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夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第14回

2013年04月30日 | キング・オブ・ドリーム--ドラッグウォー
夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第14回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
■第14回■
 このビブラフォーン自身が、自ら複製をこしらえたのだ。
ビブラフォーンは、いわば、生きている楽器なのだ。

 ビブラフォーンの安置場所では、次の朝、そこを開けると、ビブ
ラフォーンが二つになっているという具合だったのだ。
そして、世界は、ビブラフォーンに満ちた。

 この生きている楽器、ビブラフォーン自体の出現が、
伝脱となっていた。

ある日、といっても、かなり昔の事らしいが、ある作曲家が、自
分の曲がうまく作曲できないので「大赦界」へ出向いて行き、『教えの壁」
に悩みをうちあけたのだ。
『教えの壁』はその作曲家に、次の朝早く、この「大赦界」へ来いとい
うお告げを授けた。

次の朝早く、「大赦界」へ来た作曲家は、大暴風雨にあった。あたり
には誰もいなかった。
 稲光りが急にした。
雷が鳴る。近かった。
作曲家は雨やどりをしようと走り出したのだが、雷に打だわた。
 
気絶からさめると、そこにはこの物体ビブラフォーンがあったのだ。
空は、急に晴れあがっていた。
 物体ビブラフォーンは、事務机をひっくりかえした上に、
まん中に巨大な突起物をつけだような形をしていた。
色はビンク色をしていて、宝石が敢りぱめられていた。生物体に
鉱物がついているのだ。

 作曲家は、恐る恐るはしの突起にさわって見た。
しれは、えもいわれぬメロディと、空間に、七色の紅を出現させていた。

 さらに、そいつは、温かい。無機物ではなく、有機体だった。
つまり、ビブラフォーンは「生さている楽器であると理解した。

 作曲家はこのビブラフォーンを使って次々と名曲を生んでいった

最後には、彼の死体が、逆にビブラフォーンに操られていた。
彼の死は突然訪れたらしい。
 
ビブラフォーンをあやつり始めたら、つまり一つの曲を演奏し始
めたら、最後まで弾き続けなければならない。途中でやめることは
不可能なのだ。
 もしブレイヤーが、そこまでで体力がなくなれば、そのブレイヤ
ーは死んでしまい、彼の体は逆にビブラフォーンに操られるのだ。
 ビブラフォーンの上ですでにこと切おた死体の手や腕や足が勅き
まわるさまは、昆る者に、恐怖を通り越えた興奮を与えずにはおか
なかった。
 それが、危険をかえりみないプレイヤーを続々と生んでいる原因
だった。

 人間は死と隣り合わせが好きなのだ。。


 ビブラフォーンは、いったん演奏され始めると、観客に単なる音だけで
はなく、幻覚、香り、奇妙な昧、手ざわりなどを与える。
つまり人間の五感んを刺激し、ビブラフォーンの回りに、一つの巨大な感覚世界
を出現させるのだ。
 観客たちは、その感覚のうねり、宴に酔いしれるのだった。

 一面、非常に危険でもあるビブラフォーンの演奏会は、つねに1年に
一回と決まっていた。

 毎年、数人のプレイヤーがビブラフォーンに同化され死亡していた。
体と心を、ビブラフォーンに捧げたのだ。

(続く)
1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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