。車のナンバープレートが保安部のものだったから、つかまると息ったわ。
きよう、それで保安部の独房の下へ忍びこんできたわけよ」
「よく、ここまでこれたな。昔なじみにあえるのはうれしいぜ」
「何いってるの。ふざけないで」
ほんとに怒っている。
「わかった。よし、はやくここから出してくれ。ロバートかライリーがまた来た日にや、、俺はぶっ殺れ
かねない」
「いい。言うことをよく聞いて。右壁から約一mのところをさぐってみて。何か印がある
でしょう。印のある床の上を思い切り踏みつけてごらんなさい」
「少し、へこんだぞ」
「そう、そこを何とか動かしてみて」
 床は、鉄がひっぱると、穴が開いた。すばやく穴中にはいる。もと通りににする。暗闇の中
に薄い光がもれている。声があった。
「どうやら、また、あえたようね」
「恵、一体この穴は」
「しつ、この上はずっと保安部よ。気がつかたら、それっきるよ」
 小さなろうそくを恵は持っていた。
小さな声で、
「この通路は、日本軍がトウキョウ市攻防戦の際作った地下壕の一部らしいの。
これを伝っていけぱ何とか外に出られるわ。ついてきて。鉄」
 恵は先に立ち、ずんずん歩んでいく。
鉄はいためつられた体をひきずるように、光についていく。
あたりは、ゆっくりと闇がもどていく。


 泥滓の中で、ベビーギャングの頭、ムサシの意識がもどってきた。
同時に体がほてるように暑い。
場所の感覚がもどってきた。
顔をすこしもちあげる。
まだ少し雪まじりの雨が降っていた。
異臭がする。あたり1帯が燃えあがり、人間の形をした何かが焼け焦げていた。
(続く)
続く090901改訂
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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