石の民「君は星星の船」 第32回■最終回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
落ちてきた石の民の体は石の壁に密着する。
まるでジグソーパズルのように、その位置が決まっているようだった。
やがて、石の壁は、総ての石の民で満ちていた。いわばボードの上のICだ。
石の壁はしばらくすると膨張した。
光二の体もその中にあった。光二の聖砲が発光したのだ。
石の壁は、機械神によって聖作された宇宙創造ベースだった。
石の民とは旧世界、
つまり旧宇宙の星ぼしの意識、記憶メデイアだった。
■昔、 機械神はこの旧宇宙が収斂するとわかった時、
星ぼしの記憶を星砲、もしくは聖砲をつかい、高度集積化した。
星を、まずは人間の大きさ、すなわち、星の総体意識をもつ石の民、
それから石に、
さらに船の素材として、
さらには記憶をもつ生物的高度情報集積素子として。
一人の石の民がその星の記憶、歴史だった。
■機械神の世界が数連下降り、青い亜空間の中を「シセルモノノフネ」が飛んでいた。
これが、新しい世界を作る施設者の船だ。シセツモノノフネの船だ。
■『死せるものの船』のサブコンピューターであった『女王アルナ』とムリムが人格化して
北の詩人を無視して、宇宙を再生してしまったのだ。
中途の世界であり、星の企画が未消化で、世界が釣っ繰り上げられた。
石の壁は、その世界の過ちを、再度の新世界の誕生を予言する コマンドだった。
■光二は、自分が石の壁に密着した時、
あの「北の詩人」にちかずいているような気がした。
アインはアイン星であり、リアノンはリアノン星であった。
『石の男』ムリムは『死せるものの船』のサブコンピューターであった
。『女王アルナ』もサブコンピューターのひとつだった。
機械神が選んだ移動機構であった。二人は将来の行き先、方針を巡って争ったのだ。
■機械神が「北の詩人」に与えた役割は、新しい宇宙創造の神になることだった。
機械神は、新しき神として、コマンドを打つものとして、当時の反対勢力の「北の詩人」をえらんだのだった。
シセツモノノフネ、後で「死せるものの船」と勘違いをされたが、実は詩人の体そのものだった。
が詩人はその事をしらない。
亜空間の中、ただ、詩人の体がカプセルに入り、たゆとうていたのだ。詩人の体には石の民ICが埋め込まれていた。
詩人の頭が記憶筒になっていた。石の壁は詩人の頭の記憶脳が現れたものだった。
詩人の体には石が付着している。
その石のひとつひとつが星。つまりのは「君は星星のフネ」なのだ。
しかし、新宇宙が胎動したいま、そんな事は忘れ去られようとしていた。
光二は、いやもと、光二であった存在は理解した。
我々は新しき世界にいるんだと。
「石の民一人一人はいわば集積回路」つまりIC、
多量の旧世界の情報を与えられた人達なのだと。
「石の壁」自体がICを埋め込まれた「基盤」のだと。
石の壁が、旧世界の記憶を受け継ぎ、新世界を生むべく送り出された記憶のベースなのだと。
『死せるものの船』は新世界を生むべく送り出された「記憶の船」なのだと。
■石の石棺はCPUである。生き残った生体コンピューターが、世界を再度再生し押すのだ。
■北の詩人の歌は「命令コード」である。
詩人の歌がうたわれる時、スイッチは作動し、記憶が復活され、新宇宙は始動しはじめる。
アインの意識は広がり、アイン星を形づくる。
■ 光二は理解し、新しき伴侶となる「アリサーミニヨン」の手をとった。
そして。かれらは再生し、新宇宙の新しき星「コウジ星」の上を歩み始めた。
石の民 第32回■最終回(1989年作品)20200705改訂
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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