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アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー第11回

2015年09月04日 | アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産

アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー第11回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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彼女は、海の中を漂っていた。
彼女の総てが、、まだ未成熟だ。

顔も、記憶も。ただ肉体だけが、浮遊している。
その海は、この星の中核部にあった。巨大な球体が腐肉から海を守っていた。

その中で彼女はまどろんでいる。
体は透明なカプセルに守られている。
何者なのか、ただ一人、この大いなる《静かの海》にたゆとうている。

この前はいつ目覚めたのか。
だれもしりはしない。
年もわからない。
幼児の体型だった。

通常は腐肉の表面までしか降下できないのに、
男の乗ったポッドは腐肉を突き切って来た。

降下した男は、この球形世界《静かの海》にたどり着いていた。
男はこの海に装置されたコアにはいった。
そこにはモニターが設備されていた。操作卓に前に座る。

「トリニティ、我が子よ、目覚めてくれ、お願いだ」叫んでいた。
男の願いが通じたのか、彼女の意識が開いたようだった。
男はくいいるように覗きこむ。

男のいる操作卓のあるコアと《静かの海》は透明な膜でくぎられている。
まだ、二人は遠く離れているのだ。

男はその少女に精神波を送る。
「君、私がわかるか」

「おじさん、だれなの」
しばらくのち、か弱い彼女の思いが、彼の心に返ってきた。

「私は、君に命を与えるためにここに来た」
彼女にとってみしらぬ男はそう言った。

「どういう意味なの」
そう彼女が聞いた瞬間、操作卓の場所が白熱していた。
男の姿は消えている。

「一体、なによ。あたしを起こしてさ。何用なの。へんなおじさん。いい、も一度眠るもん」

 再び、トリニティと呼ばれた彼女はまどろみに戻った。
そのまどろみに入る前に、完全な彼女の顔ができあがっていた。



 男が白熱した後、このコアの付属設備が急に作動し始める。
《静かの海》に隣接した設備、
そのメインコンピュータが目覚めつつあった。

この《静かの海》に近接するコンピュータ地下羊宮チャクラ。
コンピュータ地下羊宮チャクラは、古代人類の記憶バンク。
 
《静かの海》で一人の運命の少女トリニティが、いままさに誕生しょうしていた。

●『おや、ついに、ついに発生したのね。早くここまでおいでよ。私の親よ、妹よ。早くここまでおいで。私、アリスがきれいに始末してあげる。ああ、楽しみだわ』

 腐敗惑星のどこかで、誰かの意識がそう、語っている。
 彼女はしたなめずりをする。同じ顔をしていた。

●「どうやら、、、あの子トリニティは目覚めたようよ」

アリスは父に言う。

腐敗惑星の表面で唯一ヶ所。
大陸化された陸地。そこが「機械城」だった。

その中に「クリスタル=アリス」はいた。

彼女の精神の中で、何かがコトリと音を立てて動いたのだ。

それは、彼女と同一のモノが動き始めたことを意味した。

同時に、クリスタル=アリスか、あるいはトリニティかどちらかが相手
によって倒されねばならないことを意味した。

本当は二人同時に存在すべきはない個体だった。

「本当か、アリス。いよいよ時が満ちたのだな」
「そのようよ、パパ」
「お前が「世界子(せかいし)」となれる日が近いのだな」
「うれしい、パパ。私が「世界子」となり、パパがその世界を統べることができるのよ」

父親はその答えをしばらくためらい、そしてつぶやく
「ああ、そういうことだな」

●「パパ見て、」

「ついに、禁断の果実、黄金のリンゴがなったわ」

目の前に広がる、機械城内部になる最後の楽園、その中央にある木に実がなっていた。


「ふふ、ついに、ついに、時は来たりぬか。我がフクシュウの時は来れり。セキリョウ王よ、早く出現せよ。我々の手にかかれ」

父親と呼ばれたその男は、気分が高揚し、来るべき時をまつ。

(続く)20111210改定
作飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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