デュエット(二重走)第9回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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●1978年作品ー東西冷戦ーソビエト連邦とアメリカ
合衆国が冷たい戦いを行っていたころの話です。
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マレーシア、マラッカ海峡にて、チャンを頭とするテロ
リストに急襲された氷船ザイード号にいる白神四郎と、
潜水艦「聖なる剣の先」号にいる
ハリーマッド王子はテレパシーで話し合いっている。
『そうだ。君のESP能力でチャンを殺せ』
『残念だが、俺のESP能力では無理だ』
『私が君に力を貸してやる』
チャンは、外海からこちらへやってくる仲間の小船に一瞬。気を
とられた。四郎たち人質たちは選らばれた数名が同行し見張られている。
四郎はチャンの胸に装着されていたコマンド=ナイフを。念動力
で動かし、チャンの胸に突き立てる。
「うっ!」
が、まだチャンの心臓には届かない。
「きさまら。エスパーか。くそっ」
チャンはカラジンコフ・アサルトライフルのトリッガーを引いた。
四郎の胸めがけて。
銃弾はしかし、四郎の前で空間に停止している。
ハーリマット王子の超能力が弾丸をそこにとどめているのだ。
同時に下部ハッチからブリッジヘガス弾が投げ込まれた。
煙で相手が見えなくなる。
ウジ=サブマシyガンを構えたジンベル少佐のコマンドが突入し
てきた。銃声があちこち響いてくる。四郎はジンベル少佐によって
助けられる。チャンはウジの連射で即死した。
シンベル少佐のコマンドは敵テロリストに掴まっていた味方の船
員をすべて解放した。
「よし。奴らを攻撃しろ」
上空で停止していたSTOLにシンベル少佐は命令を下した。
ハードル・ヘリはハリヤー攻撃機の一撃で燃え上がった。
テロリスト達は、氷山から海に向かって飛び込んだ。
接舷していた小船は。火災をおこしていた。
「まて。船は攻撃するな。奴らを掴まえるんだ。敵の正体を知るた
めだ。シンベル少佐、奴等を逮捕しろ」
小船の彼らは、シンベル少佐のコマンドに対して降伏しない。最
期まで抗戦した。ようやく小船が制圧された時。彼ら全員か死んで
いた。傷ついた者は。ノドにナイフをあて、自殺していた。
サイード号の4軸プロペラ・シャフトの内軸が敵潜水艦の魚雷で
やられていた。修理か必要だ。当分。サイード号はマラッカ海峡で
停船したままである。横を日本のタンカー群が通り過きていく。
「ハーリマット王子。教えてほしい事かある」
四郎は尋ねた。
「あれは何だ。テロリスト達かこのサイード号の氷山から取り出そ
つとしていた物だよ」
ハーリマット王子は少し考え込んでいるようだった。
「しかたがない。いずれわかる事だからね。四郎に話そう」
チャンたちテロリストが削り開けようとしていたザイード号に一部
でもある氷山の一角は
ザイード号の船員たちによって、修復されようとしていた。
ハーリマット王子は四郎に球体の写真をみせた。
「彼らが探していたのはこんなに小さな球なのだ」
「我々が、浮氷界から氷山を切り離す作業中に発見されたものなの
だ」
「この球がなぜ、そんなに大切なのだ」
「その球は、外宇宙から飛来してきた。それは一つのメッセージを
携えてきた。それに触れた者に膨大な知識を与えるのだ。すでに私
達の王国の首都マハドに設備されている受容器。それは一つのビル
の大きさに相当するのだがー、に嵌め込まれたならば無限の大宇宙の
知識を我々に与えてくれるはずなのだ」
「受容器はどうやって設計したのだ」
「その球に最初に触れた者の頭に直接、情報が投射されたのだ。その男は
電子工学にはまったく無知な作業員だったが、瞬時に設計図を書き
あげた。それを我々のヤスラー王国の財力を持って作りあげたのだ」
「その大宇宙の知識を君達ヤスラー王国一国でI人じめしようとす
るのかね」
「違う」
「それならば、それをなぜ公表しない」
「もし、一つの大国がそれをにぎったとすれぱどうなる。彼らはそ
れを利用して。この地球の支配をめざすかもしれんのだよ」
「ヤスーラー王国がそれをしないと断言できるのか」
「できる。僕の心の中は君が覗けば、それはわかるはずだ」
四郎は(Iリマットの心の中をさぐってみた。確かに地球支配と
いう様な邪心はない。ハーリマッド王子の心は静寂な一片の風景画
である。
「わかった。あなたを信じよう。しかし。いずれはその知識は世界
へ公表されるのだろうね」
「そうだ。そうすべきだと私は考えている。ただその時期が非常に
問題なのだ」
「失礼します」
ジソベル少佐が入ってきた。
「テロリスト達の身元を割り出そうとしましたか、残念ながら、身
元がわかるようなものは所持しておりません。武器装備も中国製、
アメリカ製、ソ連製、イギリス製とバラバラです。たた人種的には
中国系が多いように見受けられます」
「わかった。ありがとう、四郎。君をこんな大事件にまきこんです
まないと思っている。が、日本の一般人であった君のおかげで、私は
助かっている事も事実
実なんだ」
「(ハーリマッド王子。ご心配なさる事はありません。私は、私がかえっ
て足手まといではないかと考えていたくらいです。それにあなたに
命を助けていただいてもいるのですから」
「いや。この一連の事件は総て、私ハーリマッド王子が原因なのだからね」
「いや、王子、あなたは私に新しい世界を見させてくれたのですよ。
たぶん。私はハーリマッド王子にみつけだされていなけれは一介の日本人
の工員のままで
一生を終わったと考えております。こちらこそ本当に感謝していま
す」四郎は心から言った。
「ありがとう、四郎」王子の眼には光るものがあった。
四郎とハーリマッド王子は抱きあった。
デュエット(二重走)第9回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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